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恐怖の劣化コピー_道の駅の事業手法編


劣化コピーとは

PPP/PFI「手法」を用いたプロジェクトが全国各地で展開されるようになってきている。

「まちとしての総力戦」が求められる時代に、行政・民間とか言っている場合ではないし、PPP/PFIの定義や事業手法比較表、VFMなどを呑気に机上で議論している余裕はどこにもない。こうしたなかで、全国各地でクリエイティブなプロジェクトが展開されてきていることは本当に素晴らしいことである。

現在では指定管理者制度、PFI法に基づくPFI、包括施設管理業務、ESCO、普通財産の貸付、コンセッション、Park-PFIなどの一般化してきた「手法」の範疇では整理しきれないNext PPP/PFIも少しずつ芽吹いている。

上記noteで随意契約保証型の民間提案制度を事例として紹介したように、物事が爆発的に広まるときには必然的に亜流や質の低いものも広まってしまうことは自然の摂理である。しかし、それは分かったうえでも残念かつ少し早いうちに整理したほうが良さそうな事例がいくつかあるので整理してみたい。
(本noteで紹介する事例は、それぞれのまちの事情があって判断してきたものだろうし、それぞれのまちの「生き方」なので否定するわけでもdisるわけでもないが、「A市」等としてしまうと一気にリアリティがなくなり資料等もトレースできなくなるので、敢えて実名で紹介する。皮肉ではなく本気で今後、それぞれのプロジェクトがまちとして良い方向に向かうことを願っている。)

表面的に優良事例をベースにする「劣化コピー」

この世界でよく皮肉的に言われるのが「劣化コピー」である。
隣町でPFI法に基づくPFIで図書館を中心とした巨大な施設を社会資本整備総合交付金等も活用して整備したから、「そのコンサルに委託」して「その要求水準書を準用」して「その事業手法をトレース」して「似たようなハコモノ」を整備するのが劣化コピーである。
国(やコンサル)が示す優良事例集やセミナー等の資料で紹介された事例を通信販売のカタログのように用いて担当者や首長・議員が「これをうちのまちにも」と、「表面的に・誰かが言っている事例を・直接みたり感じたりすることもなく」盲信して形だけ真似していくのも劣化コピーの一種である。
今読んでいる小説のプラチナタウンにもこのことは(小説とは思えないぐらいのあるあるネタとして)記されている。

劣化コピー=オリジナルのなんちゃってボディ-魂

PPP/PFIに限った話ではなく、世の中のすべてのプロジェクトはそれぞれのまちの文化・歴史・風土や課題・やりたいことなどをベースとして、関連する様々な主体が出せるリソースと地域コンテンツ・プレーヤーなどを足し算・掛け算しながら、様々な与条件とすり合わせ、ときには何かを涙を流して削ぎ落として創出するオーダーメイド型であるはずだ。
自分がこれまで関わってきた案件や世の中の優れたプロジェクトはいずれも事業手法比較表・VFMなど用いていないし、事業手法も意外とシンプルなもの(の組み合わせ)で構成されている。
同時にそれぞれのプロジェクトを組成していくプロセスでは、多くの関係者が必死にプロとして関わり覚悟・決断・行動しながら魂を込めていく。だからこそオリジナルには「その人たちでしか出せない」オリジナリティが宿り、そこにしかない場・空気・迫力が備えられ、当たり前だがそこまでの幾つもの多難なプロセスを乗り越えてきた足元の強いプロジェクトになっていく。オリジナリティとは魂そのものである。

一方で劣化コピーは、こうしたプロセスを省いて表層的な部分「だけ」をネット上に転がっている要求水準書等をコピペして安易に真似するから、魂が宿ることはない。オリジナルの要求水準書は、その単語の一つずつはもちろん、行間のニュアンスにも魂が宿っているのだが、表面的に1秒でコピペしただけの劣化コピーの要求水準書は単なる「文字情報」でしかない。文字情報でしかないので、そこに応募する民間事業者も「文字情報をベースに勝つ(仕様発注のパズルを解いていく)提案」をするに過ぎない。
そして、こうした劣化コピーの恐ろしさは簡単に無限増殖してしまうことである。

劣化コピーとは、オリジナルを表面的だけ模倣した経済合理性の欠如した「なんちゃってボディ」で「魂が宿っていない」ものなのだから、どこにも魅力が存在しない「モテない君」にしかなり得ない。人を惹きつける要素がないから墓標に成り下がり、まちの中に負債として長期間にわたって鎮座してしまう。

