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こんなときに⇒こんなときだからこそ


能登半島地震

2024年の元旦、能登地方を震源とするM7.4の能登地震が発生した。関東でも緊急地震速報が流れたが、現地の正確な被害状況は2024年1月1日21:00現在ではあまり伝わってこない。

正月早々、どう表現して良いのかわからない自然災害が発生し、正月気分も一気に吹っ飛んでしまったが、富山県・石川県・福井県には知り合いも多く、何人かとは連絡が取れたが、まだ状況のわからない知人もいる(もちろん、自身や家族等の安全や生活が最優先なので落ち着いてからの話が大前提)。
まちなかで飲食店を営んでいる方からは、身体上の被害はなかったものの店のなかが大変なことになってしまっているとの連絡もいただいている。
富山県内の以前に何度か相談を受けたある自治体では、耐震性の著しく低い庁舎の改築すら非合理的な理由の数々で進捗していないが大丈夫だったのだろうか。

過去の東日本大震災、新型コロナウイルスのときにも感じた「こんなときに」を「こんなときだからこそ」に置換して「何か」を行う必要性があると思う。

東日本大震災と新型コロナ

東日本大震災_流山市では

2011年の東日本大震災が発生したとき、まだ流山市の公務員をやっていたときだが、その日は午後休をとって運動公園にいた。
当時まだ現役だった耐震性のない総合体育館は、地震発生時に外から見てもプリンのように建物全体が揺れていて、本当に倒壊するかと恐怖を感じていると、中からママさんバレーの人たちが飛び出してきた。揺れがおさまると直ぐに中に戻って再開しようとしていたので、「ここは耐震性が非常に低く、先ほどの揺れでどこかに支障が出ているかもしれない」ことを告げ、慌てて市役所へ向かった。
初動に遅れてどうしようと思っていたら、多くの職員はテレビで東北の被害・津波状況を眺めているだけだった。
「今、公務員としてやることはそこじゃない」
すぐに建築のメンバーと相談して、(庁内の動きから見たら完全にスタンドプレーだったが)公共施設を手分けして翌日までかけて点検していった。

東日本大震災では福島原発の事故に伴う放射性物質の影響が流山市を直撃し、ホットスポットとなってしまった。この当時、右肩上がりに人口が伸びていたものの、放射能の影響が報道されていた期間は人口が若干減少するほどの被害が発生した。それだけではなく、当時は庁舎の管理担当もしていたため毎日、庁舎敷地内や周辺の放射能濃度を測定し、雨樋の周辺などの局地的に値の高い場所も散在していた。学校グラウンドなどにも基準値を上回る部分が一部存在したことから、この除染対策で20億円以上の費用が必要となってしまい、東京電力への賠償請求なども含めて非常に難しい時期であった。

東京電力管内にはピーク時15%の節電要請も出されていたため、管財課を中心として「データの見える化と水平展開」によって(ピーク時が測定できない低圧受電の施設もあったためピーク時での検証はできなかったが)約20%、17,000千円/4ヶ月の電気使用量を削減した。
更に電力調達先も、流山市長名で高圧受電の契約していた48施設を一斉にプロポーザルで別の電力会社(エネット)に切り替えるとともに、web上でデマンドが見えるサービスを活用してリアルタイムでの節電対策を講じていった。

「こんなときに」だからこその努力はしていたものの、一方で苦しんでいる人たちが多くいるなかでは。。。と外食をはじめ経済活動を徹底的に自粛してしまったことから、流山市内でも有名だった寿司屋などが次々と閉店していくこととなった。

東日本大震災_姉妹都市では

2023年の4月11日から延べ3回(計約1ヶ月)、姉妹都市の福島県内の自治体へ派遣されることとなった。初めて訪れたときは東日本大震災からちょうど1ヶ月で、まだ現地も非常に混乱した状況であったこと、庁舎のうち1棟は柱が剪断破壊していて今にも崩れ落ちそうであった。現地の職員はほぼ不眠不休で、大規模な余震が続くなかで目の前で次々に発生する事態に対応していた。

