中国の子供生活調査レポート【5】食事事情 ~食文化と最新の食生活~
2022年、今年の中国の春節は2月1日。遠く離れた家族もこの時ばかりは集まって食卓を囲み、新年を祝います。悠久の歴史の中で受け継がれてきた中国の食文化、その未来を担う子供たちの「食」まわりについて上海で育児中のお母さんたち(子育てママ)にアンケートで聞いてみました。
広い国土、多様な中国の食文化
先ずは食文化について押さえておきましょう。「フランス料理」「トルコ料理」「中国料理」が世界三大料理と言われ、もともとの宮廷料理だったものが発展して変化しながら世界中に広がりました。特に、4,000年の歴史を誇る「中国料理」は、日本でも中華料理としてすっかり土着化しています。
本場中国では国土が広いので地域・風土によって多種多様。下記の4大料理が特に有名ですね。
どれも美味しくて、思い浮かべるだけでお腹が空いてきそうです(笑)。
外食・出前ではなく「自宅の手作り料理」が基本
ではここからが本論です。先ずは、子供たちはどこで食事をしているのでしょうか。ファーストフード店が街にあふれ、また昨今はフードデリバリーが普及している中国ですが、外食や出前の回数を聞いてみると意外にも低く、ともに一週間で平均1回程度でした。コロナ禍での影響は考えられるとはいえ意外に少ないとは思いませんか?国家衛生健康委員会「国民の栄養と慢性疾患状況報告(2020年)」によると、中国の子どもの実に19%が過体重か肥満で、高血圧や糖尿病や癌の発病も2015年と比較して増加しています。外食や出前はついつい脂質や塩分を多く取りすぎがち。ひと手間かけてでも自宅で料理したものを食べさせることで、健康や栄養バランスに配慮しているようです。
では、誰が料理を作っているのか?複数回答で聞いてみたところ、自分自身(子育てママ)が最も多く約7割。ということは、子育てママの3割は料理をせず、その代わりを自分の親か旦那さんの親がしていることが分かります。旦那さんの約4割が料理をしていますよ、実にご立派!
子供に積極的に食べさせているものは?
調査によると、「牛肉」、「野菜」、「果物」を積極的に食べさせています。飲み物については「牛乳」、「ヨーグルト」、「豆乳」を積極的に飲ませていて、特に育ち盛りの小学校高学年では顕著でした。続いて上位の果物・野菜ジュースについては、容器入りのものよりも “搾りたて”の商品を好んで飲ませている傾向がうかがえました。
豚肉よりも牛肉を食べさせたい
食べ物について詳しく見て行きましょう。まずは「牛肉」です。中国人が最も食べる肉は豚肉で、1人当たりの肉類の消費量の49%と約半分を占めています。続く鶏肉の31%と合わせると約8割、最も高価な牛肉はわずか13%に過ぎません。それなのに、今回の調査では牛肉をより積極的に子供に食べさせていることが分かりました。大事なわが子には高くてもいい肉を食べさせてあげたいという親心なのでしょう。
野菜の好き嫌い
子育ての悩みの1つは「子どもの偏食」。野菜はどうしても好き嫌いがありますね。子供に食べさせたい野菜のトップ5は「青梗菜」「ほうれんそう」「白菜」「紫芋」「小松菜」でしたが、1位の 「青梗菜」は同時に子供が嫌いな野菜の1位でした。一方で、同じ葉物野菜でも「ほうれんそう」、「小松菜」は親が食べさせたく、かつ子供も好きだと分かります。ということは、「青梗菜」が嫌いな子には「ほうれんそう」や「小松菜」を食べさせればよいのかもしれません。また、ブロッコリーは好きと嫌いの両方の上位に挙がっていて、好き嫌いが分かれるのも興味深いです。嫌いな野菜も無理なく美味しく摂れるような、ひと工夫ある野菜ジュースのポテンシャルがありそうです。
子供の大好物、一番人気の果物は・・・?
中国の子供も果物が大好き。人気のフルーツは何でしょう? Top5に挙がったのは、「オレンジ」、「バナナ」、「みかん」、「いちご」・・・と、ここまでは日本の子供が好きなモノとかぶりますが、人気No.1はダントツで「スイカ」。
スイカはもともとアフリカ原産。夏の果物のイメージがありますが、中国大陸の南から北まで各地で生産されているので年中食べられます。また陰陽五行の伝統や漢方では、スイカは体を潤してほてりを抑えるとされていて体にもよさそう。国連食糧農業機構(FAO)のスイカ生産量統計によると、中国の世界シェアはなんと67%!
世界中のスイカの2/3を食べる「スイカ大国・中国」の地位は、子供たちが支えるので将来も安泰ですね。
別途、子供に食べさせる「おやつ」についても聞いてみると、「ナッツ類」と「チョコレート」が同率で一位、「ビスケット」、「飴」、「スナック菓子」と続きました。ナッツ類はミックスナッツやくるみやサンザシなどですが、子育てママ自身が昔から天然素材のものを食べて来たことやオーガニック食品を好むことが背景にあるからでしょう。
以上、子育てママの視点を通じて子供の食について見てきましたが、彼女たち自身も急速に豊かになっていった時代に「一人っ子」として大切に育てられた世代。よりよい暮らしを実現するために、情報には敏感でよりよいものを求めます。
大切なわが子の健全な成長のためには「食」が基本。未来を生き抜く子供の日々の食事にも手を抜かず気を配る愛情が感じられますね。
さて、次回はいよいよこの連載の最終回。子供の「健康」についてお話しします。お楽しみに!
この記事を書いた人
岸原文顕の連載
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