「何のために」がない

劣化コピーは「なんちゃってボディ」も問題だが、そもそも「魂が宿っていない」ことが最大の問題である。

そのプロジェクトを「何のために」やるのかを全く議論せず、「どんなハコモノ」を「どんな手法」で「いくらの予算」で「どの事業者(設計事務所・ゼネコン)に発注」するかしか考えないから、魂が宿らない。
自分もコンサル業をやっていて、この数年の実績と過去の15年間の公務員経験も踏まえると、行政では「何のためにやるのか≒ビジョン」を庁内で徹底的に議論して共通認識化していくプロセスをそもそも経験する機会がほとんどない。
また、基本構想・基本計画の策定業務や可能性調査・アドバイザリー業務で高額なフィーを得ているはずのコンサルもビジョン作成(≒魂を宿す)という最重要のプロセスをわかっていないのか、わざとなのかは不明だがパススルーしてしまう。
前者の「わかっていない」場合は無知すぎてプロとして失格、後者の「わざとやらない」場合は目の前のフィーだけに目が眩み、自治体と税金を食い物にする生産性ゼロどころかマイナスのハイエナでしかない。

なぜ覚悟・決断・行動をしようとしない表面的な行政やコンサルがこの「魂を宿す」作業をパススルーするのか、理由は簡単である。「自分たちが何をしたいのか・何のためにやるのか」≒ビジョンの策定及び共通認識を醸成する作業には膨大な時間がかかるし、関係者の共通認識(≒少なくともハンコ)をとっていくプロセスは相当にストレスフルで先が見通せないからである。

本来この部分をきちんと高度な専門性と知見をフル活用して効率的にサポートするのがコンサルの役割であるが、これを丁寧にやっていてはビジネスとして採算性が悪すぎる。(この部分を採算度外視でやっているのがまちみらいであり、だから全く儲からないw)

「何のために」が「ハコモノ整備のために」なっているから、竣工即負債になってしまう。

自分たちで考えない

ここまで読んでいただければわかると思うが、こうした劣化コピーの共通項は
「自分たちのまちに向き合わない中途半端な行政」が「自分たちはやったことがないから・忙しいから」等の言い訳をして「安易にコンサルへ業務委託」してしまっていることである。

自分の人生は「一般競争入札で決めた誰かわからないコンサル」に「何千万円もの委託費」を払って「リアリティのない人生設計」をしてもらわないのに、なぜまちのことになるとこれをやってしまうのか。
コンサル、学識経験者(、評論家)はそのプロジェクト、まちに対する経営・結果責任を取ることはない。そのまちの首長・補助機関としての職員・議会がしっかりと自分たちでどのような道を歩むのか決めていく、その当たり前のことが求められている。その当たり前なことは「自分たちで考える」ことであり、その瞬間に劣化コピーなどという概念が入る余地は1ミリもなくなっているはずだ。

せっかくのリアルな進化も

EOI方式

前置きが長くなってしまったが近年、道の駅の整備やリニューアルの相談を受けることが多い。そして、業界新聞でも毎日のように全国各地の道の駅に関する可能性調査・アドバイザリー業務・整備事業などが掲載されている。
特に最近目立つのがEOI( =Early Operator Involvement)方式を用いたものである。道の駅は観光施設・商業施設なので、イニシャルコストまで含めた独立採算が本来は基本となるはずだ。だからこそ、経営能力の高い運営事業者(Operator)を基本設計(できれば基本構想)の前段階で選定し、その場所や関係者の状況などを見極めて「売上から逆算して施設整備」を行い足元の強い・経済合理性の高い道の駅としていく必要がある。
EOI方式は、道の駅のような観光施設・商業施設が官製ビジネスに陥り「こんなはずではなかった」を予防するために有効な選択肢となっている。

ちなみにEOI方式の最初の事例は、少し規模が大きくPFI法に基づくPFIの事例であるが、箕面市の船場駅前地区まちづくり拠点整備事業であろう。巨大なホールを整備するにあたり誰も使わない事態が発生せず「少なくとも運営は独立採算」を目指すため、運営事業者を先行公募(キョードーファクトリーを選定)し、民間事業者は本プロジェクトに応募するためには「キョードーファクトリーをSPCの構成員とすること」を条件に公募している。
多少変形版ではあるが、まさにEOI方式である。

EOI方式についてもう一つ付け加えておけば、施設を建設するまでは長くとも数年であるが、そこから運営期間は通常、数十年に及ぶ。だからこそ竣工と同時に手離れする設計事務所・ゼネコンではなく、パートナーとして行政と一緒に走る運営事業者を重視するのは当たり前のことである。この発展系が南城市・久米島町で行われている事業パートナー方式とも言える。

