「第2のわが家」
たまプラーザ団地には、公園もたくさんあるし、すごく自然も豊かだし、文庫(※)もあるし、夏限定だけどプールもある。子育てするには最高な環境だと思って、物件が出たら教えてくださいとお願いして、2年くらいずっと待っていました。そしてこちらに来て、早くも12年になります。
好きな場所はいっぱいあるんですけど、目の前にあるドーナツ公園がやっぱり一番好きです。家の北側の窓から公園全体が見渡せます。ここでときめきもいっぱいありました。ドーナツ型の砂場があるからドーナツ公園っていうんですけど、団地には四つぐらい大きな公園があって、公園の名前は全部子どもが名付けたそうなんですよ。
私は3人の子どもたちと、もう一度子ども時代を生きるように一緒に日々を楽しんでいます。みんな体も大きくなってきて、部屋がすごく狭くなったのでので、引っ越したいという気持ちがピークになると、物件を見に行ったりするんですけど、その度にやっぱり団地が好きなんだって実感します。
引っ越してきたばかりの時に、鎌倉に紅葉を見に行こうって出かけたんですけどまだまだで、帰ってきたら団地の紅葉がとても美しくて! 鎌倉まで行かなくても良かったねと大笑いしたことがあります。桜にしても、河津桜から始まって、大島桜、ソメイヨシノ、八重桜などたくさんの種類が植えられているので長い期間お花見も楽しい。紫陽花やツツジも見事です。実りもね、ユスラウメとかブルーベリーとかビワ、ヤマモモ、梅、柿、いっぱいあります。実りは鳥と競争なんです。ヤマモモは木登りして採って、シロップにしてジュースにしたり、かき氷にかけたりして、みんな大好きです。最近はフキや三つ葉、山椒も楽しんでいます。本当に四季が美しくておいしい。今年はコロナの影響で、いつも芝を刈りに来てくれる業者がちょっとゆっくりだったんですね。気がつけばどくだみのお花があちこちに、すごくきれいに咲き誇っていたんです。どくだみはお茶にもなるし化粧水にもなるし虫除けスプレーにもなるんだよ、とご近所の方に教えてもらって、今年から季節の手仕事に仲間入りです。摘んでる時、どくだみのお花ってこんなに美しかったんだ!と感動しました。
2、3年前の夏休みに、ドーナツ公園のみんなが大好きなヤマモモの木に、「第2のわが家」という看板を見つけました。かまぼこ板のような木に紐を通してかけてあったんです。「第2のわが家」ってなんだろう? って思ってたら、その木の上で小学4年生ぐらいの女の子ふたりが、ある時は読書をしていたり、お菓子持ってきて一緒に食べていたり、なんだか好きな子の話で盛り上がったりしていたんです。でも、ある日ふと見たらその看板がなくなっていたんです。寂しくなって、その子に「第2のわが家じゃなくなっちゃったの?」って聞いたら、「第2のわが家ね、お引越ししたんだ、階段の横のもうひとつのヤマモモの木、そっちの木にしたの」って言うんです。見たら本当にそこに「第2のわが家」という看板が移動していて、またそこで何やら楽しそうに過ごしてる女の子たちを見て、かわいいな〜、すてきだな〜、とほほ笑ましく思っていました。
ドーナツ公園ではずっと、わが子たちはお庭みたいに過ごさせてもらってます。友達と持ち寄りパーティーをしたり、ススキを摘んできて手作りのお団子でお月見したり、友達が泊まりに来た朝はピクニックシートを敷いて朝ごはんを食べています。みんなでドーナツ型の砂場でドーナツを食べたこともあります。
誰か遊びに来ると、その子はもうみんなの友達。うちの子たちは年が近いので、みんないつも団子になって遊んでます。木登りもみんな上手。難易度があるんですよ。この木は登れるようになったけど、俺はまだこの木は登れない、とか。じゃ、この木登れたのならこの木にも登れんるんじゃない? とかみんなよく知っています。
トカゲを飼ってたときには、トカゲの朝ごはん探しから1日が始まって、夜の7時まで12時間近くずっと飽きずに遊んでいました。キャンプも海も大好きだけど、なんか、どこにも出かけなくても楽しいよね、って、ドーナツ公園はそういう場所です。
コロナの影響で休校になってから、夏休み恒例のラジオ体操を休校中やろうということになって、ドーナツ公園で朝10時からやっています。子どもたちは休校が終わって、もう参加できなくなってしまったけど、おじいちゃんおばあちゃん、ちっちゃい子たちもお父さんと一緒に、20人ぐらい集まって、今も続けています。いつの間にか、ラジオ体操で会える方々との時間が毎日の楽しみになっていて、こんな風に異世代と交流できるって温かいな、と幸せを感じています。これからの高齢化社会もいろんな年代の方と楽しい日々を過ごしながら、共に温かいまちづくりができたらと思うと、年を重ねるのも楽しみになってきます。そしてさらにまた団地愛が深まっていくのです。
※いずみ文庫 いずみ文庫は、たまプラーザ団地が完成したころより約50年続く私設の図書室 地域外の人も利用できる https://izumibunko.themedia.jp
インタビュー:2020年 夏
このおはなしは2020年No.007号に収録されています。
この度、2014年から発行を続けてきた冊子「街のはなし」1号〜9号を1冊の書籍にまとめることになり、クラウドファンディングを始めました。
シンカブル(Syncable)からご寄付いただけます。
昭和のニュータウンの温故知新。
住民のまちづくりの努力の蓄積と街の成り立ちを共有したい。
100人のナラティブ・地域の変遷と社会の変化を伝える 記憶を記録する本
たまプラーザ「街のはなし」書籍化プロジェクト
すでにご寄付をいただいている方には、御礼申し上げます。とても励まされております。そして、これまでご協力・応援してくださったみなさまにも、オンラインの寄付を通して、書籍化プロジェクトの仲間になっていただけたら嬉しいです。
街のはなしHPでもこれまでの活動を見れます。www.machinohanashi.com
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企画・文: 谷山恭子
写真:小池美咲
編集・校正: 谷山恭子・藤井本子・伏見学・街のはなし実行委員会
発刊:街のはなし実行委員会