脱・意識「だけ」高い系
最近感じること
「知っている」人は多い
最近、日本PFI・PPP協会主催のPPP入門講座でのアンケート、総務省の地方公共団体の経営財務マネジメント強化事業で訪問した先の自治体担当者との会話などを通じて、非常に感じることがあります。
担当や一部の幹部職員・首長や議員は公共施設マネジメントや自治体経営に対して高い関心を持ち、積極的にセミナーへの出席・関連書籍の購読・インターネット等での情報収集などを行なっています。
理論的なことや「一般的に言われている」優良事例、国の各種文書や政策などについては、こちらがびっくりするぐらい知識が豊富です。
自主勉強会
ここ数年、公務員の有志がその自治体内、あるいは自治体の枠を超えてつながり、それぞれのまちの悩みや政策などを共有する場が急速に増加しています。
なかには、自治体の職員が多くのまちに出向き、様々なツールを駆使しながらシミュレーション・ワークショップ形式で理論を学ぶ場も活況を呈しているようです。
FacebookなどのSNSによる発信やグループ、今般のコロナ禍でzoomなどのオンラインツールが普及したことも、こうしたことに拍車をかけているでしょう。
「何のために」学ぶのか?
意識は高い
前述の勉強会・セミナー等のなかには有料のものもいくつかあり、同時に自分の貴重な時間を使って積極的に「学ぶ」ことは尊いですし、その意識の高さは素晴らしいと思います。
特に公務員の中でこうした方々は「意識高い系」と庁内でも認識されているかもしれません。同時に幹部候補生とされている方も多いでしょう。
意識「だけ」高い系
多くの行政では、公共施設マネジメントはもちろん、福祉や教育、スマートシティやDXといった流行りの分野でも「紙文化」「ハンコ文化」が未だに残っており、具体的な改善・改革に向けたアクションがそれほど見られません。
前述の「豊富な知識を個人で蓄積した職員≒意識高い系」の人たちは、もちろんこうした問題を把握しているはずです。
わかっているにも関わらず、リアルなアクション、試行錯誤をしようとしないのであれば、その知識は全く役に立ちません。
この世界では、このような人たちのことを「通信教育の黒帯」や「研修ちゃん」と揶揄したりします。
要は、意識「だけ」高い系で留まっているうちは、個人としても知識としても自治体の経営、負債の資産化・まちの再編・まちの新陳代謝には全く役に立っていないのです。
同時に自分はわかっているのに、努力しているのに「上司ガー」「首長ガー」「議会ガー」「予算ガー」と嘆いているのも言い訳でしかありません。
プロは結果
実践の中で学ぶ
プロは結果が全てです。
公務員も行政のプロとしてだけでなく、そのまちの未来を担うプロとしての責任を負っています。
自分の中に知識としてだけいろんなものを蓄積していても、それは「個人としての暗黙知」にしかなりません。
大事なのは、試行錯誤を前提とした実践を繰り返しながら「組織としての経験知」まで持ち上げていくことです。
3年間支援させていただいた常総市では、「やってから考える」(≒やってからも考えない)をキーワードに様々なプロジェクトを実践しています。
早い段階から自分たちで考え、試行錯誤しながら自分たちらしく物事を進めるマインドは特筆すべきものでした。
公共R不動産主催の公共不動産逆プロポーザルにも第1回から参加し、積極的に民間事業者へPRをしていましたし、なんと第2回には神達市長も会場に駆けつけています。このことが契機となり、良品計画との連携協定にも至っています。
http://www.city.joso.lg.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/65/20191210.pdf
上記の市長インタビューからもわかるように「動く」こと、「やりたいことをやる
」ことが本当に重要です。そして、実践から得られた力こそが「組織としての経験知」として蓄積されていきます。
常総市は、全国初のトライアル・サウンディングを実施したことでも有名ですが、その企画や実践は施設所管課の担当者が中心になって進めていたことも大きな特徴だと思います。
実践のために学ぶ
一方で、物事を効率的・効果的に進めるためには、様々な知識や世の中の状況、類似の先行事例などを知っておくことが有効であることは疑いの余地がありません。
実際に自分も常日頃から様々な情報を現地・SNS・インターネット・書籍等から入手するように努めていますし、そこで得た情報の数々が現場での「引き出し」につながっていると感じています。
様々な自治体におけるプロジェクト構築支援や民間事業者の企画提案書作成などに携わっているからこそ、様々な情報に触れたときに「あそこのプロジェクトに応用できるかもしれない!」とインスピレーションにつながっているわけです。
意識「だけ」高い系の人たちの多くは、残念ながら「学ぶ場にいること」がステータスになっていたりしないでしょうか。(誤解がないように補足しておくと、こうした「学ぶ場」を主催する方が悪いわけではありません。そこに「参加すること」がプライドになり、ステータス・成果だと勘違いしてしまう意識「だけ」高い系の参加者の問題です。)
そういう意味で、いろんなところでお会いする都市経営プロフェッショナルスクールのOB・OGの方々は、(強烈な意志が前提になっていることもありますが)実践のために徹底的に学んでいるので、非常に力強いですね。
「学ぶ」ことは本当に重要ですし、学ばない人に進歩は少ないですが、「学ぶこと」が目的化してしまってはいけません。あくまで「実践のために学ぶ」のです。
覚悟・決断・行動
こうした点から考えても、やはり今求められているのは「覚悟・決断・行動」の3つだと思います。
学び方ひとつとってみても、学ぶことが目的化しているうちは覚悟が不足しているのでしょうし、自分がやろうと決断できないから学ぶ「だけ」の場から脱却できないのでしょう。
更に、「まずやってみる」ことを前提としないから、リアリティのないオママゴト的なシミュレーションに高揚感を覚えたりしてしまうのではないでしょうか。
自分のまちをリアルに直視すれば、課題は無限に存在しますし、やらなければいけないこと・できることも無数にあるはずです。まちは常に現在進行形で新陳代謝しているので、瞬間風速的にひとつのことをやるだけでは全く足りません。
世の中の変化にあわせて柔軟に発想・やり方を変えながら試行錯誤していくことが求められます。
まさにこのプロセスこそが「実践のなかから学ぶ」ことであり、「実践のために学ぶ」ことにもなります。
まちみらいとしても、明日からまた新しいまちで新しいプロジェクトの検討がはじまります。
検討にあたっては多数の関係者の方々に集まっていただき、徹底的にディスカッションしながら、市場性もプレーヤーとなる方々と対話しながら缶詰作業でひとつずつ考えていこうと思います。
まちの方々に覚悟・決断・行動を求める以上、こちらも「現場重視・実践至上主義」を掲げていますので、それ以上に覚悟・決断・行動していきます。
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