いまさら聞けない“あの3文字”の謎
町場の蕎麦屋さん「町蕎麦」を巡り、その魅力をアーカイブしている「町蕎麦を尊ぶ会」。このnoteでは町蕎麦にまつわるアレやコレを綴っていきます。
さて、1本目となる本稿では町蕎麦とは切っても切れない”あの3文字”について触れていきます。看板や暖簾で見かけるあの3文字です。
こんなところや、
こんなところに。
書かれているのは、
そう、この3文字です。
1文字目は「き」のように見えます。3文字目は「む」に濁点がついているような。2文字目に至ってはまったく見覚えのない文字です。
はてさて、なんと読めばよいものか。
ズバリ、答えから
この3文字は「きそば」と読みます。
そして、この3文字を現代人が読めないワケは、これらの文字が変体仮名だからです。
変体仮名のルーツは、平安の時代。
中国から入った漢字で日本語を表記すべく、生み出した表音文字がその始まり。そして、例えば「ア」という音には「安」や「悪」、「愛」など複数の漢字が当てられていました。こうした漢字を書きやすいように崩したものが平仮名です。ですから、「ア」という音には複数の平仮名が存在しました。そうした一音に対して複数の平仮名であったところを、“一音一字”へと塗り替えたのが明治33(1900)年の小学校令施行。この令を境に、多くの平仮名が姿を消し、その消えた平仮名たちを変体仮名と呼ぶのです。
ゆえに現代人のわたしたちは変体仮名が読めないのです。
“あの3文字”の成り立ちは?
さて、話を町蕎麦で見るあの3文字に戻しましょう。
「きそば」の音に当てられた漢字は、この3文字です。
左から「キ」、「ソ」、「ハ」です。
見覚えのある漢字ですね。これらの漢字が平仮名の元になる字源(字母)であり、ここから平仮名として崩していくと……
さらに崩すと、
お、“あの3文字”に近い!
そして忘れていけないのは、
3文字目が「ハ」を表す「者」からの崩しであること。
ゆえに3文字目には濁点が添えられ、
晴れて、
となるのです。
読み方は「きそば」。
「きそば」の意味は?
「きそば」が意味するところは、
うどんと区別する“混ざりっ気のない蕎麦”を、
はたまた乾麺ではなく打ち立てを使っていることを表現するなど
諸説ありますが、「生蕎麦」であることには間違いがないようです。
なので、一文字目を変体仮名の「キ」ではなく「生」と記すケースもあるのですね。
文字の由来と読み方を知れば、
見慣れた暖簾もさらに味わい深く映ることでしょう。
さぁ、町蕎麦へ参りますか。
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