「昭和のころ」
事件だ
現場だ
取材だ
カメラだ
まずは「画」が要るのだ
話は後からいくらでも聞ける
現場では まず画を押さえろ
関係者が写っている写真は
複写なんてせず
アルバムごと持って行け
全部だ
他社に持って行かれる前に だ
それが肝心だ
取られる前に 取ってこい!
現場に行った
カメラを取り出した
どういうわけだ!?
これは
フィルムカメラじゃないか
数字が「2」とある
つまり あと30枚ちょっとしか撮れない
なんでフィルムカメラなんだ
昭和か!?
確かにあの時代には
フィルムカメラだった
そして常に予備のフィルムを持っていた
撮り切ってそれがなければ
他社の知り合いに頭を下げて
フィルムを借りる
フィルム? ハァ?
そうだ
今は2023年だ
フィルムカメラを現場に持って行くなんて
あ・り・え・な・い!!
なんで だ?
とにかく
「画」だ それを押さえるのだ
36――
フィルムを最後まで撮り切った
これを「パトローネ」に巻き戻し
現像に回す…
しまった!
フィルムを巻き戻す前に
裏ブタを開けてしまった!
光が入ったら
フィルムは終わり
まさか まさか
慌てるな
光が当たっても全部だめになるとは限らない
大丈夫 大丈夫 きっと大丈夫――
さて
そもそもこのフィルム
2023年の今
どこで現像するのだ
昭和のころみたいに
あちこちに現像(DP)屋があるわけでない
ああ どうして昔の現場の夢をみるのだ
昔のことだから
夢をみるのだ…
あたりまえだ
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