■面白い物語だが、詩には影響はないか
現代散文自由詩人の独り言(88)
◇林真理子「アッコちゃんの時代」
2005年8月 新潮社刊
林真理子の「本」はデビュー作の「ルンルンを買っておうちに帰ろう」(1982年刊)を読んだ記憶(ひょっとしたら読んでないかも。少なくとも手元にはない)は、あるがそれ以外は週刊誌掲載のエッセー以外に読んだことはなかった。ドラマ化されたものは何作か見たけれど。
この小説は、先月「■深みのない本と印象深い本」で触れた川添象郎もモデルのひとりになっていて、読んでみたい、と思い図書館で借りて読了。
主人公の「アッコちゃん」については、NHKが「東京ブラックホール」で本人にインタビューをし、放送したのも見ていた。今もサイト上に「東京ブラックホール “秘録” バブルの時代」として閲覧できる。
小説「アッコちゃんの時代」は物語としてたいへん面白く読めた。
内容
僕の妻(57歳)に、この本を読んだことがあるか、と聞いたら、「読んでいる、週刊新潮連載時に読んだ」と話した。ああ、2005年当時は週刊文春、新潮は毎号買い、家に持って帰っていたっけ。当時は林真理子の小説なんて読もうとも思わなかったので、妻が読んでいたとは…へぇ~と思った。
妻が社会人になった当時、まさにアッコちゃんの時代の終末期。地方の某政令市のデパートで働いていた彼女にもわかる場面が多いのだという。僕は地方都市の企業を辞めて1987年に新聞社に入り直したが、もちろん20代半ばではそんな世界とはほぼ無縁だった。その意味で、バブル=アッコちゃんの時代を少しでも見聞きできた妻がうらやましくなった。
にしても、林真理子に限らないのだろうが、男性作家、女性作家を問わず、大量に売れる作品を書く、書けるというのはすごい才能だ。
ただ、この小説の文章や描写、その世界が、僕の詩作の参考になる感じはないとも思った。
林真理子、今も膨大な作品を残し、書き続け、一定数売れ続け、NHKBSでのドラマ「我らがパラダイス」も始まったばかりで、初回を僕も見た。
所詮、「林真理子の小説は大衆向けエンターテインメントでつまらない」という僕の思い込み、偏見が実際に彼女の本を手に取って読む気にはなれなかった。しかし、多作なので中には「詩作」の参考になるものもあるのかもしれない…。ただ他に読もうと思う本が多すぎて、次に彼女の小説を手にすることは来るだろうか。
ストーリテリングのすごさは学びたいが、「何か」が残るようなものではない…というこれまた、一種誤った認識かもしれない。