『アリアドネの声』

『アリアドネの声』井上真偽
障害者支援都市で巨大地震が発生し、地下の危険地帯に一人の女性が取り残されしまう。しかも女性は三つの障がいを持っていて見ることも聞くことも話すことも出来ない。こんな絶体絶命の状況の中、ドローンを使い、あらゆる作戦を用いて救出を目指す、ゲームのようなドキドキ感がある小説。
ゲームのようなドキドキ感が面白い小説ではあるのだが、別の感想があるので少し書いてみることにする。

ネタバレあります↓
#ネタバレ
ドキドキ感が面白いのは嘘では無いのだが、本当に読んでいて感情が動いた瞬間があった。
物語中にとある出来事がきっかけで、障がいを持った女性に対して「ホントは目が見えているのでは？」という疑問を抱いてしまう。
目の見えない人の気持ちが分からないであろう読者も同様に疑心になりながら読み進めることになる。
最後に女性の救出が成功し地上に上がってきた瞬間にすべての疑問が晴れたとき、疑心を抱いてしまった自分がものすごく恥ずかしく思えてしまった。
この感情の揺さぶられ具合が、この小説の本当の読みどころだと感じる。

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