香川県の建築の魅力について
●アート県クロニクル第2回
開催日/2018年6月30日(土)16時~17時30分
ゲスト/陣内秀信さん(法政大学名誉教授、都市建築史家)
主催/法政大学香川県校友会
協力/まちラボ
丹下健三の「香川県庁舎東館」をはじめ、山本忠司の「瀬戸内歴史民俗資料館」、谷口吉生の「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」、安藤忠雄の「地中美術館」など、日本を代表するモダニズム建築が多数集まる香川県。そうした優れた建築が都市やそこに暮らす人にどのような影響を及ぼすのか、イタリアや東京をはじめ、建築や都市の成り立ちを通じて「空間人類学」を提唱する陣内さんに、専門家から見た香川の特徴を紐解いていただきました。
●開催レポート
法政大学香川県校友会主催、まちラボ共催というかたちで恩師陣内秀信の講演会が行われました。
地中海と瀬戸内海の類似性からはじまり、戦後の代表的な近代建築が瀬戸内に集中していることを示唆。丹下健三の「広島平和会館」から「香川県庁舎」に至る道程の後、今回の大きな目的である、建築家大江宏について。
丹下と同級生の大江は、「日光東照宮」の改修を行った、日本の伝統的な系譜の建築家大江新太郎を父に持ち、近代建築の洗礼を受けながら、身体的に体得している「日本的なるもの」との関係を、最も根源まで探求した建築家である。大江は、法政大学建築学科で教鞭をとり、キャンパスの整備を行う。一方、香川では、「香川県立丸亀高校」をはじめとする高校建築の原型をつくり、「香川県文化会館」「香川県丸亀武道館」「東京讃岐会館」と、金子正則知事の求める「日本的なるもの」、そして「人の心を豊かにするために」を次々とかたちにし、深く香川県民と関わっているのである。
我が師山本忠司は、香川県の技官として「香川県庁舎」をはじめとする名建築誕生にバイプレーヤーとして深く関わり、建築家として「瀬戸内海歴史民俗資料館」で日本建築学会賞を受賞。一方で、四国の民家調査をライフワークとし、今ではよく目にする古民家のリノベーションの先駆者である。「イサム家」をはじめとするイサム・ノグチの制作と生活の場をつくり、それが直島での「角屋」へと結実する。ちなみに、この本村地区の基礎調査を行ったのが陣内秀信である。
最後に、これから益々瀬戸内の魅力は認められ、その可能性は地中海にも勝るとのことでした。(林幸稔)