「助手席」
真っ直ぐ伸びる一本道
女がハンドルを握る
急ブレーキ
急発進
車は大きく揺れ 軋む
助手席のぼくは
女の乱暴な運転に身がすくむ
猛スピードで
車は走り続ける
道路はところどころ工事中
片側だけになり
しかも砂利道
砂埃を上げ
小石を弾き
車は疾走する
左側にガードレールはない
その際をタイヤがこすり
転落すれば
これだけのスピード
時速70-80キロは出ている
相当な事故になる
生きた心地がしない
急ブレーキ
急停止
転落することはない
そのまま女は
アクセルを一杯に踏み
急発進――
ハンドルを握るのが女――
ぼくには そうとしかわからない
急ブレーキ
急発進――
急ハンドルはしない
だから
引っくり返ることはなく
車は前に進む
急ブレーキ
急発進
何度もなんども繰り返す
ぼくは
逃げだすこともできず
生きた心地を捨て去り
車に揺られ続けるしかない
女の顔も見ないまま