常総市・石川町の道の駅EOI

実際に自分が関わった常総市・石川町では当たり前だが、上記のような考え方のもと、それぞれコンサル等が関わっていた既存の方針を見直し、EOI方式に舵を切ることとなった。

常総市_道の駅常総

両者とも結果的に民間ベースでの道の駅類似施設の実績も豊富な(株)TTCを運営事業者として先行決定し、常総市では想定の2倍以上のペースの入場者数を記録しており、売上も相当に伸びているとの話である。

常総市については道の駅も含むアグリサイエンスバレー全体のプロジェクトも順調に推移しているが、道の駅が今回のように資産として機能するのか、あるいは官製ビジネスで負債となってしまうのかでは、アグリサイエンスバレーそのものにも大きな影響を与えうる。だからこそ、EOI方式を「正当に」活用した常総市の選択は先見の明があったわけである。

このことは、道の駅を含むアグリサイエンスバレー全体で、事業開始前は31haで500千円/年しか固定資産税が入らなかったのに、現在では500百万円/年以上が歳入に計上される実態を見ても明らかである。

劣化コピーEOI

一方で近年、多くの自治体で「劣化コピーEOI」の道の駅が計画されている。(繰り返しになるが、それぞれの事例は「そのまちの生き方」であり、プロとして判断したものだろうから否定するものでもdisるものでもないが、常総市・石川町の道の駅との違いを明らかにし、論点を整理するために実例で挙げている。)

観音寺市は、「新『道の駅』かんおんじ(仮称)」の基本計画案の中で、整備手法を「従来方式」が最も効果的とした。EOI(運営事業者先行決定)を採用し、設計段階から運営者の意見を反映することで、建設コストのコントロールが可能とした。概算事業費は7,519百万円を見込み、このうち基本・実施設計に235百万円、建築工事に2,598百万円を充てる。25-26年度に基本設計、26-27年度に実施設計を進める。27年度に着工し、28年度の開業を目指す。
コンセプトは、「暮らす」「招く」「育てる」の真ん中で、新たな交流や体験を生み出す「道の駅」。屋外には多目的屋外広場(3,000㎡)や大屋根広場(1,600㎡)、水景施設を検討。屋内は地場産センター・地産地消マルシェやフードコート、キッズスペースを想定している。建設候補地は国道11号沿いの地域歴史博物館「ちょうさ会館」付近。PPP/PFIの導入可能性調査を含む基本計画策定支援業務はパシフィックコンサルタンツが担当した。

建設通信新聞_従来手法で整備/概算事業費75億見込む/『道の駅』かんおんじ

https://www.city.naka.lg.jp/data/doc/1699247847_doc_318_0.pdf

道の駅建設準備委員会の構成員は市民代表、関係団体、有識者等で構成を考えております。今までもまちづくりの方針から始まりまして基本構想、基本計画を策定してきた委員を中心に考えております。第三セクター設立準備委員会は、8企業で検討してまいります。第三セクター設立準備委員会でいろいろなアイデア出しをしていきたいと考えております。ただし、その第三セクター設立準備委員会の中でやはり突っ走ってしまうこともあるのかなと思います。そういったことも踏まえまして、そのアイデアとか市にとってそれは有意義なものなのかを、今度はさらに外部で組織されます道の駅建設準備委員会の中でもんでいきながら、よりよいものを基本設計に反映できるような体制づくりをしたいと考えております。
第三セクターの管理運営主体の概要とメリット、デメリットは、基本計画にまとめて、最終的に3月の全員協議会で第三セクターで運営を検討してまいります。
また、経営の採算性もございます。10月以降、そういった委託業者にも入っていただきまして、第三セクターが出していきますアイデアにつきまして、基本計画だけで採算性の検討を終わりにするわけではなくて、今後いろいろな機能を取り入れてやっていきますので、その中で採算性、収支計算はその都度検討してまいりますので、ご理解いただければと思います。
第三セクターを選定した経緯について、3月にPFIも十分検討しました。PFIを実施している企業等もヒアリングやったんですけれども運営する、販売する会社からするとメリットがないと、やるんであればレストランにしても物販にしても全て自由にやらしてくれという提案でした。そうすると那珂市独自の商品開発とかが制限を受けることになって、市の振興策としてはやはり採用できないなと。PFIをやられている市において聞いたのは、売っているものが地元産品がないということで、地元の議員から地元にとってどれだけメリットがあるのかがこれから課題だねと言っておられてました。やはりPFIだと採算性重視になり過ぎて、なかなか民間企業だと地元のためにというのが非常に薄れてしまうのかなと思っています。資料に近隣の道の駅ありますけれども、いずれも第三セクターです。第三セクターのメリットは、市独自の考え方が反映できると、我々とすると地域振興あるいは防災、交流、そういった点を重視しながらやっていく意味では第三セクターなんだろうと思っています。
最近、船井総研に簡易診断をしてもらいました。船井総研は道の駅に関しては多分コンサルの中で一番今詳しい会社かと思います。簡易診断していただいたところでは、極めて立地的にはいい場所だと、これで成功しないのは逆に中身が問題だと言われました。立地環境的、商圏環境的には非常にいいと思っています。我々はこの環境を生かして、よりいいものをつくり上げていきたいと思っているわけですけれども、判断するに当たってどういったものがあるのか、中身が決まらないと判断できないとずっと議会のほうからご意見をいただきました。その中身を詰めるためには、やはり誰が経営者になってどういったものをつくり上げていくかを責任持ってつくり上げないと皆さんのほうにお示しもできないということです。そのために、運営となる第三セクターの中できちんとどういったお店づくりをするんですよ、どういう企業を入れていくんですよ、そういったものを具体的に詰めていく、その作業がこの半年間だろうと思っています。その中で具体のものを示して、それを見て議員の皆様方に判断いただくことになろうかと思っています。それで駄目にならないように、議員の皆様が納得いただけるような具体的なものをこの第三セクターが中心になって提案していくことが今後の大きな仕事になっていくと思っています。

