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【イベントレポート】Xsector Kyoto キックオフ -セクターを越えた繋がりから共創される価値とは-

まちとしごと総合研究所では、2016年から京都市と共に、“みんなごと”のまちづくり推進事業を実施しています。
広く市民のみなさまから「京都がもっとよくなる」「もっと住みやすくなる」まちづくりの取組提案を募集。それらを「まちづくり・お宝バンク(以下、お宝バンク)」に登録・公開するとともに、提案の実現に向け、きめ細やかなサポートなどを行ってきました 。

「お宝バンク」に集まった提案は、330件(2019年8月24日時点)。ここからフードロス対策に取り組む「さらえるキッチン」や事業承継について考える「アトツギズ」などのプロジェクトが生まれ、それぞれ自走しています。

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そして2019年度からは、新たに「Xsector Kyoto(クロスセクターキョウト)」を立ち上げ、まちづくり団体、NPO、企業、行政、大学関係者等の異なるセクターのさまざまな主体が、共通のゴールを掲げ、お互いの強みを出し合いながら地域課題の解決を目指すための実践的なプログラムを実施することとなりました。

今回は、2019年8月24日、京都経済センターにて開催した、キックオフイベントの様子をレポートします。

セクターを超えたつながりから共創される価値とは

イベントは2部構成。ゲストによるトークと、参加者によるグループセッションです。まずご登壇いただいたのは、金沢工業大学(KIT)虎ノ門大学院 教授の野村恭彦さんです。

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野村さんは、市民自らが対話し実行する創意形成社会を目指し、渋谷では2016年より「渋谷30」に着手。多様なセクターで連携したプロジェクトの創出に取り組んでいます。

「ファストフードからスローフードへ社会の関心が移り変わったように、イノベーションは今、Fast InnovationからSlow Innovationに変わりつつあります。これからイノベーションの最先端フィールドになるのが、地域です」

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Slowの時代、地域では各セクターごとに求められる役割は変わっていくと続けます。

「求められるのは、市民協働イノベーションエコシステムです。自治体がイノベーションのリーダーシップをとる。市民は社会課題発見のパートナーになる。大企業は、イノベーションのサービスプラットフォームづくりに取り組む。そして地域企業は、持続的な課題解決の担い手になることです」。

特に、世界的にもブランド価値の高い京都は、地域の中でも最先端のフィールドになる可能性が高いと野村さんは考えています。

そのような背景から、現在、京都市は行政職員のイノベーションファシリテーター化に取り組み、野村さんが講師を務めています。

「行政職員に求められるのは、市民とも企業とも関わり、つながりを促進していく役割です。そのために必要な広い世界観と強い意図を持ちつつ、推進する人材を育成しています」。

そして、行政が異なるセクターをつなげ課題を見つける役割を担い、民間企業のイノベーターが、社会課題を解決していくことが理想の協働だと続けます。

「行政と民間企業それぞれが役割を果たし、行政がルール改正することで生まれる民間の新事業を生み出せる社会になればいいのではないでしょうか」。

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野村さんが取り組む代表的なプロジェクトが、「渋谷をつなげる30人」。多様なセクターから集まった30人が、つながりを深めながら、課題解決のためのビジネス活動を約半年かけて立案・実行するものです。

今年度は、「京都をつなげる30人」の開催が決定しています。ここからどのような物事が生まれるのでしょうか。とても楽しみですね!

これらの時代、大切にしたい”to S”の考え方

全国各地で活躍する野村さんに続いてお話いただいたのは、京都で活動するみなさんから、クロスセクターでプロジェクトを生み出すヒントをシェアしてもらいました。

まずは、株式会社ツナグム代表取締役 田村篤史さんです。

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ツナグムは、『人と人、人と場のつながりを紡ぐ。』をミッションに、拠点運営や移住支援などを行う会社です。

「僕たちの仕事は、NPOや企業、行政、個人の方からのご相談ではじまることが多いです。その困りごとにアイデアを出したり、専門スキルをもつ人をつないだりして解決しています」。

さまざまな人や組織を連携しながら、プロジェクトを進める田村さんは、これからの時代に大切にしたいことを話しました。

「どこに向けて事業が進んでいくかを捉える時、よくto Bやto Cの視点で話されます。しかし、これからはto S、社会に向けて必要なのかどうかが大切になるのではないでしょうか。僕たちは、社会に向けて事業を展開するときに一緒にプロジェクトを動かしたり応援したりする人を見繕うことを得意としています。Xsector Kyotoを通してみなさんとも、何か一緒にプロジェクトができたら嬉しいです」。

続いて登壇したのは、龍谷大学政策学部教授の村田和代さん。社会言語学を専門に、コミュニケーションや言語使用の観点から、持続可能な社会形成に向けて何ができるかの研究に取り組んでいます。

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「アクションにつながる話し合いとはどういうものかを研究していて、去年渋谷30へ見学に行かせてもらいました。そこで、かなり衝撃を受けまして。ごく普通の人が30人集まって、月1回コミュニケーションを繰り返す中で、すごく変わっていかれるんですね」。

