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君に夢中 後編【日誌のようで物語のような】2400文字

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団体戦試合当日を迎えた。

1試合目は2部を優勝して上がってきたチーム。
彼らも常勝ラオウチームの玉座を狙っていたが、
僕らのチームは2部で彼らに勝ってから、
先に1部に上がってきている実績もあり、
こちらに分があった。
ジョダブは2-6で取られたものの、
混合6-3、ダンダブ6-2
で難なく勝てた。

続く2試合目は
かつては1部優勝チーム。
ラオウチームに1部リーグ王の玉座を
譲った後も1部リーグに残っていた
老舗チームとの対戦だった。
老舗チームの老齢化は否めず、
ここにも難なく勝てた。

そして、
いよいよ14連覇優勝の
ラオウチームとの対戦となった。
両チームともにこれまでの対戦を
全部勝っており、この対戦を勝った方が
優勝濃厚となる決戦となった。
これ以上ない形でドラマの舞台は整った。

ラオウチームとの初戦の女子ダブルスが
0-6と1ゲームも取れずの完敗スタート。
明るかったチームのムードが急に重たくなった。
やっぱりラオウはラオウだ。
隣のベンチから14連覇常勝という
無言の重圧に圧倒される中、
2試合目の混合ダブルスにバトンが渡された。

この落とせない混合に
敏腕男子B君に入ってもらった。
彼ならゲームがつくれるだろう。
と思ったものの、中々の苦戦での展開。
いきなりブレークをとられ
ゲームは1-3と追いかける展開となった。
しかしそれ以上離されることなく、
逆に1ゲームにじり寄って
3-4になった時に、
敏腕男子B君に火がついた。
一人二役の勢いで、
コートの中を縦横無尽に駆け巡り、
4-4に追いついて、
スパークしたアドレナリンは止められず、
もう2ゲームも連取してしまい、
6-4で逆転勝ち。
根性で勝ち取ってくれたバトンは
僕たちのダンダブに渡された。

なんということだろう
怖いくらいに整いすぎているぞ、この舞台。
しっかりラオウに肉薄している。
この場面を想像して1ヶ月間追い込んできた。
堪らない緊張感と興奮の電流が体を突き抜けた。

男子ダブルスのゲームは
ラオウサイドのサーブから始まった。
僕のペア男子の実力もかなり高く、
自分の調子も良い。
ファーストサーブが思うように決まり、
ペアの男子君がきれいにボレーを決めてくれた。
ラオウダンダブと初めての対戦だったが、
実際に打ってみると、いけるんじゃないかと
手応えを感じながらゲームは進んでいった。
そしてどちらもサービスゲームを譲らずに
3-4で、僕たちのサービスゲームを迎え、
40-40のタイポイントでの
1本勝負の場面だった。
この1ポイントを取れば、4-4のゲームとなる。
逆に取られると、3-5となってしまう。
本日のハイライト的な局面だった。
自陣のペア男子君の気合のサーブが
ワイドに鋭く入った。
この場面での強烈なサーブ。
ここぞという時に凄い事をしてくるもんだ。
普通の相手なら、
動くこともできないほどの、
サービスエースだっただろう。
しかしラオウ男子は何とかリターンを返すも
力ないボールがネット際にふらふらと上がった。
僕はその力ないリターンに反応した。

ここだ!

前衛に入っていた僕は
ポーチに迷わず飛び込んだ。
この球を叩けばゲームがとれる絶好の好機。
逃すわけにはいかない。
ここは自分が決めなくてはいけない場面
のはずだった

、、、、、、、、、、、、、、、、、、!

僕が叩いたボールはネットを弾き、
自陣のコートに落ちた。
一瞬何が起きたのか分からなかった。
痛恨のミス。
取り返しのつかないミス。
このミスでゲームカウントは3-5となり、
ラオウチームは次のサービスゲームもとり
3-6でラオウチームとのダンダブを
落としてしまった。

なんという現実、
なんという冷酷な筋書きのないドラマ
幻であってくれ

ペアの男子君にも、
その前の試合の混合ダブルスで
踏ん張ってくれた敏腕男子B君にも
申し訳ない気持ちで押し潰されそうだった。
ここまで舞台を整えてくれたのに、
一本のミスで台無しにしてしまった。

そうして1部リーグ15連覇の記録更新を
ラオウチームに渡してしまい、
僕たちの今年の1部団体戦も
2位という結果に終わった。

この悔しい経験で何かを得られたのだろうか
50を過ぎたにも関わらず、
他愛もないことに躍起になっている自分
何も得することも無いのに
いやそれは違う、
何も得することがないからこそ
正面から打ち込めたのだろう
無我夢中で遊べたのだと思う
たらればの話しだが、
今回の団体戦で
ビーナスと敏腕男子A君がいたのなら、
きっと優勝していただろう
けれどその優勝では、
気持ちのどこかに虚しさが残ったような気がする
自分は傍観者として
肝心のラオウ戦を見ていただけでは、
遊びとして、
楽しめなかったのではないか。
今回は自分も絡むしかないという状況になって、
自分がその当事者として
遊びに参加させてもらえた。
この1ヶ月をとことん遊ばせてもらった。
50を越えた男が、
どろくさく奮闘したこの1ヶ月。
夢中に没入した時間。
こんな純真な時間はいつぶりだったろうか。

その昔、
今となってはセピアカラーとなってしまったが、
50過ぎの男にも小学生という時代があった。
あの頃は毎週ユニフォームをどろんこにして
野球をしていた。
暑くてもろくに水を飲ませてもらえず、
太陽がギラつくグランドで
白球を追いかけていた。
あの頃だって、
良い場面で三振したり、
エラーしたりしていた。
けれど野球に夢中だった
ただ夢中だった
夢中のど真ん中にいた。

振り返れば、
あの時に戻った心持ちの1ヶ月だった。

今年の団体戦では、
テニスをとおして、
がむしゃらな自分に再会できた。
素晴らしい1ヶ月を過ごさせてもらった。
残念だけど、この遊びは負けてしまった。
正直に言って悔しい、
むちゃくちゃ悔しい
けれど、
この負けも遊びの一部だ。

ありがとうチームのみんな。
ありがとうラオウチーム。

―――おしまい―――

来年に向かって気合いの雄叫び!

ポスト スクリプト>>>
1ヶ月だからハードに追い込めたけどね、
きつかったなぁ。
これを1年はできないけど、
この悔しさをバネに、
また自分を鍛えていこう。
そして、やっぱり、
来年はヴィーナスも敏腕A君も
予定合うといいなぁ。
それでいて、
僕もラオウチームとのダンダブに出るのさ!!!
(ヘマしちゃったし、
出させてもらえないかなぁ😅)