「昭和の末に…」
破線でくくられた 一つひとつのマス目
ぼくは枠いっぱいに
黒ボールペンの濃い文字で埋めていく
一文字 ひともじ
力を入れて 速くはやく と
コトは 一分一秒を争うのだ
「完全原稿で!」
と
デスクは言う
そんな 直しのない原稿が書けりゃ
苦労はしない
何を書いているかわからない…
どうせ デスクが直すのだ
勝手に直すのだ ぼくの原稿を
真っ赤になった原稿がパンチャーに渡される
パチンパチン と音を立てて
文字が 文章が打ち込まれる
パンチャーは原稿データを打ち込んだ紙テープを読み取らせ本社に送る
「いま原稿入れましたぁ」
と電話で知らせ 原稿を投げて寄こした
デスクは
「こんな風に最初から書いとけよ」
と
それができりゃ こんな所にいないよ
きょうも直され あすも直され
ネタ取ってこーい その大合唱で
日が暮れてゆく
あれから35年か…