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嶋田青磁
2018年9月2日 16:07
今まで、夜の海は恐ろしいものだと思っていた。人は、果ての無さに本能的な恐怖を感じる。死が怖いのは、生が終わるためではなくその後永遠に続く無が恐ろしいのだ。だから人間にとって、陽が落ちた後の海は、死を連想させる。 ところが目の前にある海はどうだろう。満月のおかげで、砂のついた裸足の爪先まで容易に見ることができる。風は穏やかで、凪いだ海面は眠る黒猫の毛並のように柔らかい。月光に照らされ