東日本大震災における罹災証明の現地調査

そんななかで最初の2週間は現地の職員とともにまちに出て罹災証明の現地調査を20〜30件/日の割合で行っていた。海に近いエリアでは、上の写真のように地元の職員でも場所が特定できず引いたアングルで「たぶんこの辺り」という写真で対応するしかない、厳しいものだった。
そうしたなかでも現地の市民の方々は「千葉から来てくれたの、ありがとう」と温かい言葉を次々にかけていただいたことが印象に残っているが、1件だけ「あなたたち外から来た人には自分たちの苦しみがわかるわけない」という正論できつく当たってくる方に出会った。このときに同行してもらったこの自治体の職員が「あなたのところも大変なのはわかるけど、自分も家が流されているらしいんだけど、震災後、1回も帰ってないから状況がわからないんだ」とリアルな言葉で対応されたことが心に残っている。
市役所に戻る道中に「大変ですね、少し見ていきませんか?」と声をかけたら「上司のなかには両親が津波で流されたけど、(プライベートな時間が全くなく)状況が掴めないので葬儀とかも全くできない人がいるんだ」と、このまちで何が起きているのかはじめて理解するとともに、公務員の本当の意味を教えていただいた気がした瞬間であったし、考え方を大きく揺さぶられた出来事であった。

しかし、何ヶ月かした後に訪れた際は少し日常の姿に戻ってきたこと、国が復興を旗印にすごい勢いで高台移転や防潮堤などの事業を(疲弊し切った)自治体がついていけないようなスピードでやり始めたことも影響したのか、自分に与えられた仕事は「公園トイレの設計」と「解体する消防庁舎の数量拾い」であった。こうした業務は地元の設計事務所に出してあげたほうが良いのではと提言したが、「うちのまちの文化だから」と聞く耳は持ってくれなかった。
更に大量に全国・世界からやってくる救援物資の捌きやニーズの発信がうまくできていなかったからか、山積みになったカップラーメンを仕方なく(全国から応援に来ている職員も含めて)職員が毎日3食、消費している状況も実在していた。
もっと象徴的だったのは、実際の現場では罹災証明と応急危険度判定はほぼ同様の業務であるが、別の部署で動いていたことから非常に時間がかかっていた。自分のような一級建築士で応急危険度判定の講習を受けた者であれば両方を同時に行うことができるので、より迅速・効率的に行うため統一化することを提言したが、残念ながら行政らしい部署間の「押し付け合い」で実現することはなかった。

この自治体も、庁舎を含めてこれだけの甚大な被害を受けていながら、現在までに本気で公共施設マネジメントや(ハード中心の国の復興事業ではなく自分たちらしい)まちの再生に取り組んでいる気配は感じらなれない。

「こんなときに」ではなく「こんなときだからこそ」できること、やらなければならなかったことがもっとあったはずだ。

新型コロナウイルス

2020年から数年間、世界を苦しめた新型コロナウイルス。
当初はどのようなものかわからなかったこともあり、ステイホームの大号令のもと「動くこと」が悪とされ、飲食業・観光業などを中心に多くの業態が軒並み甚大どころではない被害を被ることとなった。

自分のビジネスモデルも「そのまちに行って」「そのまちの人たちと膝詰めで」試行錯誤しながらやっていくので、「動くことを制限されること」は現場感覚がわからなってしまい非常に難しいので、いろんな工夫や配慮をしながら「なんとか現場にいって」「人数を厳選しながら」進めることとした。
こうした過程で特に気をつけたのは、「こんなときに」ではなく「こんなときでも」頑張っている地元の飲食店・物販店などに積極的に顔を出し、その店の一番良いものを買ったり食べたり飲んだりして、微力にすらなっていなかったかもしれないが、地域を知る・将来へつなぐことであった。
馬鹿騒ぎをするのではなく、静かに一人でさっと食べて帰る。事前に下調べをして必要なものをパッと買って帰る。人一倍の健康管理を徹底して、常に万全の体調をキープしつつ、感染対策を徹底する。「こんなときでも」できることは個人レベルでも間違いなくあった。

