『いもうと』赤川次郎 2024⑱
まさか。『ふたり』の続編に出会うとは。
北尾実加、27歳。
青春のきらびやかさのあった前作と違い、9年目の会社員として現実に飲み込まれていく彼女の肩には、若いながらも人生の疲れが漂っていて、共感できる点であった。
死んだ姉の千津子はほとんど登場せず、今度は一人で、様々な出来事に相対しつつ、母、父、そして妹に向き合っていく実加が描かれる。
少女時代の彼女は、のんびりしたどちらかというと楽観的な性格だったにもかかわらず、ここまで人間の愛憎劇に巻き込まれ、翻弄されてしまうと、一般的に普通、とされている道を彼女自身が歩むのは難しいように思える。恋愛に代表される、嵐のような激しい感情を抑制し、望みの通り生きることから自らを遠ざけているような実加の姿は、見ていて歯がゆい。
とはいえ、歪な形ではあっても、家族と呼べる存在の中に、実加が笑っていられることは、心から嬉しかった。
前作を踏まえて、実加を成長させるシナリオを作り上げる赤川次郎はさすがとしか言いようがない。
何より、『ふたり』の続編を書いてくれたことが奇跡で、嬉しいのだから。