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「人新世」

この地球の
ごく表層に
ぼくらは生きている
地上から地下へ
海上から海中へ
せいぜい数キロ 数十キロ下の世界
そんなのは
地球の薄皮

その程度のところに
ぼくらの
力と手が
ようやく届くか

そのごくごく薄い
地表面
その薄皮を
ひっかき ひっかき
ぼくらは生きてきた――

急変したのは
せいぜい100年以内
いまは
人新世ひとしんせい
などと呼ばれ――じんしんせい とも――
ひとつの地層を成しているという

化石燃料を
どかどか燃やし 焚いて
70年ほどで
二酸化炭素を大量排出
気候変動を起こした…

それを
ぼくら「人」がやっちゃった

本当か 本当なんですか

ごくごく薄い
皮をひっかいたくらいのことしか
ぼくらしてないでしょ

いずれにせよ
地球の中から出てきたものを
ほんの少し
その皮の上にバラ撒いた
――そのくらいのこと――

少なくともぼくは
やったつもりなんて
ない
「人」類はそんな大事おおごと
やっちまったのか――

分からないわからない

ぼくにはわからないのだけれど
今や
ひっかき傷が
大きな傷になっちゃった
そう言い募る人たちがいて

ヘーキヘーキ
という ぼくのような声は
聞いてもらえず
今すぐ
天が落ちてくるって
それを押し返そうって
大声をあげ
大暴れする
グレタ・トゥーンベリみたいなのがいて

そんな人らが
呉越同舟
わいわい
やいやい
言い合い 言い争い

人新世っていうものの
正体がわかるときが
100年200年したら
やってくるのかい

ぼくは そのころ
この地球にはいないんで
何の爪痕も残さないまま
消えているんで
ぼく自身が
化石になることも
見つかることもないまま
ぼくの
分子が
地の上を
地の中を
海の上を
海の中を
漂い続けるんだろう

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