世界の絵本シリーズVol.8:インドネシア/SANGKURIANG(サンクリアン)
先日、主人がインドネシアへ出張に行ってきたので、わたしも「インドネシアについて学ぼう!」ということで、今回はインドネシアの絵本(昔話)をご紹介します。
絵本の概要
この絵本は、インドネシアの西ジャワ地域に伝わる有名な伝説です。母親に恋をしてしまう若者の物語で、数世紀を経て、バンドン湖とタンクバン・パラフ山がどのように形成されたかという地元の伝説として生き続けています。
ストーリー
罪を犯した男神と女神が地上に転生しました。男神はトゥマンという犬に、女神はチェレング・ワユンヤンという猪になりました。
ある日、スンダの王がジャングルで狩りをしていると、道に迷ってしまいます。王は茂みに放尿し、その尿が偶然乾燥したココナッツの殻に集まりました。近くにいたワユンヤン(女神)は、その尿を飲んでしまい(王の精子が含まれていた)、知らぬ間に妊娠します。彼女はすぐに赤ん坊を産み、王はその赤ん坊を見つけて養子として育てましたが、実の娘であることには気づきませんでした。
赤ん坊はダヤン・スンビという美しい少女に成長しました。多くの貴族や王子が彼女に求愛しましたが、彼女の心を惹く者はいませんでした。なぜなら、彼女は小さい時からいつも一緒にいた犬のトゥマン(男神)と恋に落ちてしまったからです。
当然のことながら、王は娘の行動を非常に恥じ、当惑し、王女を森に追放しました。王の臣下は王女を哀れに思い、森の中に質素な小屋を建て、彼女とトゥマンを二人きりにしました。
王女は森でトゥマンと共に過ごし、彼が満月の夜にハンサムな神に変身できることを知ります。二人は愛し合い、ダヤン・スンビはトゥマンの子供、サンクリアンを産みます。
サンクリアンが10歳になったある日、母親が鹿の肝臓を欲しがったので、彼は狩りに出かけます。
彼は父親がトゥマンであることを知らず、誤って彼を殺してしまいます。サンクリアンは母親に肝臓を持ち帰りますが、トゥマンのものであることを告白。母親は激怒し、セントン(しゃもじ)でサンクリアンの頭を強く殴り、サンクリアンは血を流しました。
ショックを受けたサンクリアンは家を飛び出し、森で生活することを決意します。(頭を殴られた衝撃で記憶喪失になっている。)
その後、サンクリアンは隠者に育てられ、力強い男に成長します。
気楽な生活を送っていたサンクリアンは、森の中を抜けて家に帰る途中、ある小屋で美しい少女と運命的に出会い、恋に落ちます。しかしその少女とは、母親であるダヤン・スンビだったのです。
にもかかわらず彼は、その小屋が自分の子供時代の家であり、その美しい少女が自分の母親であるとは一度も気づきませんでした。
なぜなら、彼女は呪いをかけられているので、年をとらず、美しい少女のようだったからです。
ダヤン・スンビもまた、逞しく育ったサンクリアンを息子だとは思いもしなかったのです。
二人は結婚の約束をしますが、結婚の前日、ダヤン・スンビはサンクリアンの頭の傷を見て、彼が自分の息子であることにようやく気づきます。
彼女は結婚を中止するよう懇願しますが、サンクリアンはそれに応じなかったため、彼女は結婚の条件として不可能な課題を提示します。
その条件とは、サンクリアンは谷全体を水で満たして大きな湖を造らなければならず、次に二人で湖に入るためのボートを頼みました。問題は、両方の課題を一晩で完了しなければならないということでした。
サンクリアンは神の助けを借りて課題を達成しますが、最終的にダヤン・スンビは花に変身してしまいました。サンクリアンは彼女を見つけられずに気が狂ってしまいます。
彼は怒りのあまり、自分が作った船を蹴り飛ばしました。船はひっくり返って落ち、タンクバン パラフ山に変わり、湖はバンドン湖となりました。
この物語は、タンクバン・パラフ山、バンドン湖の形成に関する地元の伝説として、今も語り継がれています。精霊や神々の影響を受けたこの伝説は、インドネシアの文化に深く根付いているのだとか。
インドネシアの地理
インドネシアは、地理的にはスマトラ、ジャワ、カリマンタン、スラウェシ、ニューギニアの 5 つの大きな島と、小スンダ、マルクの両諸島から構成されています。
インドネシアの国土面積は約 191 万 km2 (日本の約 5 倍)ですが、面積では国土の 7%の広さしかないジャワに同国人口全体の 61% が集中して住んでいます。
そのため、首都をジャカルタからヌサンタラに移転する計画も進んでいますね。新しい都市の建設にかかる費用は350億ドル(約5兆5000億円)で、2045年の完成を予定しているとか。
西ジャワ地域について
今回の物語は、「西ジャワ州」に伝わるお話。「西ジャワ州」は首都ジャカルタのある「ジャカルタ首都特別州」の東隣にあります。
州都はバンドンで、インドネシア第3の都市です。2020年のデータによると、人口は257万人。日本の都市と比べると大阪市(270万人)くらいでしょうか。
バンドンは、年中通して気候が涼しく、インドネシアの軽井沢と呼ばれているそうです。ジャカルタのスカルノハッタ国際空港からバンドン市までの距離は177キロ程度で、渋滞なしであれば車で3時間ほどなので、週末はジャカルタからの観光客で賑わっている様子。
「花の都」としても知られ、周辺には美しい山々や茶畑が広がっています。
一度は訪れてみたい場所が、また増えました。
次回もインドネシアの絵本をご紹介したいと思います。ではまた。
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