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「鈴(りん)」

線香を三本立てます
朝に夕に
亡き父、母の遺影の前です
まずは、ろうそくを灯し
その炎に線香をあて
火がついたところで さっと振ります
煙が立ちのぼります

三本にはひとつずつ
意味があります

一本は
 仏 悟りを得たほとけ
二本は
 法 のり、しきたり
三本は
 僧 修行するもの わたくしですね
ブッ ポウ ソウ――
そう、悟りへの遠い道のりを
わたくしは歩んでいる

しておきます

そして
鈴(りん)を
チンチンチーン
と三度鳴らします
これは、
チン 世界
チン 人類
チーン 平和になりますように

心を込めて
祈るのです

でも
でも
ちょっと前までは
チン 宝くじ当たりますように
チン 出世しますように
チーン イイ女に出会えますように

などと
不埒で我欲に満ちた思いで
両手を合わせていた
…ことも。

今は 今は
心境が変わりました

チン
チン
チーン

世界、人類の平和を
祈っています
ほ・ん・と
です。

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