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■こんな読み方では 詩人さんに失礼

「詩の本」を読んで (27)

「詩を読まねば、詩集を読まねば」――そう思いながら、違うジャンルの本に手を伸ばすことがほとんど。
今、小説「水平線」(滝口悠生著)を読んでいて、詩のほうはおろそかになっている。
それでも、ついつい図書館で借りてしまい、部屋の隅に積んでおき、返却期限ギリギリに飛ばし読みしてしまう本がいくつもある。

そうして読んだのが下記の2冊。ともに、同じ作者である。

◇岸田将幸「亀裂のオントロギー」思潮社 2014年12月刊


内容
日がめくれ、詩篇 書いても何も書かれない 「先に行ってくれ」 今日、暖かい一日に僕は犬の背中 まっすぐに倒れ込む時(「亀裂のオントロギー」より) 詩集。第6回 (2014年度)鮎川信夫賞受賞。

図書館データ

◇岸田将幸「風の領分」書肆子午線 2021年3月刊


内容
僕の投げ輪はきみの指輪 さよならの手を振っても落ちない指輪 心臓のあたたかさをひとつ きみにあげる ランプシェードのなかから(「県道」より) 『現代詩手帖』ほか掲載に未発表作品を加えて書籍化。表紙は穴あき仕様。第29回(2021年度)萩原朔太郎賞受賞。

図書館データ

詩集であり、現代詩の集まりであり、行間、文字間もびっしり…というものでもないので、1冊30分もあればじっくり読めるのだが、2冊をその半分くらいで飛ばし読みした。

言葉を味わうというより、文字を拾って、文字と言葉を写真のように眺めて、流して読んだ感じ。文字と言葉の配置は「現代詩」のそれであり、文字間、行間から漂うそれは、それ以外の何ものでもないので、そんな読み方になる…。
結論からいうと、いかにも現代詩の1冊という感じ。書いた人には失礼な読み方だろうが、飛ばし読みせずともたぶん印象は変わらないだろう。言葉のサラダ風である。

「風の領分」の中で、いかにも――というくだりがあったので書き写そう。

「死にたい」という呟きも生ぬるい春の針、詩は金切り声であろうとする理由を失くした
死者の無言の自問の中で、
悪の夢を見ることで俺は遺体であることも消化している、そしてひたすら心のない、歌を口ずさんでいる

風の領分より「風の領分」

いかにも…でしょ?

これが心に響き、すとんと体の中に落ちるという人もいるんだろうし、有名な詩賞を受けているのだから、相当な詩であり、詩人なんだろうが、自分の、ぼくの趣味ではない。

ただ、ウィキベテアによると、この詩人は故郷の愛媛県でアスパラガス農家をやっているそうで、地に足がつくような仕事をしているから、もうちょっと違う詩もあってよさそうだ。ぼくが未読なだけであるのかもしれない。
さらに、ググると、彼は元日経新聞の文化部記者だったんだ、と。朔太郎賞受賞を受けての朝日新聞記事で知った。
つまり、かつてはぼくとも同業だったっていうことだ。急に親近感が湧いた。
黒田三郎(NHK)、中桐雅夫(読売)、北村太郎(朝日)ら、元新聞社(マスコミ)勤務の詩人には親近感がある―。

上記2冊の詩集は図書館に返却したので、また改めてこの元新聞記者の詩を読んでみよう、忘れなかったら。

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