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今の時代にあえて「電話」の魔力を見直してみる
この記事は、私がワクワク系マーケティング実践会で学んだ事を参考に、自社のキャンプ場運営での取り組みや気付きをレポートにまとめたものです。実践会については以下の記事を参考にして下さい。
ワクワク系マーケティング実践会の情報誌Vol.294にこぶしの里、加藤さんの「予約客に事前TELをする」という事例が掲載されていました。また、先日の実践者Liveセッションでは浜田紙業、浜田さんが「HPを見たお客様へ電話を掛けて貰うよう働きかけている」と仰っていました。
どちらも「電話の良さ」に関する事例なのですが、私もちょうど似たような感想を持ったところだったのでレポートさせて頂きます。
かつて大勢いたスタッフがいなくなり、キャンプ場の受付に人を常駐させる事ができなくなりました。そこでお客様ご自身でスマートフォンを操作して頂いてチェックインできる仕組みにしてみたのですが、感触として好評3:普通5:不評2という具合でした。
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おそらくですが、過去に他施設で長時間待たされてうんざりした経験のある方は「絶賛」なのですが、待たされた事がないor待たされるのは苦にならないorそれより人との触れ合いを求めている、という方は(私の案内掲示がお粗末だったせいもあり)「ちょっとビックリした」「こんなのは初めてで戸惑った」「人気(ひとけ)が感じられなくて寂しい気がした」といったマイナスの印象を持たれたようです。
スタッフ常駐に戻した方がいいのか?と考えていた頃、とある用件をお伝えするために、チェックイン日の朝にお客様へ電話する機会がありました。その時ついでに「スタッフが外で作業していて受付が無人の場合がありますが、スマホでチェックインして入っておいて下さい。後で様子を見に伺いますので」と言ってしまったのです。
言った後で「しまった!言わない方が良かったか」と一瞬思ったのですが、お客様は「あー、はいはい。了解です。」「ところでお聞きしたいのですが薪は販売していますか?」「あと、夜は寒くないですか?」「何個も質問してすいません。少し早く着いても入れますか?」と質問がつらつらと出てきて、しかも和やかで親近感のある口調なのです。
夕方になって、いつものようにそのお客様のところへ挨拶に伺ったのですが、妙に馴れ馴れしく(失礼!)接してくれました。視線が鋭くない。口角が上がり気味。目線を合わせてくれる。向こうから自己開示・・などなど。一体何が起こっているんだ??
初めてのお客様に声掛けすると何となくぎこちないというか、笑顔であってもどこかに警戒の色が見え隠れするのが普通です。前述のような馴れ馴れしさ(失礼!)で会話できるようになるには、少なくとも2、3回リピートして頂く必要があるのですが、どうやら当日朝に電話で会話しておく事で、まるで何度目かの再会を果たしたような感覚になるようなのです。これは素晴らしい!(笑)
どうしてこんな事が起こるのか。改めて「電話をかけること」の効果効能を考えてみました。
メールよりも感情が伝わりやすい。例えば電話だと楽し気に「お気を付けてお越し下さいね~♪」と話す事もできますが、メールでは「お気を付けてお越し下さい」と書かざるを得ません(フランクすぎると失礼なので)。
メールよりも人となりが伝わりやすい。「お気を付けてお越し下さいね~♪」という言い方や声のトーンなどで、本当にウェルカムで気さくな人柄なのか、業務上言っているだけなのか伝わります(マイナスの情報も伝わってしまいます!)。
反対にzoomのような画面越しの対話だとどうでしょうか?電話より情報量が多いので一見良いような気もしますが、少々踏み込みすぎな気がします。服装もパジャマという訳にはいきませんし、女性ならお化粧も気になります。知り合いならまだしも面識のないお客様にとっては居心地が悪くなってしまうでしょう。
「当日の朝」というタイミングも結構絶妙だったと思っています。キャンプに対して一番頭がフル回転している時間帯で、「忘れ物はないか」「やっておくべき事があれば今ならまだ間に合う」「わざわざ聞くまででもないが、実は気になっている事がいくつかある」。
そんなタイミングで施設から電話が掛かってくれば、まさに渡りに船。「ついでにちょっと聞きたい事があるのですが」という質問に繋がるという訳です。それで不安が解消されれば「ピンチを救ってくれたヒーロー」のごとく「頼りになるわ~」と一瞬で心の距離が縮まり、絆が生まれるのかもしれません。これは3日前だとまだ早すぎて、現地に到着してからの声掛けでは遅すぎます。
キャンプ場は現在オフシーズンなので予約件数も少ないです。実験的に「当日朝電話」を全てのお客様にかけるようにしているのですが、セルフチェックインをして貰ってもお客様の心象は悪くないようです。「あー、これが電話で言ってたヤツね。OKOK」という感じでしょうか。夕方に声掛けしても以前より緊張感が薄らいだ気がします。さらにお客様は「スタッフは私の事を気にかけてくれている」と感じて下さっており、絆づくりにも一役買ってくれています。
冒頭の加藤さんや浜田さんは、おそらく直感的にこういった効果を察知して業務に取り入れておられるのだと思います。「業務を効率化するため」という観点では見落とされがちですが、「絆を育むため」ひいては「長期的なベネフィットを得るため」であれば、電話のもたらす効果やその使い方には、今一度見直してみる価値がありそうです。