【東京詩】「応えてちょうだい」
今朝8時25分
両国を出て浅草橋に向かう 総武線
10両編成の電車が 隅田川の鉄橋を渡る
それに 乗っていた
あなた
ぼくが 隅田川テラスの階段の上で
手を振っていたのを見ただろ
ランニング姿で 両手を挙げ
片手の帽子も一緒に振っていた
気づかないはずはない
ぼくを絶対見ているはずだ
今日だけじゃない
いつも ぼくはそこで
走ってくる電車に向かい
そこに乗っている
あなた
が
見てくれる
と
思って 手を振っているのだよ
知ってるでしょ
見てるでしょ
たまには 手を振り返しておくれ
いや
そんなことは しないよね
ぼくは
あなた
が
いやいや仕事場に向かっているのを
笑いながら見てるんだもん
哀れな労働者だって
見下げてるんだよ
そんな ぼくのねじ曲がった根性を
知ってるんだろね
もう一回いうよ
今朝だけじゃない
いつも
ぼくは
そこで
あなた
哀れな
あなた
に
手を振っているんだ
応じるわけがないよね