こんなときに⇒こんなときだからこそ

同調圧力

日本には(報道も含めて)文化として同調圧力が非常に強い。
大変な被害に遭われている方が多く発生している「こんなときに」、不謹慎だから遊んだり飲んだりしてるんじゃない。もちろん、今回の能登地震も含めて被害に遭われた方々への配慮は忘れてはいけないし、心に深く刻んで生きていくことは大切である。
しかし、「こんなときに」だからと言って過剰に様々な経済活動を抑制したり、言うべきこと・やるべきことを封印したりすると、そのことが後々ボディーブローとして効いてきて、思いがけないほどの二次被害を生むことは、これまで何度も経験してきたはずだ。
自分で何も考えないから、他人の言っていることが全て正義だと盲信するから「同調圧力」に何の疑問も感じずに屈してしまう、便乗してしまう。

こんなときだからこそ

今回の能登地震のようなことは決して嬉しいことではないし、ここから再生していくことは困難な道であることは間違いないが、自然災害は避けられない。自然災害がそのまちに甚大な被害をもたらすことも多い。被害をゼロにすることも現実的にはできないが、少しでも被害を抑制したり、リカバーを少しでも早くしていくことは人の手でできる。
「こんなときに」と内向きに閉じていても、何も変わらない。
「こんなときだからこそ」自分たちに何ができるのか、今しか見えないものがあるはずだし、大変だからこそ想いを形にしていく必要がある。

「こんなときだからこそ」、まずは本気でマインドチェンジしていくこと、全員でなくても全部のまちでなくても良いので、変わろう・本気で生き残ろうとする人・まちから変わっていかなければいけない。

まちみらいとして「ガチ検討会」

どのような形でやるか具体論はこの後で考えるが、こちらのnoteで記したような現状から脱却しないと「被害を抑制していくこと」も「リカバーを早くしていくこと」もできないので、下記のようなガチ検討会をやってみようと思う。
関心を持っていただいた自治体、民間事業者の方はコメントまたは個別に連絡(info@machimirai.biz)をいただければ幸いである。

  • 現地開催、web併用

  • 自治体職員がリアルで根本的な問題提起(何件か)

  • 参加者でその課題について徹底的にディスカッション

  • 次回までに自分のまちに持ち帰ってフィードバック

  • またディスカッション(⇒オママゴトではなく実践に)

  • 課題を提供していただく自治体職員は無料、民間事業者は有料(営業目的のコンサル、実務を前提としない頭でっかちの方の参加は不可)

  • 機材・会場・資金等を提供いただける自治体・民間事業者募集(協賛・後援等の名義、PR動画のCM等の特典あり)

  • 議員は参加無料

  • 数回から10回程度

  • できれば1月下旬〜2月上旬にかけて(見切りでも)スタート

お知らせ

公共FMフェス2024in福山

2023年8月に草加市で開催し、大好評をいただいた公共FMフェス。満を持して第2回を2024年1月17日に福山市で開催することになりました。
詳細は上記リンクで確認いただきたいと思いますが、今回もSlidoを活用しながら会場参加型の1vs1のトークバトルを3ブロックにわたって展開します。絶対に再現性のない・ここだけでしか聞けない・超リアルな場ですので、ぜひみなさんご参加をお願いします。

実践!PPP/PFIを成功させる本

2023年11月17日に2冊目の単著「実践!PPP/PFIを成功させる本」が出版されました。「実践に特化した内容・コラム形式・読み切れるボリューム」の書籍となっています。ぜひご購入ください。
出版記念企画の「レビュー書いて超特濃接触サービス」も絶賛実施中ですので、ぜひこちらにもご応募ください。

PPP/PFIに取り組むときに最初に読む本

2021年に発売した初の単著。2023年11月現在5刷となっており多くの方に読んでいただいています。「実践!PPP/PFIを成功させる本」と合わせて読んでいただくとより理解が深まります。

まちみらい案内

まちみらいでは現場重視・実践至上主義を掲げ自治体の公共施設マネジメント、PPP/PFI、自治体経営、まちづくりのサポートや民間事業者のプロジェクト構築支援などを行っています。
現在、2024年度業務の見積依頼受付中です。


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