本気と書いて「ガチ」と読む!
自分たちの「枠」が可能性を奪う
最近、オンラインだけではなく(ハイブリッド型も含めて)リアルな職員研修やセミナーが少しずつ戻ってきました。
本当に多くのご依頼をいただけることは大変嬉しく思いますし、2022年6月3日に終了した本年度のPPP入門講座(日本PFI・PPP協会主催)では、300名近い方々にご参加いただきました。(現在もお申し込みいただければアーカイブ配信を視聴いただけます。)
いくつかのまちを突撃訪問したり、いろんなまちのリアルなご相談を受けているなかで気になってきたことがあります。
「どこか他人事で今までの延長線上のままでも」、「誰かが解決してくれるだろう、答えを教えてくれるだろう」といった思考回路が多くの自治体で残っていないだろうか?自分たちの「枠」が可能性を奪っていないだろうか?ということです。
職員研修のアンケート結果
ここ1〜2年に実施した職員研修のアンケート結果をみてみると、約70〜80%は前向きな意見が占めるものの、(一部の自治体では割合がもう少し大きいかもしれませんが、)他人事ワードを発する人たちがいることです。
ある自治体からの職員研修依頼
先日、ある県から県内自治体の担当職員を対象とした研修のオファーをいただきましたが、(まちみらいのホームページで単価は承知しているが、)県の規定により謝礼は30,000円弱しか払えないとのことでした。
そこで、この担当の方には「財政が厳しいなかでも、正規の費用を工面していただいている自治体も多いので、もし金額が出せないのであれば県内に拘らず近県も含めて、とにかく多くの参加者を集めてほしい。」とお願いをしました。
あわせて、「金額の問題ではなく、こちらは常にガチでやるので、そちらもガチでやってほしい!そして、参加者にはその後『実践』に結びつけてほしい」とお伝えし、方向性が一致したものと思い込んでいました。
(弊社ではこれまでも、これからも年に何本か全くフィーがなくても出向いてセミナーや職員研修をやったり、延べ何日もかかる相談を受けたり、現場までいったりします。それは、そのまちが本気だと思えたり、相当に悩みが深そうだったり、人として捨ててはいけなそうだと感じたり、美味しそうなご飯で釣られたりw)
数日後、担当者から「コロナガー、会場ガー、(県内の市町村を対象としている)会の趣旨ガー」と、行政的にはもっともらしい理由が並べられたメールで「辞退」の連絡をいただきました。
ある自治体からの要望
以前、担当の方から涙なしには読めないガチの超長文のお悩みメールをいただいたことを契機に、あるまちで職員研修を実施しました。
このまちでは、(他にも悩ましい問題が数多くあるのですが)庁舎の改築が主要課題の一つになっていることから、次回の研修では庁舎について話してほしいと要望をいただきました。
既に概論的な職員研修は大々的に実施していることもあり、こちらからは「庁舎にフォーカスを絞った話をした後、直接、担当の方々とディスカッションしたい」と要望しました。
弊社のモットーは「現場重視・実践至上主義」ですし、何よりこれまでの経験上、聞くだけの職員研修の有効期間は3日間しかなく、やはり自分たちのまちにフィードバックして考えること、実践に結びつけることが重要なので、このようなお話をさせていただいたわけです。
しかし、こちらも数日後に「庁内で検討した結果」として、「今回の研修は聞くだけで良い」とのことでした。
確かにやる側も聞く側もそのほうがラクであることは間違いないですが、同時に得られるものも少ないのです。先日のオガールの10周年シンポジウムでも「めんどくさいこと」をする重要性が説かれていましたが、本当にそのとおりです。
「何のために」やるのか?
