「おせちづくり!これだけでメンバーになる意味がある!」 okatteメンバー 杉本正代さん【INTERVIEW #06(前編)】
2015年4月にオープンしたokatteにしおぎは、もうすぐ10周年。まち暮らし不動産が10年を勝手に振り返る企画として、関わってくださった方へのインタビューを連載しています。第6回は、okatteメンバーの杉本正代さん。前後半にわけてお送りいたします!
<杉本さん>
2020年3月 なりゆきでokatteメンバーになる
聞き手・文:川越恵子(N9.5)
※イニシャルで登場する人の注釈はokatteメンバー向けです
「なりゆき」で、メンバーになっただけ
― okatteにメンバーになったきっかけを教えてください。
竹之内さん(okatteオーナー)とお仕事でご縁があって。共通の知人から「竹之内さんはokatteにしおぎっていう興味深いプロジェクトの大家さんなんだよ」というお話を聞いていたんです。詳しく聞いたら、なんとokatteはうちの近所だった。その頃ちょうど私は退職間近で、この先どうしようと思っていたときだったので、「一度okatteに遊びにいっていいですか」ってお話をしたんです。
でも、話しの流れで「ご近所ですね」とは言ったものの、人見知りだし、これから新しい地域のコミュニティに飛び込んでいく勇気はないなあ、メンバーにはならないだろうなと思ってたんです。いい話だけれど、自分はどうかなあって。
― メンバーにはならないだろうなと思ってたんですね。
そう。でもまあ、話を聞いてしまった「なりゆき」上、一度、okatteで開催されたトークイベントに行ってみることにしました。メンバー以外も参加できるイベントで、テーマはサーキュラーエコノミー(循環経済)だったのですが、それがとっても楽しくて。自宅から歩いて行けるご近所で、こんなレアなお話しが聞けるのかと思いました。トークイベントの後、みなさんとご飯も食べたんですが、全員初めてお会いする方だったけれど、とても気持ちよく過ごせたんです。ただ、その後もやっぱりメンバーにはならずに一般参加?ゲスト?として、okatteに興味ありそうな人を誘ってオープンデー(※)の流しそうめんの会に行ったりしていました。
― まだメンバーになりませんね。(笑)
そうなのよ。でも、そうこうしているうちに、近所のお友だちがokatteにとっても興味があるというので、一緒にメンバー説明会に行くことになったんです。行ってみたら、しのぶさん(弊社齊藤)の説明がすごく毅然とサッパリしてて。かっこいいな、さすが竹之内さんがやってらっしゃるところだなと思いました。でも、まだ入る気はありませんでした。
ー まだ?(笑)
そうなの。まだ。ところがね、説明会の数日後、一緒に説明会に行った友だちから「私メンバーになったわよ」って言われたんです!私に報告しないで入ってたんですよ!それで、紹介した手前、私が入ってないとは言えないじゃない?慌ててメンバーになりました。(笑)
ー 慌てて。(笑)
でもその頃ちょうどコロナで、あまり動けない時期だったこともあって、その友だちはわりとすぐにメンバーを辞めてしまったんです。でも、私は竹之内さんとお仕事のつながりもあるので辞めずらくって、そのままに。(笑)だから、積極的な理由でメンバーになったわけじゃないんです。本当に、なりゆきで?流されて?メンバーになっちゃって今に至る。
ー そうだったんですね〜。なんかリアルなお話しですね。
近所に「okatteのおせちファン」がいる
― 杉本さんは、okatteのおせち作りをとても楽しみにされているとうかがいました。#04の松村良子さんのインタビューに掲載しているおせちの写真は、杉本さんに提供していただきましたよね。
おせちは竹之内さんも参加していたし、勇気を出して行ってみたの。いろいろなメンバーがいるので逆に恥ずかしくないかなと思って。そうしたら、もう、okatteのおせちがすごく素晴らしいプロジェクトで。これだけのためにメンバー続けてもいい!って思いました。
― 杉本さんにとって、どんなところが素晴らしい?
