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ビジネスデザイン@Rotman
こんにちは、町田です。
前回はトロント大学のBusiness School、Rotman School of Managementのカリキュラムの概要について書きました。
今回はRotmanのカリキュラムのうち、Business Designについて焦点を当てていきたいと思います。
私自身、ビジネスデザインを中心に学びたいと考えRotmanに入り、入学時にBusiness Design Fellowにも選ばれたこともあり、多くのBusiness Design系の授業やイベントに参加してきました。
この記事が、RotmanやBusiness Designに興味のある方の参考になれば幸いです。
以下noteを読む上での、念のための留意点です。
Class of 2022の情報であること
Covid-19のパンデミックの影響をモロに受けたこと
あくまで、私見であること(特に、他のスクールのコースを履行したことは無いので、それらとの違いは正直言って分かりません)
Business Designとは何か?には触れません。。
概要
Rotmanには多くのBusiness Design関連の授業があります。
学校がコアコースとして挙げているものは、以下の7コースです。
Business Design Fundamentals
Business Design Practicum
Creativity for Business Innovation
Global Practicum: Design-Led Innovation
Design Research and Data Storytelling
Service Design: Innovating Service-Based Organizations
Futures Thinking: Developing Business Foresight
これらのうち、いくつかの授業を取り、かつ、条件を満たすことでBusiness Design Majorを取ることができます。詳細は以下をご覧ください。
私は上記のコースの内、太字にした授業を取ったので、それらについて簡単に説明していきます。
経歴やバックグラウンド、母国語などの違うメンバーとのプロジェクトワークは、日本で実施するよりも格段に難易度が高く、意思疎通をとることが難しい場面もありました。
ですが、多様なメンバーと一緒に働くからこそ得られる気づきや経験がありました。
Business Design Fundamentals
文字通りビジネスデザインの基礎を学ぶ授業。
教授
Angèle Beausoleil、Business Design InitiativeというRotman内部のBusiness Designを推進する組織のアカデミックディレクターも務める方です。
授業内容
学生はStrategic Design、Business Model Design、Employee Experience Design、Service Design、User Experience Design の5つ中から1つのトピックを選び、5名1チームのグループワークを通して、6週間でビジネスデザインのプロセスを一通り学びます。
この授業では実際の企業が抱えている問題に対し、ビジネスデザインアプローチを適用し、最後の授業で教授と企業の方々にプレゼンを行います。
今回はカナダ大手のグローサリー企業が対象で、私はEmployee Experience Design を選びました。
お題となったビジネス課題は、「フロントラインワーカーの高い離職率をどう改善するか?」
毎回の授業は講義とグループワークの2部で構成され、講義でベースを学び、それらをグループワークで実践していく流れで、おおよそ、講義:グループワーク=1:1くらいの割合でした。
私はデザイン思考プロジェクトの経験があったため、比較的すんなりとBusiness Designの考え方やプロセスを適用していくことができました。
ですが、デザイン思考やビジネスデザインの経験が無い学生も多く、彼ら・彼女らとのディスカッションで気づきを得ることも多くありました。
またMBA修了後、実際に働く場面を想像すると、周りにデザイナーやデザイン思考、ビジネスデザインに詳しい人間は多くは無いと思うので、こういった環境でプロジェクトワークを実践できたことは、非常に良い経験になったと考えています。
Business Design Practicum
ビジネスデザイン実践。
教授
Business Design Fundamentalsと同様、Angèle Beausoleil。
授業内容
基本的な内容はFundamentalsと同じ。
ですが、講義よりも実践に重きを置いた内容になっており、講義の割合は全体の20-30%ほどで、その他はグループワークでした。
私たちの年は、この授業がIntensive Format(2週間で8回の授業)で開講され、時間が限られていたこともあり非常にタフだったことを記憶しています。
また、Fundamentalsを取らなくてもこのPracticumを取ることも可能だったため、この授業を取る学生の約半分は、Fundamentalsを受けていない学生でした。そのため、Fundamentalsを取っていた学生は、そうでない学生に考え方やプロセスを教えながらプロジェクトワークを進める必要がありました。
クライアントは、モントリオールを拠点とする建築デザイン会社のLemay。Fundamentalsとは異なりB2Bの企業がクライアント、かつ、与えられたお題が抽象度の高いものだった(下記)ということもあり、難易度の高いプロジェクトでした。
“How might we put our partners and clients at the centre of our research services and systems, and collectively prepare for the future?”