これらの事例で共通することは「何のために」やるのか?、自分がいるのか?が認識されていないことです。
当たり前ですが、自分たちが自分たちのまちの可能性を信じ、自分たちで覚悟・決断・行動をしていくことが重要です。
以前、脱・意識「だけ」高い系というnoteを書きましたが、『意識「も」低い系』が集まる・はびこっているようでは、まちの衰退が加速するだけです。
プロとして本気で、ガチでやっていくしかないわけです。
ガチにやること
では、「ガチにやる」とは、どのようなことなのでしょうか。
現在、お手伝いさせていただいているいくつかの自治体の事例をベースに考えてみたいと思います。
阿南市
まずは表原市長の2022年3月議会でのやりとりに関するSNSでの意見を(「シェアしていただけたら幸いです」と書かれているので)引用してみます。
昨年度、なかば押しかけに近い形で職員研修に伺ったことがきっかけでご縁をいただきましたが、初対面から経験知に基づいた圧倒的な熱量を感じました。
更に、このときの職員研修の終了後、冗談混じりに担当の方々に対して「職員研修の賞味期限は3日だから、この間に動けるかどうかが勝負ですね!」と雑談していたら、本当に3日以内で「職員研修で刺さるものがあった」若手職員を中心としたワーキンググループが組織されたのです。
更に、そこからすごいスピードで庁舎・科学センター・中林保育所の3施設でのトライアル・サウンディングに漕ぎつけ、専用サイトもオープンしたり、必死にまちなかのプレーヤーへ営業を重ねて、本日時点でいくつかのトライアル事業が実施されています。
更に、本年度の業務でもESCOなど複数の具体的な案件の検討が始まっていますし、こちらが気づかないうちにいろんなことをトライし始めています。
市長、職員が一体となってすごいスピードではじまった阿南市。常総市での取り組みを彷彿とさせる凄みがあります。
久米島町
以前から何度かnoteでも紹介している久米島町。
昨年度からお手伝いさせていただいていますが、このまちの中核とも言えるバーデハウス久米島が休止に追い込まれ、その豊かな自然環境とは裏腹に大きな課題となっていました。
職員が必死になってワーキンググループ方式で「なぜバーデハウスが潰れてしまったのか?」から議論を始め、再生に向けたビジョン・コンテンツをひとつずつ丁寧に議論し、同時に3期にわたるサウンディングで市場性とリンクさせながら進めてきました。そして、2022年4月の公募につなげることができました。この公募資料にはなんと動画までついています!(「公募要領等」の一番下のリンク)
第1回の公募では、質疑回答まで複数グループが積極的に参加していたものの、建設物価の高騰・コロナ・ウクライナ情勢などの対外的な要因もあり、残念ながら不調となってしまいました。
しかし、審査委員会には町長も自ら出席し、今後に向けた方向性や整理すべき項目について現場視察も行いながら徹底的にディスカッションしています。
担当の方々も再度、そして範囲を広げて営業に出向いていきます。
近い将来、より確度の高い形で再公募されることになるでしょう。
更に、バーデハウスだけでなく、いつの間にか包括施設管理業務も淡々と準備が進められ公募していたり、泊フィッシャリーナ等でのトライアル・サウンディングもはじまっています。
「人口が少ないから」「うちのような地方都市には」と言い訳する人・まちが多くありますが、7,500人弱の離島がこれだけのことを短期間に進めている事実、その根幹にあるのは覚悟・決断・行動でしかありません。
徳島市
今年度からお手伝いさせていただいている徳島市。
こちらも実は昨年度、SNS経由で担当の方が真剣に考えている、行動を始めていることを知り、突撃訪問型の職員研修をさせていただいたことがきっかけです。
徳島市の現在の進め方は、いい意味で(所管課がいろんな案件を持ち込み、ディスカッションの中で方向性を見出していく)「まちみらい流」をトレースするのではなく、形は似ていますが自分たちらしい形でスタートしています。
公共施設の再編、包括施設管理業務、動物園、学校プールと4つの専門部会を立ち上げ、それぞれが徹底的にディスカッションする形式をとっています。
包括施設管理業務は、こちらで作成したワークシートを用いて「現在の施設管理の課題、包括で何をしたいのか、やりたいことの順位設定、サウンディングで確認する項目」等を整理しています。10:00〜17:00までほぼ休憩時間もなく(休憩時間にも自主的にディスカッションしながら)真摯な議論を続けています。
時間内で解像度が十分に上がらなかった事項や多少積み残しになった部分は自主的にメンバーが集まり、次の回までには当該事項の整理がなされています。
公共施設の再編についても、ハコとしてどうするか?から入るのではなく、それぞれの課が持つ各種計画・方針等を分析し、どんな公共サービスがどこのエリアに必要とされているのか?を探し始めました。個々の計画は、「その分野」として考えれば立派なのですが、全部の計画を突合すると合成の誤謬の嵐であることがわかったのです。
ひとつずつ、このように関係者が一同に介して自分のまちに真剣に向き合うこと、そこに「縦割り」など存在しません。
