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イラストコンテストに落ちた娘を励ましながら「審査基準」について一緒に考えた

夕飯を作っていると、いっちゃん(高校生)がキッチンにやってきた。今の今までリビングでにこちゃん(小学生)とおしゃべりしてそうな感じだったけど。なぜかぷりぷり怒ったような表情で、いつになく不機嫌ボイス。

1「ママ、にこの話、聞いた~?」
私「にこちゃんの? うーん、学校から帰ってきた時おかえりーって言ったくらいで、何も聞いてないけど?」
1「イラコンのこと。落ちたんだって」
私「イラ、コン……イラストコンテスト? そういえば前に応募するって言ってたね」
1「それ!」
私「一応つっこむけど、いっちゃんから結果を聞いちゃっていいの、わたし」
1「いいんじゃない? ママ知ってるってにこ言ってたよ」
私「マジ!? ごごごごめん(わたしは非常に忘れっぽい)」
1「いいよいつものことじゃん」

子ども達とのことをnoteに書くたび注意書きをしておりますが、わたしのnoteは子ども達も見ています。むしろファクトチェックも兼ねて読んでもらってる。わたし=私、いっちゃん=1、にこちゃん=2、でお届けしております。(いっちゃんに「うちらのこと数字で書くなw笑って文章が頭に入ってこないw」と毎回言われる……ちなみにこの記事には登場しないけど、れいくん=0です)

私「それでいっちゃんは怒ってるの?優しいな」
1「そう!怒るっていうか、はぁ?って感じやけど!!!」
私「えー。総評で嫌なことでも書いてあったとか?」
1「それはないかな。ただ単に、賞取ってる人より、にこのイラストの方がどう考えても上手いじゃん。意味分からん。そういうのムカつくやん」
私「あーーーーーー察し」
1「ママも見てよ!」

ここでコンロの火を消してリビングへ。ソファに座ってスマホ触ってたにこちゃんに、イラストコンテストの結果発表ページを見せてもらうことに。にこちゃんは思ったより落ち着いた表情だけれど、あまり感情を顔に出さない子なのでかえって心配になる。

私「残念だったね」
2「めっちゃ時間かけて頑張ったのに」
私「モチーフとかも図鑑や本で調べたりしてたの見てたよ」
2「どの賞も取れんかった」
1「にこ取れるって!」
私「ちょっとよく見せてー」

イラストコンテストの主催元と、概要、そして受賞作をばばばーっと確認する。うん。なるほど理解。娘が応募したコンテスト名を明かさずに、イメージでお伝えすると……ワンピース単行本の「ウソップギャラリー海賊団」が、ジャンプ主催で実施されたよっていうお祭り企画って感じ?かなと。(伝われ)

なるほどなぁ、と思うのです。こういうのって狙って取れるものじゃないから逆に難しいよね。

「コンテスト」に関するわたしのスタンスは、こちらの記事に書いたことがあります。↓記事中で取り上げているのは文章系のコンテストだけれど、基本的には通じるものがあると思う。

①上手だから入賞するわけではない

私「結論から言うと、こういうコンテストって上手に描けている作品を上から順に並べているわけじゃないと思うの」
1「意味が分からない。だってコンテストでしょ?」
2「うちが下手だったからじゃないってこと?」
私「うん。ママ個人の考えだけどね! 受賞作は即デビュー、みたいなルートが示されているわけでもないし、となるとこれ、ファンアートに近いんじゃないかな」
1「人気あるかないか?」
私「あ、近いかもね。二次創作とかだと、人気のあるなしと作品(漫画や小説)の完成度が一致しないこととかけっこうあるもんね」
2「上手じゃなくてもいいってこと?」
1「それもなんか違う気がするんだが」
私「そうそう。心惹かれるものがあるって上手さだけじゃ測れないってことかもね。にこちゃんが参加したコンテストでも、上手だけど落選した人ってたくさんいると思うよ」

コンテストの趣旨によって審査基準は異なる。同じコンテストでも審査員によって評価は割れる。

②「なんかいいな」「らしくて良い」という基準

2「じゃあ何のためのコンテストなの?」
私「うーーん、プロモーション的な…?」
2「プロモーション?」
私「ファン参加型で盛り上げていこう、みたいな」
1「なんそれーーー! コンテストって言わんでほしい」
私「コンテストにもいろいろあるからなぁ。ただ、このコンテストだとそうなのかなって思ったってことね」
2「上手くなくても賞取ってる人はなんで?」
私「今回のイラストコンテストに限って言えば、過去の受賞作品を眺めたら敷居の低さっていうのかな、気軽に参加できる楽しさみたいなのを感じたよ」
1「ママは、受賞作を見ていいなって思う?」
私「一生懸命なのとか、好きな気持ちを込めてるのとか、伝わってきて、いいねーーって思うよ」
1「にこも一生懸命だし好きな気持ち負けてないよ!」(にこ過激派の姉)
私「ああ……言い方が悪かったね、ごめん。たしかにそこに優劣はつけられないんだけど、ママの場合は作文で説明するといいのかな。小学生の文集に載せる作品を選ぶのに、大人基準の文章の上手さを求めたりはしないのよ。視点だったり、表現だったり、構成だったり、なにかキラリと光るものを持っている作品を取り上げたくなるっていうのかな」
2「キラリと光るものがなかったのか」
私「あると思うよ。わたしはにこちゃんのイラストのファンだし」
1「ママが審査員なら選ばれたかもね」
2「そゆことか」

