「けがす」
なんにもしていない なんにも見てもいない
なぜか 下半身がむずむず熱く
そして ひどく硬くなり
ぼくの パンツの中で ひとつの もの が
硬く それなりの大きさに 熱くなってしまい
青葉若葉が初夏の陽光の中 キラキラしてる公園で
ぼくは ちょっと 立ち止まり
休まなきゃ
と
思った
遠い とおい 昔
梅雨が明け 真夏のぎらぎら太陽 日差しには
まだ ちょっと間があるような 昼下がり
今 東京の際ともいうべき
隅田川の 首都高高架下を
自転車でうろついていたら
遠いとおい昔にあった 気分になった
その気になった
遠い昔なら
どこか トイレでも入るか ないならないで
誰の目にも触れないようなところを見つけ
きっと
ぼくは 自分をひとり 涜(けが)したに違いない
涜す?
いや
それは きっと 西洋のくだらない古臭いかび臭い
宗教的な 戒め から来る考えだろ
とんでもない!
その行為は ぼくを ぼくだけでなく 男どもを
パラダイスに導き
身も 心も 浄化させるような
行いなのだ
そうだ そうだ
そうやって 行為したのだ したのだ ひとりで
外はまだ 少し初夏のさわやかさ
風 若い緑のにおいを 風はまとい
その中に 身を置くと
自然の中の一部となったぼくは
ぼくの中から
青臭い 生を感じさせる 熱い液を放出する
そうだ そうだ その行いだ
この季節に 外で行うのに
似つかわしい
その行いだ
ああ それ それ それだ
あの行い
首都高高架下 隅田川の川っぺり
そこにタクシーやらトラックやらが貼り付き
運転手が ひと休みしているような場
そこで そんな ぼくなりのひと息を
つきたいものだ
ただ
今 たぎるようなものは消え
行うこともなく ぼくは自転車にまたがったまま
その場から離れた
自分を涜すことは なく
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