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もはや「適正技術」に出番はないのか? マカピーの日々 ♯1525

マカピーです。
みなさん「適正技術」って聞いた事ありますか?

スタードーム作成に必要な「竹ひご」つくりで思い出したのです。

かつてマカピーは青年海外協力隊員としてマレーシアのサバ州に行って、地元の人たちと「村落開発」による生計向上を目指すプロジェクトに関わったことは、以前お話したと思います。

つまり企業が目指すような最先端技術を導入して「村落開発」するのではなく、村人が本来持っている技術能力に、新しい技術が加わる事で村人の生活レベルが良くなることを目的に活動したのです。

つまり、協力隊員が着任した村で活動する事で、大きな投資が無くてもそれまでより良い農業生産物や生活レベル向上を目指したのです!

そこでは商品野菜栽培、食鳥飼育、衛生保健指導、簡易水道敷設などの簡易土木事業を各隊員が中心となって村人と共同作業をしたのでした。

マカピーの専門は「家畜飼育」ということで畜産に関わったのですが、食鳥飼育などを手掛ける一方で、次第に村レベルで求められる「適正技術」とは何なのかを知りたくなりました。


コンクリートミックスする現場

またそれが出来そうに思えたのは、マカピー自身が群馬の農村地帯出身で農業の技術革新の様子を身をもって経験してきていたからです。

かつては、鍬や鋤といった道具を使い手作業での耕作だったのが、エンジンの付いた耕作機(Tiller)が導入されました。

それは米国式の大型のトラクターをとりまわせる広い圃場が存在していなかったからです。

やがて全国で農地構造改善事業などが進められ土地改良や区画整理が行われ灌漑施設などが整備されると大型トラクターの導入も可能になり田植え機なども登場しました。

当時のマレーシア国サバ州で求められている適正な技術レベルは、日本の戦後おそらく1960年代くらいのものであったようです。

実際にマカピー達の着任した村には「電気」「水道」「電話」がありませんでした。

地方隊員ということで、ホンダの50㏄オートバイが協力隊事務所から、車は配属先の役所からはオンボロのランドローバーが貸与されていました。

マカピー達も電気や水道のない村の中で自炊生活をしながら、村人に近い生活をしながら、どんな技術が求められるのか考えないわけには行かなかったのです。


水牛の荷車(これも適正技術)

そんな中でお隣のインドネシアのバンドン工科大学の資料を見てマカピーが驚いたのは「鉄筋コンクリート造り」の構造ではなく「竹筋コンクリート」と言うものがある事でした。

しかも鉄筋のコンクリート比べても強度もそれほど変わらないというのです。

皆さん、「竹筋」て想像できますか?

ご存知の方もいるかと思いますが、日本の古い家屋では『土塀』と言うのがありましたね。

実は、あれってただ練った土を塗りつけているのではありません。

強度を増すために粘土中に藁を切って入れたり、壁内に支柱となる竹ひごを縦横に渡し、更に荒縄(稲ワラで出来たロープ)を巻いて土塀が崩れるのを防いでいたのです。

マカピーも実際に古い家を壊すのを手伝った機会がありました。

その土壁を大きな木槌で叩き崩すのですが、上手に出来ている土壁は簡単に崩れてくれません。

そして驚くことに土の中から出て来た竹ひごや荒縄が泥の中で酸化せず元の緑色を残して存在していたのです。

自然材料ってスゴイ潜在能力を持っているんですよ!


灌漑用水路もコンクリート構造物ですね

一方の鉄筋の危ないのはセメントを混ぜる水や砂に塩分が残っていると腐食して、やがて酸化した鉄筋が膨張してコンクリートが割れてしまうのです。

日本でも戦後の高度経済成長時代多くの建築構造物が海砂を利用して、その塩抜きが十分出来なかったので鉄筋の腐食が問題になってたのを思い出します。

ちょっと話がそれてしまいました。

「竹筋コンクリート」の利用についての話に戻しますね。

それでインドネシアで紹介されていた構造物は何かと言うと、『水タンク』でした。

マカピー達が派遣された村のように、水道が引かれていない村では浅井戸を掘って水を確保する必要があります。

もちろん雨季の頃に屋根の水をためる事をしていましたがその量はたかが知れていました。

一方でトイレが未整備で高床式の家屋から垂れ流し状態に近かったりすると浅井戸が汚染されている可能性もあったのです。

もちろん、野菜栽培や家畜飼育用の水としては十分でしたが人が口にするには衛生的に問題があったのです。

そこで家の屋根の雨樋の水を貯蔵タンクに集めて、飲料水や煮炊きに利用することが検討されました。

それに乾季になると、その浅井戸さえも枯れ気味になり水不足が深刻化する事があったのです。


除草剤散布の様子

マカピー達の派遣されたルングス族の村では伝統的なルマ・パンジャン(Rumah Panjang文字通り長屋で、規模により20戸ほどが暮らす形態)があったのでその長い屋根を利用した水を集める事で共同簡易水道が出来そうです。

本来の村人が手作りするルマ・パンジャンは茅葺屋根で壁も竹を割ったものが使用されるなどでした。

ところが、選挙での投票の見返りなのか多くの村が州政府による画一的な製材を使用した立派なルマ・パンジャンが出来ていたのです。

マカピーはその長い屋根の雨水をタンクに溜めて再利用を提案したのです。

しかし雨水タンクが実現するのはマカピーのいた村とは違う村でした。

そこの村には土木建築士の隊員がいたからで、彼らは竹筋ではなく普通の鉄筋コンクリートでの貯水タンクを作ったのでした。

衛生的な「雨水タンク」はその後の村の生活に必要不可欠な存在となって行きました。

今年、同期隊員だったヒラチンが来て、久しぶりにそれぞれが赴任した村を訪問したのです。

ヒラチンの村に行くと、村のルマパンジャンがある入口に昔みんなで作った「雨水タンク」がありヒラチンが「おお、水タンクがまだあるんだ!」って喜んでいました。

ところが、この後マカピー達は村長に会いに行き挨拶した後で、昔一緒に働いた村人に会い近くのルマパンジャンに行く事にしました。

その際に道路際にショッキングなものを見かけました。

「あれ、これって水のメーターなの?」


こ、これは水道メーターだよ!

「うん、市の水がこの村にも来るようになったんだ」

「じゃあ、さっきの雨水タンクは使っていないってこと?」

「ああ、何年か前にルマパンジャンも新しく造り替えられて・・・。雨水を飲まなくて済むようになったんだよ。そう、皆さんがいた頃とはずいぶんと変わったんだ」

そうなんです。雨水タンクはその役目を終えていたのでした。

適正技術の役目を終えた事例ともいえる光景でした。


そういえば、多くの村人が中古車ながら自家用車を持ってましたものね!(この写真は参考)

ところで、マカピーは将来自分の家づくりする際に、実現しなかった竹筋コンクリートを手作りして利用したいと考えています。

一般のコンクリート構造物の耐用年数は50年と言われ、竹筋コンクリートも同じくらい耐久性があるそうですから、自分の家では十分だと思っています。

もっとも、全ての人工物は寿命が尽きれば壊れ、風化していずれ長い目で見れば地上に存在しなくなるわけです。

それって、人間も同じなんでしょうけどね(笑)

マカピーでした。
最後までお読みいただき感謝します。何がその土地に適正なのか考えて見ましょう!

#創作大賞2024 #エッセイ部門

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