「還暦+1」
夢はこころの 合わせ鏡
自分の後姿を 無限に写す
そこに 自分の本当の姿があるからか
いつもは 見えぬその 影が
夢の形を借りて おぼろに浮かぶ
大学を卒業できない
就職が決まらない じりじりと時間がたつ
定年という サラリーマンとしての
フィニッシュテープを切り1年
なのに
会社勤めの前 何十年も前の 暗い思い出が
浮かび 眠るぼくを 揺さぶり覚ます
そのテープの先に
安穏な世界が待つ――
などという気持ちは とっくになかったが
安穏どころか 常に不安がへばりつく
それが現実
現実世界が 合わせ鏡の中に溶け込む
そこは 遠い過去の 不安の苦界
夢からの寝覚め
遠い過去の不安
それを反芻しながら
なかったこと 終わったこと
そうだ そんなのは 昔のことだ
いちいち 頭の中で確認し
一日が始まる
それは 不機嫌な 朝
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