(そういえば、前述の「庁舎に関する要望」のまちでは、ある都市公園の利活用について観光関係の団体も含めて協議していた際に、職員から「うちのまちは縦割りなので。。。」という信じられない意見が出され唖然としました。「市民の前で言うセリフじゃない。自分も含めて〇〇市の人と話してるんだ、縦割りとか関係ないし、もしやる気がないなら他の人に譲るか、このエリアを捨てるかした方が良い」と諭しましたが。。。)
徳島市もまだスタートしたばかりですが、本当に高い熱量を持って取り組んでいますし、これからそれぞれのプロジェクトがどんな方向に行くのか、楽しみでしかありません。
藤沢市
老朽化した市民会館の改築を中心として、エリア内にある公共施設の再編を図るプロジェクトがあり、これを支援させていただいています。
こちらについては昨年度、職員研修を皮切りに、何度も副市長をはじめ幹部職、事務局や施設所管課の担当者などと何度も具体的な業務イメージやまちみらいとしてのスタンスについてディスカッションを行いました。
プロジェクトが大規模でまちにとって重要なものであること、関係者が非常に多岐にわたること、既に別ルートでいくつかの検討が始まっていたことなどから、弊社のやり方で対応できるのか、場合によっては時間軸や既に決めたはずのことを変えることができるのか、腹を割って徹底的に議論を繰り返しました。
最終的には、副市長が「今回、まちみらいから提示いただいている方法論や考え方がこれからの時代のやり方だと思うから、大変かもしれないけど真剣に取り組んでみよう!」と決断をいただき、業務がスタートしました。
このときの契約に至る約束は、それぞれの判断はそのまちの決断なので任せるものの(1)こちらからの検討依頼については「ハイ」か「YES」で答えること(2)従来のしきたりや既成概念を判断材料にしないこと、(3)別途、市が本事業に関連して契約するコンサルにも字を書かせないこと、サウンディングをさせないこと(サウンディングは自分たちで営業して自分たちでやること)でした。
少なくとも今日まではこの約束は愚直に守られていますし、検討は毎回、9:00〜17:00と非常に厳しいスケジュールであるものの、関係職員が業務多忙にもかかわらずほぼ全員、フルタイムで参加するとともに真剣なディスカッションを繰り広げいています。
プロなんだからガチで!
なぜ100,000円なのか?
話を戻して、弊社が職員研修を「100,000円(税別)+交通費等相当額」に定めている理由は、主催者の「本気度」を確かめるためです。もちろん、準備を含めた拘束時間などから逆算してもこのような金額にはなるのですが、弊社のモットーは「現場重視・実践至上主義」なので、別に単発の職員研修で利益を出そうとは考えていません。
各自治体に研修等に関する規定があり、そこでは前述のように「原則として」多くても数万円しか支出できないことはわかっています。この「原則」を超えるためには庁内的に説明と理解を求められるから、あえて設定しているのです。本気でやりたいのであれば、そのワンステップぐらいは乗り越えてほしいと考えています。
なぜなら、実践ではそんなレベルを遥かに超越する苦難や非合理的な条件を突破していかなければいけません。その「覚悟・決断・行動」の第一歩として考えてほしいのです。
そして、金額でどうしても突破できなければ、今回のように周辺自治体や民間事業者(市民は不要)を「これまでの枠を超えて」呼んでいただくことや、弊社との業務委託(これも原則としては特命の随意契約)を検討していただくことを条件としているのです。
結果を出してこそ
プロなので、研修で話を聞いているだけでは意味がありません。この世界では研修には積極的なのに実践に結びつけない人たちのことを「通信教育の黒帯」と揶揄することがあります。このあたりはこちらのコラムでも記しています。
すべてのプロジェクトがオーダーメイド型であるため、ストリートで経験知を得てきた人には勝てるわけがありません。
実践のために世界を知ること
一方で、何の予備知識も基礎的な体力もなければ「どう戦うか」だけではなく、「何と戦うのか」すら見えてきません。更にまちの課題を解決していくためには、意識・モチベーションがいくら高くても、たった一人での孤独な戦いはリアルではありません。
こうしたことから、個としてはもちろん、組織としても最低限の共通認識を醸成するために、職員研修やセミナーで知識を得ていくことが必要ですし、有効な手段の一つであると思います。
よく「(自分はわかってるし、やる気もあるけど)市長や幹部職がわかってくれない、議員の理解が得られない」といった声を聞くことがありますが、大半の場合はそういった人たちとの間に情報の非対称性が生じていないでしょうか。
そして、こうした人たちにも職員研修等の場に参加してもらう努力や工夫はしているのでしょうか。
「誘いにくい、業務多忙だから、一般参加者が質問しにくくなる。。。」、これらもよく聞きますが、その瞬間に言い訳して負けていないでしょうか。情報の非対称性を許容していないでしょうか、そしてその原因者はあなたではないでしょうか?
