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「もしも社畜ゾンビが『アウトプット大全』を読んだら」を実行したら、そのまま「春の養生」になる。

樺沢紫苑
「もし社畜ゾンビが『アウトプット大全』を読んだら」が
この3月の出版されました。
漫画なので、30分で読めました。
通勤時間で読み切れる人も多いのではないでしょうか。


読んでみて、私は
「この本はなんて春にぴったりなんだろう」
と思いました。

なぜなら
「アウトプット」は春の養生だからです。

どういうことかは

中国最古の医学著書である
黄帝内経(こうていないけい)に書かれています。

養生とは
健康でいられるように努めて生活することです。

「もし社畜ゾンビが『アウトプット大全』を読んだら」は
黄帝内経、「四季調神大論」の「春の養生法」がピタリと当てはまっています。

原文はこうです

春三月、これを「発陳」という
天地倶に生じ、万物以って栄ゆ
夜に臥し早く起き、広く庭を歩み
髪を披き形を緩うし、以って志して生ぜしむ
生かして殺すなかれ
与えて奪うなかれ
賞して罰するなかれ
此れ春気の応、養生の道なり
これに逆らえば則ち肝を傷り
夏に病変をなし、長に奉ずるものなし


少し説明します。

「春三月、これを『発陳』という」

春の3ヶ月は「発陳(はっちん)」といいます。
「陳」とは古いものという意味で、
古いものを排泄し、新しいものが内側から押し出されてくる、そんなエネルギー(陽気)が生じる季節ですよ、と書いてあります。

「天地ともに生じ、万物以って栄ゆ」ですから、
この春のエネルギーは万物、すべてのものに発生しますよ、

春の暖かさは、冬の寒さで凍った大地を温め、草木を芽吹かせ、動物たちを冬の眠りから目覚めさせます。
人の心も体も、おのずと伸び伸びと活動したくなりますよ、という意味です。

「アウトプット」のエネルギーが自然に発生する季節ということです。

本書の主人公「健」は
入社5年。新事業のプロジェクトを抱えています。
自らこの新事業に「挑戦」したようですから、元々「やる気」はあるはずです。
その「健」
冒頭では
PCのデータを消してしまう、事務所に鍵を置き忘れて閉じ込められる、信じられないミスを重ね、クタクタでよろよろ、周囲が引くほど、酷い顔色。
まさにゾンビのような姿で登場します。

こんな状態の「健」にも、春のエネルギーがあるでしょうか。

ある日、トイレで清掃員と思われる女性に声をかけられます。
「昨日はどんな日でしたか?」
健は「最悪でした」と答えます。
一言返事をしただけですが、これもアウトプット
健の最初の小さなアウトプットです。
それから、毎日のように、「昨日は?」と声をかけられているうちに、
ポツリと本音を話し、仕事への思いを語ります。
それを聞いた女性は
次に「ノートに書いてみて」と言います。
「書くことなんてない」そう思いながらも、ノートに向かう健。
「なんでもいいから」書いているうちに、考えが整理されたり、アイディアが浮かぶようになっていきます。少しずつアウトプットのエネルギーが大きくなっています。

ある日の朝、同じ会社の営業部の女性、大川さんに挨拶され、ちょっとだけ一緒に公園に行って話をします。
大川さんは、自分は今の生活がな「あったかい」のが幸せだと話します。
この部分、
私は春の養生のここに当てはまるなって感じました。
「夜に臥し早く起き、広く庭を歩み
髪を披き形を緩うし、以って志して生ぜしむ」

夜はちゃんと寝て、朝起きて大股で歩きましょう
これ、「睡眠」と「朝散歩」のことですね、

「髪を披き形を緩うし、以って志して生ぜしむ」

この季節は服装も髪もゆったりと緩めるといいですよ、伸び伸び過ごしましょうね
これは
大川さんが生活で実践していることです。


ここのシーンで「健」は目的もなく彷徨っている社畜ゾンビから、なんのためにしたい仕事なのかが明確になり、ゾンビからは抜け出たようです。

さて
ここからは、健の「アウトプット」が加速します。

春のエネルギーとは
まさにこんな感じだと思います。
最初はほんの少し、きっかけが与えられればどんどん湧き出てくる。
植物が種から芽吹く様子を思い浮かべてください。土からようやくで出来たばかりの芽。細くて弱々しくて、簡単に倒れてしまいます。つみ取るのも簡単。
それが成長していくにつれ、根や茎が伸び、強くたくましく育ちます。

だから、その気持ちを大切にしなさい、というのが

春養生の次の部分

「生かして殺すなかれ
与えて奪うなかれ
賞して罰するなかれ」

これは心に芽生えた意欲を育てなさい、摘み取ってはいけません
伸び伸び育つための栄養を与え、奪ってはいけません
褒めるべきで罰してはいけません
ということです。

「此れ春気の応、養生の道なり」

これが「春の気」の力を生かすこと、養生です。
まさに
「THE POWER OF OUTPUT」
ということです。

そして
養生しないとどうなるか、ということが次に書かれています。

「これに逆らえば則ち肝を傷り
夏に病変をなし、長に奉ずるものなし」

これに逆らえば「肝」を傷めますよ、夏に病気になっちゃいますよ、と言っています。
中医学で春の臓器は「肝」
「肝」は肝臓機能ことだけではなく
精神を安定させる働きのことも言います。
「肝を傷り」は主に精神面の不調を言っているのだと思います。

では「逆らう」
とは、どんなことでしょう。
伸び伸びするのを邪魔することですから、
「自分へのダメ出し」「言いたいことを我慢する」「他人がやろうとしていることをやめさせる」などです。

健のプロジェクトに反対する上司がそれを語っています。
「自分へのダメ出し」「言いたいことを我慢する」「他人がやろうとしていることをやめさせる」を繰り返したため(部下を思うあまり、というあたりが実はさらに「肝」を傷めます)、上司はゾンビになっていたのです。

中医学の「春の養生」と「肝」の機能
これらを
照らし合わせて読むと、本当に面白かったです。

みなさん、春は気持ちを抑え込まず、ゆったり、のびのびと過ごしましょうね。

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