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本番が楽しみじゃない演奏家


学生時代の友達が言っていた言葉を
ふと思い出しました。


その友達は
今はもう演奏をしていませんが、


学生時代には

「いい演奏をする」
「才能がある」

とたくさんの人たちに
期待されていました。



その友達が
授業で先生が言っていた
言葉が印象に残っている
と言っていました。


それが
今回のタイトルにつながる

「本番が楽しみじゃないのに
演奏家になるのは変」

という言葉だったのです。
(記憶があいまいなので原文ママではなくこんなニュアンスの言葉だった、という感じです)



その言葉を聞いた彼女は

「本番を楽しみに思えていない
自分に気づいたんだ」

と言っていました。

私は?


この話は
何ヶ月か前の話なのですが

あれから一つの質問が
たまに私の頭の中を掠めます。


『私は本番が楽しみだろうか?』


この質問を
自分自身にしてみた時

今のところ、
答えは「No」です(笑)


あ、一応お伝えしておくと

「本番が楽しみじゃないのに
演奏家になるのは変」

という言葉が正解かどうか
という話ではありません。


それは、
その先生の考え方であり主張なので、
そこに正解も不正解もないと思います。

ただの先生の考え方で意見です。


で、

私は今のところ「No」なのですが、
それは『本番』というものの
捉え方によるのかもなぁ、と思っています。

『本番』って何だろう?


本番に対する
向かい方って案外一人一人
違うのかもしれません。

あとは同じ人でも
時期で違いそうです。

経験を積んでいったら
違う向き合い方になっていくのが
自然かもしれませんしね。


例えば、
私ひとりとってみても
今まで30年くらい(!?)
音楽と共に生きてきて、

本番との向き合い方は
変わってきたように思います。

少し振り返ってみましょう。


幼稚園の頃の
ピアノの発表会では
もう何を考えて弾いていたかは
覚えていませんが(笑)


小学5年生くらいの
ピアノの発表会では、

「集中!!」

と気合を入れて臨んでいました(笑)

先生や親に褒められたい
認められたい
という気持ちが大きかったと思います。


中学生の吹奏楽部では、

「演奏を楽しむって何だろう?」
「表現するって何だろう?」
「みんなと合わせるって楽しいけど難しい」

なんて「ぽい」ことを考えて
いたようにも思いますが、

まぁだいたいは
「コンクールメンバーになりたい」
「人より上手くなりたい」
「先生やコーチや友達に褒められたい」

なーんて気持ちの方が
断然大きかったのではないかと思います。

実際コンクールや文化祭での本番は
「楽しめた」というよりも
「よく分からないけど一生懸命やった」
という方がしっくりきます(笑)


高校からは音楽科に入り

・吹奏楽部
・日々の授業とレッスン
・発表会やおさらい会
・定期的なソロの試験

こんな場面で、、、
格段に演奏の機会が増えました。


ですが、
高校からの私は
見た目は普通だったと思いますが
気持ちの上でグレていた(反抗期)ので、

学校や先生たちやクラスメイトまでも
斜めから見て
毎日の7,5割を「チッ」という
気持ちで過ごしていたように思います(笑)


ソルフェージュなど能力によって
クラス分けもされていく授業もあって
最下位と一個上のクラスを
行き来していたこともあり、

ソルフェージュについての自信は
完全に失われていきました(笑)


今思えば
この時から

「音程がとれない」
「耳が悪い」
「人より音感がない」
「歌が下手」
「臨機応変な対応ができない」

そんな風な
自己認識ができてしまったように思います。

完全に萎縮してしまっていて、
それをその後の人生でも
引きずってしまっていました。

もったいなかったですね。


大学生の時は
高校時代のアレコレを
引きずっていたのに加えて
しょっぱなから

同期がみんな上手い!!

先輩はみんなすごい!!

先生は神!!

私だけ下手!!!

となってしまい、
人と比べては

「上手くなりたい」
「でもみんなに追いつけない」

常にその2つの葛藤の中にいる
そんな4年間でした。

苦しかったなああ。
と思いますが、

でも
大切なことをたくさんたくさん学んだ
4年間であったことは間違いありません。


この時には本番に対して

「評価される場」
「自分の価値が決まる場」
「そこでいかに練習してきたことを高い確率で出せるかどうか」

こーんな捉え方になってしまっていました。


こりゃー
楽しむどころではありません(笑)


毎回のレッスンも試験もおさらい会も
半分以上は拗ねた気持ちで
臨んでいましたね(笑)

変化の兆し

ここまで反抗期が続いてきましたが、

少し変化があったのは
海外の講習会に行ってみてからです。


大学を卒業した年の夏に
スペインの講習会に行ってみました。

初めての土地に
初めての言葉に
初めての人たちに
初めての音楽。

そこによく分からないけど
何となくいて演奏している、自分。


そしたら
なぜかクワイヤーの前で吹く
ソリストに選ばれたのです(笑)


大学を卒業し
「才能ないからもうやめようかな」
くらいに諦めモードな私でしたが、

初海外の講習会の最後の
クワイヤーコンサートで
ソリストに選ばれ、

「え?何で私が...?」

という心境。


たぶん先生たちは
「日本からきた生徒に良き経験を」
みたいな気持ちで選んだのかな〜
くらいに思っていましたが。




別日のソロのコンサートで、
「とりあえず今できる演奏ができたかな」
くらいの心境で舞台を降りたら

待ち構えていた先生に
「マリコブラボー!!ウンタラカンタラ(英語)!!」

と多分「素晴らしかった、よくやった!」的な
言葉を浴びせられて
両ほっぺをチュッチュされて(笑)

とりあえずビビりました(笑)

が、めちゃくちゃ嬉しかったのです。

演奏をしていて
ここまで喜ばれたり
褒められたりすることは
初めてだったと思うので、

初めて「認められた」という気持ちになれました。


クワイヤーのコンサートも無事に終わり、
あれは「楽しかった」と言えそうです。

そんな経験から
少しずつ自信がついていったように思います。


結論は、、、

こうして今までを思い返してみると
私の場合は「演奏は楽しい」し、

「あの時の本番は楽しめたか?」
だったら「Yes」の場面は
たくさんありそうです。


ですが、
やはり『本番が楽しみか?』という問いには
胸を張って「Yes!!」とは
まだまだ言えそうにありません(笑)


ただ、
今も演奏の現場で
貴重な経験を積ませてもらっている中で、
少しずつですが気持ちが柔らいで
自分を認めてこれている実感があります。


その変化とともに

・演奏する上での安心感
・共演者やお客さんとのつながり感
・演奏している自分素敵だと思えている自己肯定感

が育ちつつあります。



それらをこれからも
大切にしていきながら
私なりの『本番を楽しむ』を
その時々で感じ、
深めていきたいなと思いました。


では、今日はこのくらいで。

お読みいただきありがとうございました♪
また。

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