Service Design: Innovating Service-Based Organizations
サービスデザインについて学び、実践する授業。ビジネスデザインの両授業よりも、具体的な「サービス」のデザインによりフォーカスしていた印象。
教授
カナダのサービスデザインファームBridgeable(North America’s largest Service Design consultancy)のファウンダーであるChris Ferguson。彼に加え、多くのサービスデザインのプラクティショナーがStorytellingやService Ecosystem Designなどについてのレクチャーをしてくれました。
授業内容
この授業もBusiness Designのクラスと同様にスタジオタイプの授業で、実際の企業が抱える問題に対し、サービスデザインしていきました。
レクチャーが4分の1程度で、残りの4分の3はグループワークという構成でした。
今回はカナダのヘルスケアテック企業が提供するEAP(Employee Assistance Program)サービスの問題を解決するというお題で、5名1チームのグループになりグループワークを進めました。
特徴的だったのは、Full-time MBAの学生だけでなく、Part-time MBAの学生やMaster of Informationの学生も同じクラスを取っていたこと。
特に同じチームになったMaster of Informationの学生は、グラフィックデザインや映像編集のスキルがあったため、彼女とのコラボレーションはプロジェクトワークをしていく上で、とても刺激的でした。
また、彼女もMBA生と一緒にグループワークしたのが初めてだったとのことで、視点の違いが面白かったと言っていました。
授業で非常に印象的だったのは、教授が以下のように述べていたことです。
Design Thinkingという言葉はあまり好きではない。なぜならDesignという行為は、Thinkingすることとは全く異なるからである。Designにおいては、ThinkingではなくDoingがより重要だ。
Futures Thinking: Developing Business Foresight
この授業は、Business Designのコア科目に含まれているものの、よりストラテジー色の強い授業で、私たちはFutures Studiesで使われるようなツールキットや考え方を学びました。
教授
Susan Gorbet、Zan ChandlerとMadeline Ashby。3名ともOCAD Universityというトロントにある芸術大学出身でStrategic ForesightやFutures Studiesの専門家。MadelineについてはSci-Fi作家でもあります。
授業内容
授業の進め方は、これまで述べてきた3つの授業と同様、講義とグループワーク中心。実際の企業からのお題に対し、"Futures Thinking"を活用し取り組んでいくものでした。
この授業でのクライアントはグローバルテック企業のCanada支社。与えられたお題は、「2030年、未来の働き方」について。
この授業で学んだ内容は、これまでデザイン思考やBusiness Designで学んできたツールキットや考え方が大きく異なったため、私の視野を広げてくれました。
Futuresを考える際、Futuresに対する価値判断を行ってはならない、という考え方があります。Futuresに対する価値判断というのは、現在のレンズを通した価値判断になってしまうため、その判断がFuturesに対するバイアスになってしまうためです。今の常識・当たり前は、Futuresのそれとは異なります。
例えば、20年前、タクシーの代わりに見ず知らずの人の車に乗って移動することに対して、その当時の価値基準を当てはめると、どうでしょうか。おそらく、そんな未来なんてあり得ない、となってしまうのではないでしょうか。
現在多くの日本企業が「どういった未来を描くのか?」「未来に対してどういった手立てを打っていくべきか?」を検討していると思います。
このクラスは今後それらを考えていく上で、非常に役立っていくだろうと感じています。
おわりに
Business DesignやService Designは、スポーツや楽器の演奏と似ていると言われます。
スポーツや楽器の演奏では、教科書を読んでどういったルールなのか、どのように演奏するのかを学んだとしても、すぐにその通り身体を動かしたり演奏したりするのは難しく、上達するには何度も練習することが大切です。
Business DesignやService Designも同様に、ツールキットや考え方を有効活用できるようになるためには、繰り返しの実践が必要になります。
RotmanのBusiness Design系の授業は、非常によい実践の機会になりました。
長々と書いてしまいましたが、RotmanやBusiness Designに興味のある方の参考になれば幸いです。
Rotmanではこれらの授業以外にも、Business Design Clubなど課外活動でもBusiness Designに力を入れています。
次回はそれらについて触れていきたいと思います。
また各授業の詳細についてなど、質問があれば以下までお気軽にどうぞ。
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