猫に小判、宿猫にやちむん
那覇の常宿には猫がいる。
私は宿猫ビリーにメロメロだ。
ビリーを探して毎朝彷徨う姿を見かねて、とうとう宿のスタッフさんが「ビリーは◯◯にいたよ」と聞かずとも居場所を教えてくれるようになった。
恥ずかしいが、ありがたい。
毎回ビリーのために高級猫ごはんを買っていく。
旅の前にドラッグストアでズラリと並ぶ猫ごはんを眺めると幸せで胸がいっぱいになる。
その昔、甥っ子がトミカ大好きだった時期にプレゼントするトミカを選んでいたワクワクと全く同じ。
それ程ビリーを溺愛している。
今回は新たなる「夢」を抱いて沖縄の地を踏んだ。
ビリーのためにごはん皿を購入するのだ。
常宿にしている場所はやちむん(陶磁器:沖縄の伝統工芸品のひとつ)の窯元がたくさんある。
やはり地元の猫には地元のお皿で食べてもらいたい。私のこだわりポイントだ。
小さめの皿を見て回る。
赤絵というタイプのやちむんが好きなので、赤絵に絞ってさがした。
ビリーは舌でごはんを食べるので、どうしても端に端にとごはんが追いやられてしまう。
平らだとそのまま場外にこぼれてしまうので、傾斜のあるものがいいと思った。
丸く囲われると舐めづらかろうと思い、傾斜にはかなりこだわった。
次々と赤絵の皿を手に取り、気難しそうな表情をして眺め回す中年女性。
端から見ると目利きデキる奴に見えただろうか?
猫ちゃんのご飯皿探し中です♪と口にしたらガクッとズッコケたかもしれない。
なかなかいい皿を見つけ、ついでにシーサーの写真集も見つけ、ご機嫌で店を後にした。
結果は大成功。
ビリーは殆どこぼすことなく、ご飯を上手に食べた。
やはり自然な傾斜が功を奏したようだ。よっしゃ。
宿のスタッフさんにビリーのためにやちむん皿を買ったと話すと絶句していた。
“猫のためにそんな、するーーーー??”と顔に書いてあった。
母に報告すると“正に猫に小判”と返事が来た。
それでいいのだ。
明日もやちむん皿と高級猫ごはんを持ってビリーを探す。
1日一度はビリーの気に入らないことをしでかして噛まれている。腕には引っ掻き傷もある。
それでいいのだ。