一度でもいいから勝ちたいんだ|『YORO 100元の恋』(原題:熱辣滾燙 Yolo)
安藤サクラ主演による2014年の日本映画「百円の恋」を、中国の国民的コメディアンで女優のジア・リンが監督・主演を務めてリメイクした本作。
わたしは今、中国語を勉強しているのですが、本作が中国の春节(旧正月)のシーズンに公開され大ヒット、中国でリメイクされた日本映画における最高興行収入記録を達成したというニュースを知っていたので、日本公開を楽しみにしていました!
32歳の無職で実家に引きこもる日々を過ごしていた主人公ドゥ・ローインは、実家に戻ってきた妹と大ゲンカしたことをきっかけに、家を出ることに。そんな折、偶然出会ったボクサーに一目惚れしたローインは、ボクシングを始めるが、彼は試合に負けて姿を消してしまう。すべてを失ったローインは自らもボクシング大会への出場を決意する。
というあらすじです。
「百円の恋」の安藤サクラさんも、ラストはバキバキに鍛えた素晴らしいボクシングを披露しましたが、本作のジア・リンさんはびっくりするくらいの減量に成功し(体重100キロから50キロの減量!)、その過程を見るだけでも思わず涙してしまう、胸にくるものがありました。
ジア・リンさんは中国の国民的コメディアン・女優とのことですが、わたしはYouTubeでバラエティ番組に出演しているのを見たことがありました。
最初はポスターに映る女性と、バラエティ番組で見た女性が同一人物だと気づかなかったほどです。約1年にわたってほぼすべての仕事を停止し、メディアから姿を消し、撮影とトレーニングに専念していたそう。
(エンドロールでは、彼女の減量日記とトレーニングの裏側が流れるので、エンドロールの最後まで必ずご覧ください!)
今まで人に優しかった(流されていた)彼女が、初めて怒りと立ち上がる力を得る姿が、ボクシングというスポーツに自然に混ざり合う。
過去を全て壊すようにボクシングに打ち込む姿は、たとえ自分の人生に挫折してしまったと思っても、失敗ばかりだと思っても、自分は弱いと思っても、たった一つのことをやり遂げる、それが小さいことでも不慣れなことでも、「一度だけ勝ちたい」というその想いが未来の自分を作る。そんなメッセージを受け取りました。
内なる自分と向き合う、殴り合った相手と最後には抱き合う、そんなスポーツと彼女の心境の変化が重なる。
スポ根映画なので、派手な演出やドラマチックな音楽は、ぴったりだと思いました。わたしが大好きな「映画の中の練習シーン」もたっぷり見せてくれて嬉しい!
大ヒット作だけあって中国国内での賛否は両論という感じですね。わたしがチャットしている中国人の友達は「日本版の方が面白い」と言っていました笑。
中国語の映画評もいくつか翻訳してみたのですが、否の批評としては「ダイエットバラエティーショーである」という意見が多く、ジア・リンさんの減量ばかり宣伝されている、映画の内容ではなく減量成功ばかりに注目が集まっている、というコメントがありました。
中国国内の宣伝に触れていない外国人が、単純に映画だけを見て受ける感想とは、少し感動度合いの乖離は生まれてしまうのかもしれません。これはしょうがないですね。
あと本作に登場するいわゆる”悪役”が少しステレオタイプなのは後から気になりましたが、ラストに向けての勢いとカタルシスに鑑賞中は考えることなく楽しめました。
そう言えば、日本版と中国版はラストが異なります。こういう違いについて好きか嫌いか、語り合えたら楽しいですね。
また邦題の「YOLO」はアメリカ公開時のタイトルで、「You Only Live Once」の頭文字をとった「人生は一度きり」という意味の言葉だそうです。
ちなみに今現在、人民元100元は日本円で2047円くらいなので、オリジナル版が意味する「100円」と「100元」は大きく異なります。これは日本の宣伝会社が分かりやすさを意図してつけた邦題だと思いますが、ちょっとチグハグ感を感じますね…。
MarieClaireでの対談が素敵すぎた!
中国版のMarieClaireで、ジア・リンさんと安藤サクラさんがスチール撮影を行なっているのですが、この2人の雰囲気がとってもとっても良くて!!
同じキャラクターを演じたふたり。共鳴するものがあったのかなと勝手にすごく嬉しくなりました!
▼ジア・リンさんと安藤サクラさんの対談
ジア・リンさんは中国語ですが、安藤さんは日本語を話していますのでぜひご覧ください。ふたりがとても可愛くて素敵です😊
▼微博にほかにも素敵な写真が掲載されています!
▼▼『YORO 100元の恋』に登場するごはん▼▼
ビール/歩きながら食べるわたあめ/串焼き屋のバイト/実家で食べる手羽/カエル料理は嫌いというセリフ/インスタント麺/アイス
ボクシングをするための減量が必要なのですが、主人公が串焼き屋でバイトするので串焼き(烧烤)が出てきたり、「カエル料理は嫌い」というセリフがあったり、随所で中国らしい食文化を感じられるのがよかったです。
家族の中でも唯一の理解者であるお父さんと2人での食事シーンもとてもよかったですね。