「バスに揺られ」
「次は終点の江東学苑~
終点まで行きますか」
怒鳴るような運転手の声にハッとした
行き過ぎた―
寝ていたわけではないが
ぼんやりと窓外の景色を見ているうち
港町のバスターミナルを過ぎていた
「降りますっ!」
慌てて声を上げ
ぼくはバスを降りた
バスは海岸 砂浜の上を走って行った
細かな砂が海の水で固められ
道となった上をバスや車が走る
右手に日本海
左手に朽ち果てた浜茶屋
それらを見ているうちに
終点のひとつ前まで来てしまった
砂浜は固い土のようで
靴が沈むことはない
スマホの地図を見ると
港町に戻るには3キロほどもある
日はまだ高い
雨も降っていない
歩いて戻ることにした
あの町に何があるわけでもないのに
ぼくは人気のあるところに
戻るしかない