「渋谷の地域の課題を自分ごとにして、解決していくアクションにつなげていく姿をみて、異質な他者との対話を通して、イノベーションは起こるのではないか。また見方を変えると、各個人が学習、つまり変容することで市民性を獲得することにつながるのはないかなと思います。このXsector Kyotoで、みなさんがどう変化していくのか見せていただくのを楽しみにしています」

クロスすることで、何かが生まれる期待感

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ゲストそれぞれの話題提供が終わったあとは、ゲストを中心にしたカフェ形式のトークセッションへ移りました。
プレゼンテーションで見えたクロスセクターの価値から、改めて期待することや京都の中でやっていきたいことについてクロストークしました。

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野村「京都の一番の強みは、市民力です。みなさん自分のまちのことに責任を持ち、自分たちでやろうという意識があります。だからこそ、京都市民ではないけれど仕事などで京都に関わる人たちが、主役として京都のまちづくりに参加できる風土をつくり、政策に結びつけることが大切になるのではと思います」

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佐藤「京都の企業さんにもまちづくりに参加していただいていますが、トップ同士が話すことがあっても、プレイヤー同士が立場を抜きにして話す機会は少ないのではと感じています。Xsectorで、プレイヤーがつながることで、さまざまな事業が動き出すことにチャンスを感じています」

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村田「昨年、渋谷30を見せていただいて、何かしらアクションが起きるためにはリソースが大切だと思いました。京都市内にも多種多様な企業があるので、思いだけで終わらない、次の一歩につながる取り組みを期待しています」

また、NPO法成立から20年以上が経ったことも踏まえ、「NPO、市民、行政などがもう一度声を出し合い、団結する機会にしていきたい」という発言もありました。

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東「例えばこども食堂は、誰かが見つけた身近な問題に対して、まずは個人が取り組み、NPOや地域の人が関わりながら、メディアが取り上げ世の中に認知されていったことで、行政の施策が変わっていきました。そのようにクロスセクターで手を取り合い、課題解決が進んできた20年じゃないでしょうか。改めて市民や団体がもう一度声を出し合う機会にこのプログラムがなればいいですね」

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野村「リソースもちの人って、結構いるんじゃないんですかね。例えば、鉄道会社が高架下を解放することで課題解決につながるプロジェクトが生まれるかもしれませんし、そこに行政が介入することで信頼を担保することができます」

田村「そうですね。リソースって僕はがめついおばちゃんの感覚と近いのかなと思うんです。『このスペース余っていますか?』と声をあげて、リソース探しをするのもいいですね。場所に限らず、リソース持ちの人の売り場ができたらおもしろいなと思います」

東「僕も専門家屋台をしたいと思ったことがあって。普段は病院にいる看護師さんが街中に出るコミュニティナースの活動を知って、専門家との接点が限られている現状があると感じて。何が起きるかわからないけれど、リソース持ちの人が集まることから生まれるものがあるのではないでしょうか」

行政、大学、民間企業、まちづくり団体、NPOなどさまざまなセクターの人が集うことで、短い時間ながらそれぞれの視点からアイデアが飛び出た時間となりました。


一人ひとりが主役になって共創を考える

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ゲストそれぞれの話題提供が終わったあとは、ゲストによるカフェ形式のトークセッション、そして会場全体を巻き込んだワールドカフェに移り、話題を深めていきました。

テーマは、「ゲストの話を聞いて あなたの中に見つけた 共創の可能性or課題とは?」「この場に集った私たちだから これから始めていきたい 最初の一歩は何ですか?」「私たちがセクターを超えて 実現していきたい取組みとは?」について。NPO職員、行政職員、民間企業の職員、学生などさまざまな層が集まっていたこともあり、さまざまな角度から意見やアイデアが出たのが印象的でした。

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<参加者からの声>

「この出来上がったプラットフォームをどのように活かしていくのかが大事だということ。そして活動については、何かをもらったり得たりするのではなく、自分からのgiftが大事だということ。次はひとりひとりが自分の色を活かせるカラフルな社会の実現に向けて、クロスセクターで取り組むことができるエレガントで小さな一歩とは何かについて話したい」(まちづくり団体/NPO・24歳)

「従来の利害関係が先に立つ行政、企業、NPOの関わり方とは違う、新しい関係性をクロスセクターというキーワード自体が内包していると思いました。今日のような自発的な人の集まりでつながるものを、地域社会全体に広げていくためには、各セクションが一定以上の規模感で動いていく必要がありそう。地域の情報伝達の仕組みを、企業のリソースも絡めることでより現代の情報環境や価値観にあった、孤立を生まない仕組みに変えていけそうな気がした」(企業・35歳)

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本キックオフイベントを受け、9月からいよいよセッションプログラムがスタートします。どんなメンバーが集まり、どんな新たなプロジェクトや活動が生まれていくのでしょうか。まだ見ぬものへの期待が高まりますね!

<Graphic Recording / 三宅 正太:NPO法人山科醍醐こどものひろば>

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