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映画「エスター・ファーストキル」を観た感想(ネタバレあり)

冬が似合う女エスター

待ちわびていたエスターの続編…というか前日譚を鑑賞。「ハンニバル・ライジング」のレクター博士もそうだったけれど、前日譚ものの続編というのはキャラクターに強い魅力がないと成立しない。今回もエスターの強烈な個性が充分にアピールされていて、私には満足できる内容だった。

夏服だったら困るだろうなあ…。

映画は雪景色のエストニア郊外から始まる。やはり、「エスター」の舞台には冬が似合う。暗い雰囲気の演出もそうだし、そもそもエスターの衣装が完全に冬向き。ベロアのリボン、首と手首につけたチョーカー、ベレー帽、前作で印象的だったフリフリのワンピースなど、どれも生地が重厚で重たい。加えて、イザベル・ファーマンの印象的な黒く茂った眉、豊かなブルネットの髪とダークな瞳を考えると、舞台がカリフォルニアというわけにはいかないのだろう。というか、常夏にエスターはどんなファッションを見せてくれるのかが気になる。色々と隠さなければならないものもあるし。

ふたりの毒母

(前作のネタバレも含むので注意)
前作は最後にあっと驚く秘密が明かされるが、今回も中盤にまさかのサプライズがあった。感想としては、前作のケイトも本作のトリシアも、あまり良い母親ではないし、女友達としても関わりたくないタイプだった。
前作のケイトは完全にエスターの被害者の視点で描かれているので、応援したくなるかと思いきや、案外そうでもない。ヒステリックで感情的、愚痴っぽい。姑の前でもキッチンの扉を脚で蹴って閉める、ケーキは取り分けずに立ち食いで、イエール大学でピアノを教えていた才媛にはとても見えない。
エスターが実は大人の女であるがゆえに、母親と娘とはいっても本質は女同士。中盤以降からは女ならなんとなくわかる、嫌な空気が伝わってくる。ちなみにパパと弟は何もわからないのは当たり前だし、末娘のマックスは小さいので女ではなく子どもだ。ケイトのような性格の母親が家にいた場合、仮にエスターではない女の子だとしても、その子が女として成長した時には上手くいかないのではという気がする。

発狂するシーンが多いケイトさん。実母だとしても嫌だ。

本作の母親役、トリシアも同様に実母としても娘に対して最悪な対応をした。反対に息子に対しては異常なほどのベタ甘やかし。ケイトにしても、トリシアにしても、家の「癌」は母親であるこの人たちなのでは…。二作連続で(娘にとっては)「問題となる母親」が描かれていたのが印象的だった。同時に、父親はどちらもイケメンだけれど繊細でメンタルは脆弱なタイプなところも共通している。

兄役のマシュー・アーロン・フィンラン君は今後もクズのイケメン役が似合いそう。

撮影の技術がすごい

そもそも、成長した子役を当時より更に幼い設定で描こうとするのがすごい!でも、意外にも大きな違和感はなかった。(カムカムエブリバディで深津絵里が高校生としてキャッチボールをしていたのと同じぐらい)それよりも、イザベル・ファーマン以外の女優がエスターを演じていたら、もっと違和感があったかもしれない…と思うぐらいだった。
エスターの背を小さく見せるために周りの人間は厚底靴を履いたり、後ろから撮影するシーンでは子役を使ったり、様々な工夫があったようだ。

身長差が絶妙!イザベル・ファーマンが童顔なこともあって奇跡のような「前日譚」が完成した。

エスターの魂はどこに向かうのか

第一作目で「死んだ」ということになっているので、これ以上未来に向けての「エスター」続編は望めないのかもしれない。できれば、もう一作くらいはスピンオフでもいいから観たい。結局、「大人の男に愛される」という本懐を遂げられずに死んでしまったエスター。怖いのだけれどその境遇を思うとあまりに哀しすぎる。

そういえば、「エスター」シリーズにはいろいろな車が出てくるので面白かった。一作目はレクサス、二作目はレンジローバー。どちらも降雪地帯向きなのだろうか。エスターが小さな身体でレンジローバーで爆走するシーンはこの映画の見どころのひとつだと思う。


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