那珂市議会_2023.8.29全員協議会議事録から抜粋

https://www.city.naka.lg.jp/data/doc/1716878936_doc_738_0.pdf

(三セクの)構成委員ですけれども、市が入っております。商工会、市内金融機関、木内酒造が入っております。出資割合につきましては、今設立準備委員会ですので、出資構成であったり議決権は今後の検討となっております。
出荷者組合設立準備委員会はJAに入っていただいております。その中で、市内の農家団体でありますアグリビジネスネットワークフェルミエ那珂に入っていただいております。アグリス、農業後継者クラブ、那珂市農業担い手確保・育成協議会MIRAI、あとは農業経営士などが委員の構成となっております。

那珂市議会_2024.3.12全員協議会議事録から抜粋
那珂市_道の駅市民説明会資料
那珂市_道の駅市民説明会資料
那珂市_道の駅市民説明会資料
村山市_新「道の駅むらやま」(仮称)整備基本計画案(概要版)

観音寺市では「四国のゲートウェイ」として「四国最大の道の駅」にすることや総事業費が7,500百万円以上になることが基本計画で位置づけられており、こうした前提条件を行政が一方的に課したうえで運営事業者を公募するEOI方式を(形式上)採用しても、得られる「経済合理性」のメリットは限られたものになるだろう。別の見方をすれば運営事業者は「行政が用意してくれる巨大なハコモノ」をベースに「与えられた条件下で可能な範囲のビジネス」をすれば良いことになる。そうした意味では運営事業者にとってもハードルは低いとも考えられる。経済合理性という強烈な緊張関係が働きにくい、悪い意味でのWin-Winが成立してしまうリスクが内包されている。

また、那珂市においては上記の全員協議会の議事録以外にも2024年3月12日の全員協議会においても激論が繰り広げられている。
この議事録や関連資料を総合すると那珂市では(出資比率はまだ決まっていないようだが、)市を中心として地元事業者による三セクをEOIにおける運営事業者として考えているようである。並行して設計は有名建築家に発注を考えているようだ。
「三セク≒悪」ではないし、使い方によっては三セクは非常に可能性・自由度の高い方法論であることは間違いない。収支計画・決算などもフルコストベースで見ることができる点、更に行政が出資する場合は(出資比率によってある程度の)マネジメントも可能な優れた方法論である。ただし、「誰が」三セクを担うのかが大きな分岐点であり重要なポイントとなる。
こちらの事例も整備費が約3,000百万円に及ぶでだけではなく、議事録や会議資料を読む限りは「イニシャルまで含めた独立採算を志向」するものではなさそうだ。

EOI方式のポイントは「事業のできるだけ早い段階で行政とともにリスクとリターンを享受する事業パートナーとしての運営事業者を選定」して、「経済合理性≒持続可能性が高い」プロジェクトとしていくことである。
だからこそ、行政・民間(運営事業者)が本当の意味での対等・信頼の関係を構築して、プロジェクトの企画から設計・建設、運営段階まで様々な難題をともに試行錯誤しながら超えていくことができる。そこに「魂」が宿るのである。

