見出し画像

世界の絵本シリーズVol.9:インドネシア/Di Bawah sana(あの下に)

今回は、前回に引き続きインドネシアの絵本をご紹介します。

タイトル:Di Bawah sana(あの下に)
著者:Dian Kristiani (ダイアン・クリステン)
イラスト:Vannia Rizky(ヴァニア・リズキー)
出版社:PROVISI MANDIRI PRATAMA

https://seumpama.com/shop/di-bawah-sana/

絵本の概要

タイトルである"Di Bawah sana(ディ・バワ・サナ)"はインドネシア語の表現で、日本語に訳すと「あそこの下」または「下の方」という意味になります。

"Di" - 場所を示す前置詞で、「~に」「~で」。
"Bawah" - 「下」「下方」。
"sana" - 「あそこ」「そこ」を意味する指示代名詞。

読み方は、そのままアルファベット読みすれば良いみたいです。

子どもたちに自然の豊かさと美しさ、それを守る大切さを教えてくれる絵本です。色鮮やかなイラストともに環境保全について子どもたちと一緒に考えることができるのではないでしょうか。

ストーリー

本文より

今日は学校の遠足です。亀の孵化を見に行きます。
主人公の男の子は、食べていたスナックの袋を地面に捨ててしまいます。
女の子が注意しますが、男の子は気にしていない様子。

本文より

その後、船に乗った男の子は、船酔いをしてしまいます。
そして、またしても飲んでいたジュースのプラスチックコップを海に捨ててしまいます。

本文より

男の子は海の中に迷いこんでしまいます。
すると亀が出迎えてくれました。でも、亀の鼻には何かが刺さっています。
それは、男の子が捨てたストローでした。亀は苦しそうにしますが、なんとかストローを抜くことができました。

本文より

その後も亀に連れられ、海の中を探検する少年。
クラゲや魚、鯨にタコ。様々な動物に遭遇するのですが、海の中は人間が捨てたプラスチックなどのゴミに汚染されていることを知っていきます。

インドネシアのゴミ問題

 新興国であるインドネシアは、人口増加や経済成長に伴い、ごみの排出量が増加傾向にあるそう。インドネシアは世界銀行の報告では中国に次ぐ世界第2位の海洋ごみ排出国とされていて、バリ島の海にも大量のごみが漂っています。

 National Plastic Action Partnershipの調べによると、インドネシア国内でのプラスチックごみ発生量は年間約680万トン。このうち、回収されているのは39%で、61%は未回収のまま野焼などで環境へ流出していると見られています。また、回収されたごみについてもリサイクルの仕組みが確立されておらず、多くは未分別のまま埋め立てられています。

 インドネシアといえば、世界的にも貴重な森林資源であるマングローブの生息地として知られていますが、海洋プラスチックがマングローブの苗木に掛かって成長を阻害したり、マングローブに棲む海鳥や魚、ウミガメなどが誤飲により死亡するといった、生態系への被害が毎年のように報告されています。

インドネシアが抱えるごみ問題

インドネシアの美しい海がゴミだらけになっています、、


作者について

著者:Dian Kristiani (ダイアン・クリステン)
インドネシアの児童書作家
ジョグジャカルタのガジャマダ大学哲学部卒業
ベストセラーを含む 200 冊以上の作品を執筆しています。さまざまな執筆イベントで講演者として活躍する彼女は、作品を通じてインドネシアの子供たちに喜びをもたらし、前向きな価値観を広めることを目指しています。

UBUD 

イラスト:Vannia Rizky(ヴァニア・リズキー)
バンドン工科大学卒業ビジュアルコミュニケーション
彼女のinstagramでインドネシアの自然あふれるイラストや動植物のイラストを見ることができます。

https://www.instagram.com/cikpan/

インドネシアの絵本事情

近年、インドネシアでは絵本を含む読書環境が徐々に改善されてきているそうです。2016年から国を挙げて「Gerakan Literasi Nasional (GLN)」という全国読書運動が進められ、子どもたちにとって読書が身近なものになりつつあります。

しかし依然として、良質な絵本は高価で、経済的に厳しい家庭にとっては簡単に手が出せる価格ではなく、読書活動を進める手段のひとつとなる図書館の数も、地域で大きく違うとのこと。

そんなインドネシアの子どもたちのために、日本の絵本をインドネシア語に翻訳し寄贈する活動をしているのが「ジャカルタ・ジャパン・ネットワーク(J2net)」。

ボランティアとしても参加できるそうで、
日本の園児たちが、「インドネシア語の訳が書かれたシールを日本語の絵本に貼り付ける」という形で活動に参加した例もあるそう。

インドネシアでの思い出話

Cover photo by:MoonLite Kitchen and Bar (イメージ)

インドネシアの貧困問題といえば、わたしが10歳のときに両親に連れて行ってもらったバリ島旅行での出来事を思い出します。

バリ島のレストランで夕食を食べていたときのこと。海沿いのテラス席に親子3人で座っていました。当時のわたしと同じくらいの年齢、もっと小さな子どもたち数人が物乞いをしてきたのです。。

10歳だったわたしには、本当に衝撃でした。わたしの父がお金を渡したかどうかはあまり覚えていないのだけど、ボロボロの服を着た子どもたちがわたしに手を差し出してくるのです。インドネシア語か何かわからない言葉で「ちょうだい、ちょうだい」と言っているようでした。

「自分は恵まれた国に生まれ、恵まれた生活をしているのだな。たまたま日本に生まれた私とインドネシアに生まれたあの子達。場所が違っただけ。」と子どもながらに思った出来事でした。

二十数年が経過し、その子達も30代になり、わたしと同様に親になっているかもしれません。どんな子ども時代を過ごし、どんな大人になっているか全くわかりませんが、日本で何不自由なく育ったわたしには到底、想像もできない苦労をして大人になったのではないかと思います。

どんな形かまだ思いついてないですが、経済的・文化的・地域的な格差ゆえに教育の機会が得られない子どもたちに対して、何かわたしにもできることがないか模索したいなと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?