「友の命日」
死から5年 友の命日に彼の母親に電話してみた
行年55 生きていれば彼も還暦
彼の父親がこの夏に亡くなり 遅れたお悔みを言おうと 大阪に電話した
電話に出たのは彼の4つ下の弟だった
何十年か前 彼が東京の大学に入ったころに会ったのが最後だったが 小学生のころから知っている男
ぼくのこと
「あなたアニキの何ですか」
などという
言葉がおぼつかなげ ろれつが回らない
平日だが 晩にはまだ早い 7時前だ
酔っている? 老人と話しているような印象
「あなたなんで電話してきたんですか」とも
遅れてお悔みを言い 友の命日であるから電話したのだ
そう説明した
「ぼく アニキが死んだ日知らんのです」
ああ 海外に長く住んでいて 友が死んでだいぶたって帰国したような話は聞いていた
死んだ日を知らないって 位牌に書いてないですか お父さんの納骨は済んだんですか
そう尋ねた
「あ 2人の骨 まだ置いてあるんです…」
……
「あなた 律儀な人ですね アニキの命日に電話してくるなんて ぼくなんて ぼくなんてもう…首吊ろうかと思うてるんです…」
何を言い出すのだ
いやいや 元気があればなんとでも…
そうとしか言えなかった
「あなた律儀ですね こうして電話くれるんやし 律儀です 律儀です…」
友の弟は何度もなんども繰り返した
ぼくは本当に律儀なんだろか…
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