みんなで作って、みんなで分けてっていうのが、すごく懐かしくて嬉しくて。私は子どもの頃、東京の下町に住んでいたので、そういう経験がわりとたくさんあった。でも今は、大規模集合住宅に住んでるので、おせちのようなイベント食を、みんなで集まって一緒に作るってことがなくて、寂しいな、なんかおかしいなっていう思いがあったのかも。今はおせちを手作りしない方が多いですよね。昔はおせちなんて売ってなかったから、料理上手の人が作って分け合っていたので、「本来はそういうもんだよな」という気持ちもあるのかもしれません。そして実際、すごくおいしいんですよ。すごくおいしいの!
― すごくおいしいんですね!
みなさんがお料理上手ってこともあるけれど、作ってる人も毎年違うんですよね。九州の味が入ってたり、関東の味が入ってたり、あとそれぞれのおうちの人の味の好みが入ってたり。同じメニューでも毎年作る人もレシピもちょっとずつ変わってる。「去年より味が濃くなってるね」とか、「節約したけど意外に美味しかったね」とか。そういうことが楽しいんです。いろんな人とおしゃべりしながら作って思い出ができて、okatteのお庭のお花や葉っぱをいただいて、家でお重に詰めるときに飾って。そして、とってもおいしい。値段もリーズナブルだし。日本中でこのシステムをすればいいのになと思います。食文化の継承にもなるし、コミュニティ作りにもなるし。すごいプロジェクトだと思っています。
うちのご近所さんがお正月に遊びに来た時にokatteのおせちを出したら「すごいおいしい!これはどうしたの?」って言うのでokatteの話をしたんです。それからは毎年お正月に食べに来るようになりました(笑)。「メンバーになって一緒に作ればいいのに」と話しているのですが、食べるだけがいいらしい。そんなokatteおせちファンが2、3人いるので、毎年おせちを二つ用意しています。家庭で食べる用と、okatteおせちファン用と。もう今から「来年のお正月も行くよ」と予約されてしまっているので、今年も作らないわけにはいかないですね。
― お友だちと楽しむおせち、いいですね!杉本さんは何のお料理を担当されたんですか?
私は前回は、こんにゃくのきんぴらと昆布巻きの担当。去年、食料品の値段がグンッと上がりましたよね。だから、おせち会議の時に、利尻昆布じゃなくて早煮昆布にしようとか、ニシンは食べたいけど高いからゴボウにしようという話をして作りました。意外とおいしかったねとか、こっちのほうがいいかもねと作った後に話すのも楽しいんです。
― おせち会議はみなさんで集まって?
集まれる人は集まって、リモート参加の人もいます。最初に1人前の予算を決めておくんですけど、おさめるにはどうしようとか。今回はこっちの食材はやめてこっちにしようかとか、数の子は作らなくても共同購入でいいんじゃない?とか。ああしよう、こうしようって。
ー その作戦会議のもと、年末にみなさんで作るんですね。
はい。教わったり、教えたりして。以前メンバーのご家族が来てくださって一緒に作ったんですが、昆布巻きにかんぴょうを巻いてもらったら、何度やっても縦結びになってしまって。みんなで教え合って作りました。そういうのも楽しい思い出になっています。
ー 家でひとりで何品も作るのは大変だけれど、教え合いながら、担当のメニューを集中して作るのはとても楽しそうです。そういえば、おせちプロジェクトはどのように始まったのでしょう。
私はおせちに3、4回参加していますが、メンバーになったときにはもうプロジェクトがありましたね。
進化するokatteおせち
<ここで、弊社乙川登場>
(隣で仕事をしていたが、ここは私の出番!とやってきた)
(乙川)
