結局のところあそび場ってどんな風景?【移動式あそび場レポ】
昨シーズンからご縁を頂き出動している
Jリーグクラブ水戸ホーリーホックホーム試合でのあそび場づくり。
11月3日(日)を以て、今シーズン最後の出動が終わりました!
2024シーズンの最終回。
11月3日は、ホームで試合を行う最終節であることに加え、
水戸ホーリーホッククラブを代表するレジェンド選手の現役引退という特別な試合でもあって、ホーム&アウェイの両サポーター・ファンの方々が過去最大の盛り上がりを見せていたケーズデンキスタジアム水戸。
おそらくスタジアムに訪れたファミリーの数も過去最大だったのではないでしょうか。
結果は
✓ スタジアム入場者数記録更新の10,488名。
✓ ピッチサイドのあそび場利用者数初の500名超。
あそび場は、開場前から入口のところに何人もの子どもたちが集まっていてまだかまだかと身を乗り出して待っている姿が。
子ども「あと何分?」
ー「15分」
子ども「あと何分?」
ー「14分30秒」
子ども「あと…(以下、省略)」
というやり取りを開始時間まで続け、
開場と同時に、わーっとあそび場に子どもたちが溢れて
すぐにそこかしこであそびが生まれていました。
まちのこ団のあそび場とは
ぼくたちまちのこ団の提供する場は、
いわゆる子どもをスタッフに預けておけるという託児スペースでも、
受益者がコンテンツを消費するだけのキッズスペースでもなく、
そこにある限られた場や空間や物品などの資源を
場に集う人々で分け合い、共有する「あそび場」。
ほとんどの場合でコンテンツの回数制限や年齢制限、禁止事項などの「ルール化」を行っていません。
「ルール化」をすれば、その場から不満や不安が解消され、効率化されて円滑に動くことはわかっていますが、一方で、ルール化を行うことで、失われる様々なこともあります。
(大前提として、主要スタッフは重大事故につながることのないハザード管理・リスク管理を毎回事前事後の確認と研修を行なっております。)
あそび場をルール化することで失われるもの。それは、
一言でいうと、「当事者という認識」ではないでしょうか。
どうすれば、自分とこの場にいる他の人が楽しく心地よく過ごせるだろう。という当事者意識が薄れていき、あの子が守ってない、あの親は身勝手だ、などの守る守らないの軋轢が容易に生まれ、(自分はできるのに) 他の人が出来ていないことをただ他責にするだけに帰結し、そこで思考が停止してしまう。その事象がとても悲しく、同時にとても恐ろしいことだと感じています。
「できない」
で止まるのか。
「じゃあこうしよう」
ができるのか。
これは、あそび場だけではなく、
子どもが成長していく上で欠かせない思考の切り替えであり、家庭や学校、会社などの社会においても不可欠なマインドセットです。
言い換えると
できないことを諦観や暴力で訴えるのか(他責)
できるように発想や理性を働かせるのか(自責)
ということでしょうか。
まちのこ団の運営する全ての場において掲げている、
【自分の責任で自由に】
というモットーは、それを明示するとともに、投げかけています。
「制御可能性」と「創意工夫性」
加えてお伝えするならば、ぼくたちのつくるあそび場の特徴は
「制御可能性」と「創意工夫性」といえます。
これら2つは「オブジェクト」と「あそび」で考えるとがわかりやすいです。
【オブジェクトの制御可能性】
(自分たちで)動かせる、積み上げられる、運べる、組み立てられる、消せる、壊せるetc.
【あそびの創意工夫性】
こうすればもっと面白いぞ、こうすればぶつからないかな、こうすれば一緒にできるねetc.
そこにあるものが動きや変化がない固定されたもののみで構成されておらず、アプローチによって様々な変化や進化(あるいは退化)を起こすことができる可変性が担保されたものであること。
そうはいっても、
あそび場が初めましての人たちと、何度も来ている人たちとで、感じていることや考え方、認識が同じところもあれば違ってくることもあります。
片づけまでがあそび
これは、あそび場のモットーを体感する場面の一つです。
団長をはじめ、各団員が「一緒に片づけよう」とか「片付けまでがあそびだよ」などと声掛けをしていると思います。
そしてまちのこ団のあそび場で多くの人が巻き込まれる現象でもあります。
「終わりだよー」の声にささーっと帰っていく人、なかなかあそびが終わらずにいる人、名残惜しそうにうろうろしている人、団員と一緒に片づけを始める人…
なんで片付けを一緒にやるのか?
それは、今までお伝えしてきたことを最も体験できるものだからです。
あそびの中で行ってきた「制御可能性」&「創意工夫性」そして、
「自責」マインドセット。
受益者(消費者・他責)観点の人は
誰かがやるからと考える傾向があり、
当事者(シェア・自責)観点の人は
自分がやろう、みんなであそんだ場だと動く傾向があります。
どちらが良い/悪いの話ではなく、
まちのこ団のあそび場は、そういうことを強制せずに楽しみながら実体験をもとに感じ、学びを得られるように設計しているということです。
それらをどう考えるかはこれを読んでいる方々がそれぞれ考えて頂ければ幸いですし、まだまだぼくたちも試行錯誤の毎日であり改善できることは日々あるのでよりよくしていこうと思います。
さいごに
今シーズン、終わってみると全15回。
そんな水戸ホーリーホックのあそび場で見えた風景は
子どもたちや大人たちが場をシェアし、プロの試合への熱狂を肌で感じると同時に、あそび場で自由にあそび、泣き、笑い、またね!といって帰っていく。そんな風景でした。
いままで理屈っぽいことを述べてきましたが、結局のところ、ただあそぶ。それだけでいいと思っています。その「ただあそぶ」がどれだけ大事なのか、その一端でもなんとなくでも感じ取って頂けたら幸いです。
改めて、
ご依頼を頂きました水戸ホーリーホックさま、大変お世話になりました!
また来シーズンもご一緒でき、
スタジアムでより多くの方々と出会えますことを心より願っております。
だんちょうからは以上です!
(文・写真=まちのこ団)