コンテストなんて、どの団体・企業がやってても、どの個人がやってても、所詮「自分(達)が考えた最強の○○!」でしかないんですよ。そのモノサシ、実は他では通用しないってこと、けっこうありますから。

③入賞=スキルの担保にはならない

私「コンテストって、1つのチャンスではあると思うんだけど、受賞後までは保証してくれないでしょう?」
2「どういうこと」
私「金賞取ったらデビューとか、佳作以上は担当編集者がつくとか、入賞作品は○○に掲載をお約束とかはあるよね」
1「あー、うん」
私「その後はどうなんだろうって思わない? これは本当に、ケースはバラバラなんだけどね。商業作品ですごく良い評価をされていたけれど、今お仕事が少なくて困っている知り合いもいてね……」
1「ママが原稿依頼したら喜んで引き受けてくれた人だね」
私「よく覚えてるね。そう、その人。その人だけじゃなくてさ、賞を取ったからってその後のお仕事が保証されるわけじゃないのよ」
2「コンテストで入賞してもいいことない?」
私「大丈夫、いいことないわけじゃないよ。コンテストで賞を取るってすごいことだもん。審査員の心に届いたんだから」
1「賞ほしいよ、だって嬉しいもん」
私「分かるよ―――!」
2「取りたかったな」
私「もうひとつ言いたいことがあってね。仕事を依頼したいかという視点だと、また違ってくるのよ。例えば、今回にこちゃんが応募したイラストコンテストの受賞作品ね、こうやって眺めてみて、じゃあわたしがイラストを依頼したい人はいるか?ってなると、悩むわけよ」
1「あーーーね」
私「好みもあるし、目的もあるかな。わたしがにこちゃんに描いてもらうとき、わたしが伝えたコンセプトを自分なりに工夫して加工とか着色とかで表現してくれるでしょう? それなかなかすごいことだなって思ってて。次もお願いしたい、と思わせるスキルはコンテストで測るのって難しいかなって考えてる」
2「おこづかいもらえるならまた描くよw」

コンテスト入賞=スキルの証明や仕事の保証というわけではない。チャンスの1つではあるけど、落ち込みすぎなくてOK! 受賞は箔付けにはなるし、力が認められたことにもなるけれど、だからといって、声がかからない(稼げていない)からって能力がない(消えた)わけではないよ。

わたしがにこちゃんに依頼して描いてもらったのは、次の2つ。どっちも、夏休みに描いてもらいました♡

④その悔しさがいちばん大切


2「やっぱり悔しい」
1「理由はそうかもしれんけど、悔しいもんは悔しい」
私「うんうん、いいんだよ、悔しくて。悔しいに決まってる」
2「頑張ったから。いけると思ってた」
私「本気でやったから悔しいって思うんだと思う」
2「気持ちがずっと苦しかった」
私「それだけ一生懸命になれるってすごいことよ。ママは好き(よしよし)」
1「そんなことやってないで勉強しなさいとか一度も言わないママもママだって思うが」
私「そのあたりは身に覚えがありすぎるので……」
2「ねえねえ、ママも落選したことある?」
私「あるよ!数え切れないくらいいっぱいあるよ!大きいのから小さいのまで、夢中になって応募したり投稿したりしてたもん。わたしの場合は、絵を仕事にする才能はなかったみたいで、もう一つの好きなこと、文章でなんとか仕事になったって感じかな」
1「でもママ美術部だったんでしょ」
私「あーーー、だからかもしれないんだけど、自分に絵の才能がないって諦めるのに時間がかかってしまったのよね。自分に才能はない、でも好きでいる、って思えるようになるまで、すごく苦しかったの。趣味で絵を描いてますって、悔しくてしばらくは言えなかったけど、今は心から言えるようになったよ」
2「絵画コンクールでは賞取れるのに、イラコンで賞取れないの悔しい」
私「ママもそういうタイプでした」
1「うちはどっちも興味ない」
私「でもいっちゃんはSNSでめっちゃいいね♡つくじゃない」
2「イラスト上げるたびに反応すごくてうらやましい」
1「そんなにすごいかな?」
私「交流も上手いし、ああここがいっちゃんの主戦場かーってママは眺めてる」
1「……自分は審査されたくないだけっていうか」
私「ああ、それも分かるよ。わたしも文章系のコンテストには絶対に応募しないもんw」
1「そういうことかぁ! モヤモヤしてた理由やっと分かったわw」
2「応募しても応募しなくてもモヤモヤするのか」
私「するする! 人間みんなモヤモヤしまくりよ。悔しいとか、羨ましいとか、そういう感情があるからいいんだと思うママは。進んでいく力になるもんね」
2「次のコンテストでは、こういうモチーフ使おうとか新しい描き方に挑戦してみようとか構図を工夫しようとか思ってる」
私「いいじゃん!!!」
1「にこすごい!!!」
2「……(照れ)」

コンテスト受賞作を見ると、悔しいとか羨ましいとかネガティブな感情が噴き出るのは当然。ひとしきり吐き出して、美味しいもの食べて、たっぷり眠って、挑戦した自分をねぎらおう。

自分の好きなこと、自分が心血注いでいることに、他者の評価を受けるってとても怖いことだと思うのです。本気でやったぶん、評価されなかったときのダメージは大きい。悔しい、羨ましい、という感情が沸き起こることに自信を持っていいんじゃないかな。本気の証だから。わたしはそういう風に思っています。

にこちゃんはすっかり元気になって、次の挑戦をするようです。ママも頑張るぞ。これから2週間、はちゃめちゃに原稿漬けです頑張ります!

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まちか先生|作文講師・ライター
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