安全

泥まみれの現実から逃れるためには、結末が全て分かっている、自分かどう行動をすれば良いのかが全てわかっている、そんな過去を安全地帯と呼ぶしか無かった。私の安全地帯はここだけ、たったのこれだけ。そんなのおかしな話だよな、でも、その他には存在しない。ここまで来れば安心。そんな安心感は今となってはもうどこにもない。だからいつまでも昔に帰りたい。帰れるはずもない、安全な所へ帰りたくて、毎日が絶望で。早くこんなところから連れ出して欲しくて、安全な誰かが、大好きな君が、私のために頑張ってくれよ。いつも受け身でごめんね。楽しかったね。そんな自分勝手な余韻に浸るためだけに、私の自己満足のためだけに、中学時代の同級生達を一斉にインスタでフォローしてみた。何人か、何年かぶりに話してみたけど、当たり前のように皆変わっていて悲しいな。久々に会話してみて、昔の記憶がよぎってくる。外掃除、トイレ掃除、辛かったな。廊下にて雑巾掛けでレースをした。ご飯やカレーを人数分均等に分けるのがどうしても難しかった。合唱祭、実行委員長になった。放送委員で、お昼休みに放送をして、部活動に行って、意見を重ね合わせてビックリするくらい努力した。ショッピングモールでデートした。当時は無線イヤホンなんてなくて、有線イヤホンで、好きな人と1つのイヤホンで同じ音楽を聴きたかった。「聴く?」その一言が言えず、うずうずしていた。課題をチェックする、意味不明な係があったんだけど、宿題チェック係のプロだった私は、クラス名簿一覧の中で、誰がどこの位置にいるか完璧に把握していたので、もう1人の係の人が「高橋」とか教えてくれる1秒後にはもうチェックが入っていた完全に、プロだった。地元の団地で、祭りがあった。何度も好きな人を探して、一緒に回りたかったなあなんて思いながらも、近くに存在を感じているだけでとても満たされていたし充実していた。好きだった人と夏休みに図書館で勉強をした。クラスが同じで同じ課題が出てたので、一緒にとき、沢山の内容を教えてあげた。圧倒的に私の時間が無駄だったけれど、夏休みの勉強の中で1番楽しい時間だった。


今思い出しても、どう考えても、ここだけ。ここだけが私の安全地帯。そろそろ過去に縋るのをやめにしようか。人間って、過去が美化されてしまうんだって。だからその自動的に美化されアップデートされた過去に縋ってしまう。いや、違う。美化せずとも、確かに美しかったのだ。私の人生の中では、1番輝いていて、春になったら咲く桜だって、校庭の石ですら輝いていた。今はもう何にも残っていないのに、ひたすら脳裏に焼き付いている記憶を辿り、どうにか死ぬのを阻止している。美しかった頃の自分を思い出し、どうにか、生きる理由を探す。生きてていいんだと思えるように、こうやって、私は一生必死で、縋り付くように、なんて哀れなんだろうと感じながら生きていくんだろうな。

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