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オバの過ち
春は花見で炭酸!
夏は花火と炭酸!
秋は露天風呂で炭酸!
冬は暖炉で炭酸!(理想。現実はヒーター)
アサヒさんにゴマをするわけではないが、炭酸好きの私にとって、三ツ矢サイダー・カルピスソーダ・ドデカミン・メロンクリームソーダは一年に何度も一巡する大好きな炭酸四天王だ。
甥っ子が幼い頃、ふたりで散歩に出かけると甥っ子にはパックのジュースを買い与え、私は炭酸を満喫していた。
やがて彼は成長し、言葉を話すようになる。
「なーん、のんでるの?」とかわいい顔で聞く。
「炭酸だよ」
「りっくんものめゆ?」
「りっくんは小さいから無理だよ。炭酸は辛いから」。
何度かこのやり取りをするうち、甥っ子は炭酸への憧れが抑えきれなくなったらしい。
ある日、いつものようにパックのジュースを買おうとしたら「いやだ」と言う。
「りっくん、炭酸がいい」
3歳にもなると意志が強くて敵わない。
とうとう根負けして、350mlのペットボトルをふたりで半分こすることにした。
甥っ子は言葉の如く目を白黒させながらも
「りっくん、これ のめゆ」と繰り返し
ひと口飲んでは目を白黒させていた。
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甥っ子は今でも炭酸が大好きで、家に来ると炭酸をねだる。
氷をガラガラとコップいっぱいに入れて飲む炭酸。甥っ子と私共通の好きな飲み方だ。
次々と浮き上がる炭酸の泡を眺める幸せ。
いつまでも見てられるわ、とうっとりする。
横で甥っ子はとっくにコップを空にして、2杯目に手を出す。
「もっと味わって飲んだら?」という私に
「炭酸は時間勝負だよ。早く飲んだほうがおいしいのに」と口答えする。
「今日はこれで最後にする」と言ってたのに、あっさり反故にして、何度炭酸を追加したことか。
「りっくんの“今日はもう炭酸飲まない”と沖縄の天気予報は当てにならない」
これは私が作った造語。
甥っ子を魅惑の炭酸道へ連れ込んだのは他ならぬ私。
約束を守らない甥っ子に「あの時、飲ませなかったらよかったかね」と言いながらも、いっしょに炭酸を飲む幸せを噛みしめている。
甥っ子はもう、炭酸を飲んでも目を白黒させない。
私は初めて炭酸を飲んだ時の甥っ子をずっと覚えておく。
ちなみに甥っ子はメロンクリームソーダが大好き。