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【映画評詩】「ぼくの気持ち」

父と母
子にすれば 親同士がいがみ合い 争う
そこかしこに ある風景

親たちは「愛」し合って ぼくが生まれた――
そうではなかったのか

父とぼく ぼくと父
母とぼく ぼくと母

小さなぼくは思った
お父さん お母さん
けんかしないでおくれ

親たちは 心が離れたもの同士
それでも 同居し生活を続ける

妻には人生が開け
夫には先が見えない
二人でひとつだったのは昔の話
今は恨み合う

子は事故で目が見えない
それでも耳は聞こえ 空気は読める

父が死んだ 転落死
自殺か 妻が殺したのか
――妻は法廷で問われる
子であるぼく
目が見えない…子も法廷で証言する

いがみ合った二人の片割れが消え
妻は妻でなくなり 一人の女となり
母と子だけの暮らしに「平和」訪れる

人の心が発火し燃え上がり
それが暴力となった瞬間に起きた事件
それは検察の見立てだ
心を病んだ男が衝動的に落ちた残念な事故
弁護士は主張する

それぞれをどう受け取るか
見る者には苦い思いが泡立つ

小さなぼくは
ずっとそれを引きずって生きねばならない
目が見えることもないまま

eiga.comレビュー

「落下の解剖学」公式HP


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