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【提出詩】「あの彼女」
朝 6時5分 アラームの音で目覚める
やっとこさ と床から出て
ぼくは準備を ランニングに出る準備をはじめる
四股をふみ スクワット 腹筋 そしてストレッチ
急いでやるのだ
急いで走り出す体をつくるのだ
6時30分――
もう出ないといけない 間に合わせるのだ
外 空気は冷たく薄暗い
5分弱走り 中学校の前
向こうから彼女が歩いてくる
駅に向かう道を急いでいる
すれ違いざま チラリとその顔を見る
やり投げの金メダリストを一回り小さくしもっときれいにしたような彼女
以前も見かけることがあった
ぼくは毎日勤めに出て朝のランニングを休んでいたのだが
この前仕事をやめ 朝ランを再開した
すると 出勤する彼女をまた見るようになった
遠くからでも柄の大きい彼女にはすぐ気が付く
でも毎日パンツをはいていて なんだか前より地味になったような
彼女 都心のオフィス街に向かう自信にあふれた仕事モードの表情だった
それが今 うつむき加減に歩いている マスクもしている
まさか こんなおっちゃんを意識してるとか?!
ほんの一瞬すれ違うだけじゃんか
次から時間をずらしたりするかもね 彼女――
そんなことを考えていると 大通りに出た
信号が変わり横断歩道を人びとが渡ってくる
すれ違う女性の中に
やり投げ金メダリストを一回り小さくしもっときれいで都心のオフィス街で働くアラサー女性がいた
えーー
もうひとりいる!! こちらはスカート姿だ
いや こちらが あの彼女ではないか!
パンツ姿でちょっと地味なさっきの彼女とかなり似ている
でも 違う人だ こちらのほうがあか抜けてて あの彼女なのである
この数日 あの彼女だと思っていた人が 別の彼女だったのだ
よく似た女性がほぼ同じ時間帯に急ぎ足で駅に向かう
そんなことにぼくは遭遇し 頭の中がからっぽになった