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「とんかつ屋」

その、とんかつ屋は
都心の真新しい、大きなビル
その地下街の、飲食店が並ぶ中にある。

昼は、どこもにぎやかだ
そこは、いつも店頭に人が並ぶ
やや早め、できれば11時半前には向かいたい
待たずにさっと入れるタイミング。

いや、
実は店に入る前に
彼女が、いるかどうかをチェックしなきゃ。

何気なく、どこに入ろうかな

まだ人混みができる前の
地下の飲食店街を歩きながら
ちらり

右手の店の中を見る
立ち止まってはいけない。

何気なく 何気なく
あくまで
どこに入ろうかな

迷っている
その体(てい)で、止まらず店の前を行くのだ。

店の奥のほうに彼女がいたり、衝立に隠れていることもある
見えないときは
何気に 何気に通り過ぎ
通路奥まで行って
Uターン、だ
そして、しばらく間をおいてから向かい
今度は左手から店の中を見る。

僕の行動 僕の心根など
誰も関心持ってない
そんなこと承知のスケ。

でも、でも
そうやって、ひそかに ひそかに
何気なく 何気なく
とんかつ屋に入るまでの
段取りが楽しい。

彼女が、いた!

ちんちくりんのおばさんのお運びさんとは大違い
色白でスラリと背の高い
美しい人。

山田さん
あなたを目当てに
僕はとんかつ和〇に
行っているのですよ。

キャーッ
言っちゃった!!

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