自分たちの生き方

決して否定しないが・・・

何度も繰り返しになるが、例示した事例だけでなく「劣化コピーの表面的なEOI方式を選択」しようとしている自治体があっても、もそのまちの生き方であるし、いろんなことを考慮した結果だろうから否定するものではない。
しかし、万が一にもその自治体・担当者・首長等の経験知が不足して「コンサルに喰われているだけ」「表面的な優良事例・最新の手法に踊らされているだけ」だとすれば、何が大事なのか、自分たちがそのプロジェクトで何を成そうとしているのか改めて考えてみても良いのではないだろうか。

また、今回改めて多くの事例を調査してみてわかったことだが、EOI方式は使い方によっては経済合理性や競争性・公平性を考慮せず、「既得権益の団体や外郭団体を(恣意的に)運営事業者として選定することを合理化してしまう」手段としても利用されうる潜在的なリスクを内包している。こうした面でも「誰とやるのか」、なぜその人たちなのかはきちんと整理するとともに、堂々と自信を持って話せるようにしておくことを忘れてはならない。

手法は手段に過ぎない

EOI方式は事業パートナー方式と同様、従来型(・古典的)のPPP/PFI手法のプロセスで「誰が事業するかわからない」なかで「誰か」を探すために、コンサルに業務委託して行っていた可能性調査・アドバイザリー業務を「実際にそのプロジェクトの経営をする事業者」が直接行うことで、リアルで経済合理性を重視した収支計画やプロジェクトの全体像を作ることができることが大きなメリットである。

従来のプロセスにおいてコンサルが行う事業手法の比較は、実際に設計も施工もしない・運営業者も架空の状態で行政が行うと仮定した場合(PSC)に対して、同じく実際に「誰が・どのような設計・工事・運営(や資金調達)をするかもわからない」想定のPFIやリースなどの事業手法を用いた場合に、「机上で何%安くなるのか(≒VFM)の数字」を弾くのに過ぎない。仮定や架空の前提があまりにも多く、そこにリアリティは存在し得ない。つまり、こうしたなかで本来は最終的に自ずと収斂されるはずの事業手法を定めることなどできないはずだ。

この面から見ても「実際にそのプロジェクトを行政とともに行う民間事業者(運営事業者)を先行決定」して「リアルな(資金調達・)事業手法・設計・工事・運営」を考えていくことの重要性が見えてくるだろう。
つまり、リアルなプロジェクトを構築していきたいのなら、自ずとEOI方式・事業パートナー方式・随意契約保証型の民間提案制度・エージェント方式あたりがリアルな選択肢となってくるはずだ。
そして、どのような手法を用いようが、それはプロジェクトを実現していくための手段でしかない。EOI方式がカッコいいから、なんとなく流行りになりそうだから、先進的っぽいから、ホントは行政主導の旧来型ハコモノ事業なのに「運営を重視してます感」を出すことができる(、既得権益の団体をシレッと運営事業者として選定できる)から等はEOI方式を選択する「正当な理由」(≒立法事実)にはなり得ない。

自分たちで決めよう

今回紹介した表面的EOI方式(≒劣化コピーEOI)はいずれもコンサルに業務委託しているのが共通項になっている。
前述のように、まちの未来を左右する大切なプロジェクト、その根幹をなす部分をコンサルに委託してしまう時点で「魂」が入ることはない。「(悪い場合には一般競争入札で安かろう・悪かろうで機械的に選んだ)誰か≒コンサル」が「どこかで携わったorネット等のどこかで拾ってきた事例と僅かな経験値(≠経験知)」で「業務委託≒仕事」として対応する。
なんとなくそれっぽい・今っぽい・合意が得やすそう・表面的に取り繕いやすそうだからEOIを「手法」として選択する。

そうではなく、やはり自分たちのまちなんだから自分たちで決めていく。収支計画等を自分たちで弾くことはできなくとも「何をしたいのか」は自分たちで考えられるはずだ。出せる予算・マンパワー・緩和措置等のリソースも行政のプロとして算定できる。そのうえで、やりたいことを3次元の世界で経済合理性を含めて整理していく。そのときには「誰とやるのか」が重要になる・勝負を決める要素となるので、早い段階から自分たちのパートナーを「この人だ」と覚悟して、決断・行動していく。

繰り返しになるが、EOIはそのための方法論の一つに過ぎない。

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