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ダヤンのケースの再来なるか? マカピーの日々 ♯1540

マカピーです。
ハナさんの移動クリニックが続きます。

20㎞程離れた丘陵地のロスリンの家の一角がかつてのハナさんのクリニックだったのでそこに人が集まることになっています。

マカピーはハナさんを送り届けるドライバー役ですから危険を冒せません。無理をしない範囲で患者さんを待たせないように走るのですが、毎日出発前になると何かしら問題が起こるのでした。

その朝はバイクの荷台が壊れていたのです。

そうです、左側の破断したフレームをつなぎ合わせたのも束の間、今度は左側が割れてしまったのです。

隣の家のジョンが「荷物のボックスが重すぎるんだよ」といいます。


あああ、こっちも割れちゃったよ!

確かにボックスそのものが重いうえにその中にハナさんの薬バッグを入れると振動の度にフレームに負担がかかるのでした。

仕方が無いのでボックスを外し、さらにシートを上げてフレームを外しましたがアルミでなく鋳物なので溶接が出来ないのです。

ロスリンの旦那のインサンマロンに頼んでステンレスで同じような形に作り上げてもらおうかという事になりましたが、フレディが「オレが直してくる」と持って行ってしまったので、修理は後日という事になりました。

今日のところは薬バッグをマカピーのバッグに入れてハナさんが背負う事になりました。

そのまま背負うと相当重いのでストラップを伸ばしてシートに乗せるような形にしてハナさんの負担を軽くします。

午前は光があふれる夏のドライブを楽しむことが出来ますが、毎日のように午後になると天気が崩れるのでちょっと心配でした。

さて、何とか午前11時前にはロスリンの家に到着した時には10名ほどの人が待っていました。


フレディが朝から農薬をまいてます!

来た順番にロスリンが名前を書いているのでその順番に診て行きますが、床は土間で待つ人もハンモックにまたがったり長椅子にいたりと思い思いの格好で待ってます。

その中に親子三人組がいてどうやら脱力している女性が患者である事はマカピーにも分かりました。

5歳くらいの子供が近くにいるのですが、体が弛緩してしまって殆ど反応が無い状況です。

返事はかすかな声でしますから、脳溢血のようなものではないようです。

ハナさんは一度診察した後で、旦那氏に今後の治療方針を伝えてブロアー(理学療法器機)をすることにしました。

マカピーが昼寝していた横に寝かされた若い奥さんにハナさんは汗びっしょりになってブローをします。

ブローによっては体からの反応がピクンピクンとあるので彼女の神経はちゃんと反応している事が分かりました。

「体はちゃんと反応しているから、後はちゃんとした薬を投与できれば一気によくなるわ。あなた何歳なの? 23歳・・・偶然ね、ダヤンと同じだわ。私の患者のダヤンもね歩行困難になって義足のおとうさんが彼女を抱えてここにやって来たのよ。その時彼女は病院から結核だって言われたの。それが今では子供と遊んでいるのよ。昨日も彼女にあって来たわ。あなたもそうなるのよ!」

病院から右半身に水が溜まっているって言われて、最後にはハナさんを頼って来た若い奥さんを励まします。


西の空を覆い始めた雷雲

そして旦那さんに向かってハナさんはきっぱり言います。

「後はお金を準備するのよね。私も注文しなくちゃいけないけどその薬は特別で一本6,000ペソするの。それを一週間連続投与するので30,000ペソは必要になるわね」

「先生、もう我が家にはお金がありません。オートバイを売ってお金を作るしかないです」

「そう、お金が準備出来たら電話して。直ぐに薬を注文するから。私たちもここに長く居ないから早く決めてね」

彼らが帰って行っても、まだ患者さんがたくさん残っています。

結局ハナさんが最後の患者を診終わったのは午後7時になっていました。

その間彼女は昼食も取らずずっと働き続けていました。

ようやくロスリンの心づくしの夕食を家族とともに食べていると、雷を伴った激しい雨が降り始め、水しぶきが顔にかかるようになりました。

もう、こうなては焦って帰っても仕方ありません。

「待てば海路の日和あり」

ご飯をゆっくり食べていると足元に猫、犬、ニワトリ、バリケン(アヒルの一種)が残飯をねだって足の踏み場が無くなるのを面白く眺めていました。

やがて雨が小降りになったので意を決してオートバイに乗って戻る事にしました。

しかし近道ではなく、安全をとって道路のしっかりした遠回りで帰ることにしたのです。

近道の場合、未舗装路が沢山あり一番怖いのは仮設の橋で欄干もなしの鉄板で滑落すると濁流に飲み込まれてドザエモン間違いなしの難所を抱えているので時間が二倍かかっても遠回りを選択しました!

ところがヘルメットのシールドを下すと視界が落ちて道路状態が分かりにくいのです。

それで今度はシールドを上げると雨滴やヘッドライトに寄って来た虫が目に入ってバイクを路肩に停めて目から虫を出すのも大変です。

結局シールドを半分降ろして誤魔化しながらそろそろ行くので時速30㎞ほどにしかなりません。

やっとハリー叔父宅に到着したのは午後9時近くなって、ハナさんは治療でマカピーは運転で疲れました。

出かけに干して行った洗濯物も隣の家のジェニファーが雨に当たる前に取り込んでいてくれて、ハリー叔父も既に食事をとった後でした。


明日も気持ちよく晴れるかしら?

ハナさんは叔父に今日の患者の話をしていましたが、マカピーの方に向いてこう言いました。

「あの若い奥さんだけど、両手首に沢山の切り傷があったわ。幾度も自殺をはかったんですって。子供を出産してから発病してしまってこれまで辛い思いをしてきたのね」

「ダヤンのケースとほとんど同じなの。うまく回復するといいわね」

「・・・本当にそうだね。彼女が自分の子供をしっかり抱ける日が来ると良いね!」

マカピーでした。
最後までお読みいただき感謝します。更なる奇跡を呼べるか?



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