「エピタフ」
ひとり 博物館にいる
ひとつの石碑 文字がある
何ごとかが 刻まれている
碑はレプリカである
巧妙に造られた それは
石ではない
プラスチックに刻まれた文字は
崩れていて 何ごとかが刻まれている
そうとしか分からない
プラスチック造りの
レプリカの碑
私はその表面をなでる 指先で
確かにプラスチックであり
石でないと分かる
それでも 何ごとかを
読み取りたくて
私はプラスチックの碑に指を当て続ける
長いながい夢から目覚め
自分がどこにいるのか
その碑文が教えてくれるような気がして