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「ナチュラリスト」になりたかった! マカピーの日々 #1094
マカピーです。
福岡伸一さんの『ナチュラリスト』(新潮社)を読んだら思い出したんです!
本書にあるように、図鑑の持つ不思議な魅力に取りつかれ、やがて探検家となり動植物の新種発見と命名者の記載を夢見る子供って、世の中に沢山いたと思います。
マカピーも、かつてはその「はしくれ」だったなあ、と思い出させてくれる著作でした。
もっともマカピーの場合は福岡さんのような記憶力もこらえ性もなく、いつまでたっても代表的な動植物や昆虫の名前さえも覚えられなかったので、いつしか図鑑をたまに見るアウトサイダー化していたんですね。
どうやら、マカピーはナチュラリスト向きではなかったのかも知れません。
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協力隊でマレーシアに派遣された際に、一番目に高いキナバル山(4095m)も登頂しましたが、2番目のトゥルスマディ山にも登ったのは、本物の植物学者だった協力隊員キタヤマさんが誘ってくれたからです。
キタヤマさんは麓の村人を3人も雇って道なき道を行くのですが、ヤマビルには喰われるし、増水した川を渡るのに大木を倒して渡るなど経験させてくれた思い出深い旅でした。
もっとも彼の目的は登頂そのものでなく、地域の植物分布図を作成するための踏査だったのです。
ですから彼は雨の悪天候の中でも、外に出て周辺の植生についてラテン語の植物名を大声で言うと、テントの中で仲間のアベさんに書き取りをする作業を繰り返していました。
今であればICレコーダーなどの録音媒体があったでしょうし、そもそもスマホですべて撮影も記録も可能だったでしょうね。
当時は、かなりアナログな世界だったんです。
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さて、福岡さんは多くの少年少女を魅了した『ドリトル先生』の話に戻ります。
著者であるヒュー・ロフティングさんはもともと鉄道技師だったそうですが、戦地から子供にあてて書いた手紙がもとで、実に面白いキャラクターである動物と会話できる「ドリトル先生」を生むことになります。
そして作品の中で語り部となるスタビンズ少年を通じてのドリトル先生の冒険にマカピーも幼い頃ワクワクして読んだ覚えがあります。
ドリトル先生の事を日本語に翻訳した井伏鱒二さんは「博物学者」していますが福岡さんは、本来の「ナチュラリスト」として敬愛を持って語ってくれるのでした。
マカピーがすごいなあって思うのは架空の町パドルビーを探しに英国のブリストル周辺を調べるのですが、ロフティングさんの挿絵とほぼ同じ風景の中で、港を見下ろす高台で脚をブラブラさせる福岡さんのなんと幸せそうなこと!
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こんな旅ができるとは、ものすごく作品を読み込んだ人でなければできません!
だから1920年のシリーズ開始をした作者にこうして近づくことが可能だったのでしょうね。
こんな素敵な話を、英国や米国の今時の少年少女は知らないという事で福岡さんはショックを覚えます。
そして、戦後間もない頃の井伏鱒二さんの翻訳とは一味違ったドリトル先生のを発表するのでした。
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作中に出てくる阿川佐和子さんとの対談では互いに「名訳」に挑戦するお話の背景があったことを伺うにつけ、とても不思議な縁を感じるのでした。
さっそく、マカピーは早速図書館へ行って新訳を楽しむことにしたんです。
マカピーは福岡さんのような「ナチュラリスト」になれなかったけど、こうして自然史に興味を持たせてくれたドリトル先生をこんなにも愛する人による語りで読み返せる幸せを感じています。
マカピーでした。
最後までお読みいただき感謝します。いいものはいつの時代だって良い!
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