okatteおせちの始まりは、2017年の末ですね。たしか良子さん(#04松村良子さん)が、「おせちをみんなでちょっとずつ作ってみたい!」と提案してくれて、3、4人ほど集まったんです。なに作れる?私はこれかな、みたいな感じで。私は伊達巻と田作りだったらいけそうと言って参加しました。初回は作れるものだけを作っていたので、量も種類も少なくて、重箱ひと揃えになるほどではありませんでしたが、とてもワクワクしましたね。その話が年明けにokatteに広まり、どんどん人気が出た感じです(笑)。初期はそれぞれ重箱を持ってきて、詰め方の見せあいっこをしたりしていましたが、コロナ後は、持ち帰って家で詰める方式になっています。年末につくってお正月に食べることになるから、衛生管理はきちんとやってますね。 生鮮食品はやめて火を通したものだけにしてますし。
(杉本)
そういえば、何年か前に、齊藤さんがロジスティクスを整えてくれましたよね。地面を仕切ってくれたんです。不動産屋さんらしい発想。(笑)
ー ロジスティクス?? 地面?(笑)
(乙川)
地面師とかじゃないですよ?(笑)
料理を作った後に仕分けるのが大変だったのですけど、齊藤さんが「こうしよう」って言いながらテーブルにテープを貼って区画を作り、ブロックごとに「ここは1人前ゾーン、ここは2人前、ここは3人前」というふうに分けたんです。各自、自分の容器をブロック内に置いておくと間違えないし早い。安全。
おせちが人気になって人数も増えたこともあり、みなさんが持ってくる容器の数も種類も増えちゃって。均等に分けていたつもりが最後の方で足りなくなって、最初に入れたものから少し分けてもらったりということもありました。また、このメニューは要らないけど、これが多めにあったら嬉しいとか、カスタムしたい要望も広がった結果、衛生面も考えて、容器詰めの段取りも工夫するようになった。すごく早く詰め終わった時は「やったね!」って感じでした。
(杉本)
ほんとにね!
<ここで乙川は仕事に戻りました>
ー おせちは毎年進化しているんですね。
良子さん(#04松村良子さん)の存在がとても大きいんです。けっこうしっかりと衛生面について色々と教えてもらったので、自分が家でご飯を作るときにもとても参考になっています。「こんなことしたら良子さんにおこられる」ってよくキッチンでひとり言を言っています。(笑)
ー 例えばどんなことですか。
お肉やお魚を扱う手で生で食べるものを調理しないとか、鶏肉の扱い方とか。日常生活でとても役立っています。一緒に作ったからこそ分かることだと思います。
ー 知恵がみなさんに伝わっているんですね。教えてもらうということなら、料理教室やカルチャースクールもありますよね。okatteで作るのは、何か違いますか?
うーん。okatteでは知識だけでなく、本当の知恵を教えてもらえる気がする。「本当はこんなふうにやらなくても、これでできるよ」とか。
お料理以外でも、例えば私、乙川さんに金継ぎを教わったときに「本当は刷毛でやるけれど、つまようじで大丈夫です」とか「そこは新聞紙でもできますよ」とか。そのほうが家に帰って自分でやるんですよね。参加したみなさんと「意外と上手だね」とか「全然できないからここお願いします」とか言いながら教わっている時間がとっても楽しいんです。お教室やカルチャースクールは、たまたま一緒にいる人たちだけれど、okatteでは、金継ぎ目的で一緒になったメンバーさんと親しくなったり。そういうところも全然違うと思います。「食器が壊れたらまた一緒にやりましょう」って言ってもらったりして、金継ぎが身近になるというか、カルチャースクールよりも身についていると思います。
そういえば、最近は、竹之内さんとMさん(※OKANEYをデザインしたokatteメンバー)と3人で、okatte洋品店っていう裁縫部を始めたんです。ズボンを1本縫うだけなんですが、3人で教え合いながら励まし合いながら作っています。この裁縫部も、始まった経緯が面白くて。
(後半へ続く!)
<後半の記事>