「裏口人生」
かつて
どこにでも 裏口があった
うつむいて 誰かに手をひかれ
こっそりと
裏口の戸をたたく
すると 暗がりから
するっと
手が出てきて
引っ張りこんでくれる――
裏口から入ったからといって
ずっとうつむいているようではいけない
裏口からだろうが
正面玄関だろうが
中に入れば
案外みな寛容で
とやかく言われもせず
連中
裏口から入ったことに
悪びれもせず
〇〇大卒
○〇会社勤務と
胸を張り
堂々と生きていらっしゃる
そんな元首相が
何人も この国にはいたりして
生まれ育ちの違いで
幸 不幸もそれぞれ
そんな裏口組が
あちこちにいて
それなりに活躍したり
それなりに組織の潤滑油になったり
中には箸にも棒にも掛からぬのがいて
手をひいてくれた人の
顔に泥を塗る輩もいたとして…
それでも
世間は
闇世界を
ある程度見逃す余裕があった
なのに いまの世界は
すぐに 裏口組の過去をあげつらい
つぶしてゆく
世界はもう 裏口を許さない
とことん
つぶしてゆく
不寛容なのか 非寛容なのか
どういう言葉がよいのか
ぼくは知らない