「実践のために世界を知る」のであれば、どのような頻度でやっていくのか、対象が誰になるのか(、そこにどれほどのコストを投入する必要があるのか)は自ずと見えてくるでしょう。
「答え」は教えてもらうものではない
前段のもう一つの大きな問い、「うちのまちでの答えを教えてほしい」についてですが、類似の質問に「最初に何をやればいいか」「どうやったらまちが活性化するのか」といったものもあります。
(あえてダイレクトな言葉で書きますが)アホコンサル、現場をやらない学識、後付けの評論家はそれらしい回答をするかもしれません。でも、自分は決まって「わかりません」と答えます。
その理由はそのまちに住んだこともなければ初めて訪れることがほとんどだから、まちの文化・歴史・風土などの情報も、事前のネット等から得るしかなく適切な判断材料を持っていないないからです。
どんなプレーヤーがいるのか、どんな地域コンテンツがあるのか、そのまちの幹部職や市長はどのようなスタンスでいるのか、議会との関係はどうなのか、既得権益の団体の影響はどの程度あるのか。。。そもそも、職員はどこまでガチでやろうとしているのか、見えないパラメーターが多すぎて答えられません。
そもそも、少なくとも弊社が発表するものはこれまでの自分の経験知をベースに、「こんなやりかたをしてきているまちがある」といった思考回路を広げるヒントにしかならないと考えています。
そして、「こうすればうまくいく」などという都合の良い答えがあるのなら、1,700以上あるまちのどこかで、こうした問題をクリアしているでしょうし、行政的な用語で言えば「横展開」できているはずです。
一方で「これをやったらコケる」という地雷は、こちらも経験知でいくつか見えているわけです。わざわざ爆弾を踏む必要はありません。このあたりも研修でつかんでいただければと思います。
そうした情報を仕入れた上で、後は自分たちで試行錯誤するしかないのです。答えなんかないわけですし、そもそも自分のまちのことなので、自分たちで考えて自分たちで動くべきで、「教えてもらうもの」ではないのです。
「答え」なんかない、やり続けるのみ
ここまで読んでいただければ、このnoteのサムネイルで使用している画像の意味がわかっていただけると思います。
まちは現在進行形であり、常に変わり続けています。ある一瞬だけ切り取れば「栄えている」「衰退している」ように見えるかもしれませんが、諦めない限りどこかに可能性は残っています。逆にいえば、うまくいっているからと努力を諦めてしまえば、いつの日か痛い目に遭う日がやってくるのです。
オガールの岡崎さんの言われる「永遠に未完成」、社訓である「真剣にやれよ仕事じゃねえんだぞ」、この2つの言葉、本当に深いと思います。
そういえば、前述のシンポジウムのときに岡崎さんは「風景は残るからね」とおっしゃられていました。
ある一瞬を切り取ることが大事ではないので、「答え」なんかないと思いますし、その時々で真剣にまちと向き合いながら「覚悟・決断・行動」を繰り返していく。やり続けることしかないんだと思います。
そのときの基盤として、ある程度の知識が必要かもしれません。だからこそ「学ぶ」ことも大事ですし、それは「正しく」学ぶことが重要です。
今般のコロナ禍でオンラインセミナーが急増し、気軽に「なんとなく学んだ気になる」ことができるようになりました。国の資料や古い概念をなぞっただけのオンラインセミナーも残念ながら数多く存在しています。
弊社では、特定非営利活動法人日本PFI・PPP協会のご協力をいただいて毎年実施している前述のPPP入門講座を中心に、今後、日本管財株式会社と連携して「正しく学ぶ」シリーズも展開してく予定です。
とにかく、手を動かしていきましょう。その経験知をどれだけ持っているかで、それぞれのセミナーで受ける印象や学ぶものが変わってくると思います。
「合同会社まちみらい」は「本気と書いてガチと読む」ことができる方々と、これからも真剣に取り組んでいきたいと考えていますので、お気軽にお問い合わせをいただければと思います。
プロなんだからガチでやろう!こちらもガチでやります!
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