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叶わなかった歌手になる夢が、分解すると意外と叶っていた話


ずっとずっと、歌手になりたかった。


大観衆の前でたった一人スポットライトを浴びて、魂を込めて曲を歌い上げたかった。

自分の歌で、メッセージで、誰かの心を震わせられたらどんなに幸せだろう。

そして、鳴り止まない拍手喝采。涙する人たち。


でも、20代になって気がついてしまった。

自分は歌が上手くないってことに。。

歌は「天職」ではないってことに。。。


いや、ずっと知っていたけど、怖くて認めてこなかった。向き合ってこなかったんです。

向き合うどころか、自信がなさすぎてその想いを公言したことすらなかった。人前で一人で一曲通して歌えたことなどなかった。

カラオケに行っても、人から何か言われるのが怖くてそそくさと自分で曲を止めた。二番まで決して歌われることのない可哀想な僕のレパートリー。

誰にも知られない場所でひっそり練習を繰り返しては落ち込み、落ち込んでは練習し、そしてまた落ち込む。

そしていつだろう、その夢を、人知れず無かったことにしてしまった。


でもね、あれから20年くらい経った今、その叶わなかった夢について思うことがあるんです。

実は、意外と叶っているんじゃないかって。


僕は今、企業向けの研修講師として働いている。年間150日以上、受講者の前に立ってビジネススキルの修得をサポートしている。

ときには、まれにだけど、500人を超える聴衆を前にステージに上がり、ひとりスポットライトを浴びながら何時間も話すことさえある。

歌声ではないけれど、教える声を褒めてもらえることがある。「声が柔らかくて、聴きやすくて、研修内容がスーッと入ってきました」って。

メロディに載せてはいないけれど、話し方を褒めてもらえることがある。「話しに引き込まれました」って。

歌詞として書き起こしたわけではないけれど、自分の経験をストーリーとして話すとき、それによって励まされたと言ってもらえることがある。


歌手という「職業」にとらわれると、夢は一つも叶っていないし、かすりもしていないんだけど、

歌手という夢を「分解」すると、実は叶えたかったことはほとんど全て叶っているのです。


歌手という職業はあくまでも「手段」であって、それを通じて実現したいことがその先にあった。

それは、「自分の内から出る声や言葉を使って人を励ましたい」ということ。

そして、今それを毎日叶えられている。本当に、幸せな日々。


これって、実に奇跡的なことだと思う。

でも、奇跡が起きるには理由があったようにも思う。


思い返すとこの20年間、天職を探し求めて自分なりにあらゆることをやってきた。その中でも、奇跡を呼び込んだ2つの行動が見えてきた。



奇跡だけど、奇跡じゃなかった!(ジブリ風)

一つ目は、、、


① 「好きなこと」を見つけるだけでなく、「なぜ」それが好きなのかを考え続ける


これによって「夢」というラベルの下に潜む自分の「情熱」に気がつくことができる。「夢」そのものよりも普遍的で、自分の内側から湧いてくるようなもの。

僕の場合、歌うことは下手だったけど言いようのないくらい好きだった。なぜだろう?

  • 小学校低学年の時から歌を聴くことの虜になり、ラジカセから流れてくる歌声が自分の心の友だったから(いつも布団に潜ってはラジカセをいじっていた)

  • 自分も誰かに「寄り添いたい」「励ましたい」という説明できない願望があるから

  • 内向的な性格で人付き合いが苦手だけど、歌にはメッセージを込められるから

  • 自分の声を使って直接的に気持ちを表現できるから

好きな理由を挙げてみると、歌手というのはそれを叶えるための手段であることに気がつく。

そして4つのうち3つは、実は歌手ではなく別の仕事でも叶えられるものだとわかる。

そしてそれが、二つ目の行動につながっていく。


② 「好きなこと」を追い求めることは諦めても、「好きな理由」を追い求めることは決してやめない


社会人になってビジネスの世界に飛び込んでからも、「好きな理由」に挙げたことが実現できる仕事は何だろうかってずっと考えてきた。

だからこそ、就職氷河期に就活戦線をくぐり抜けて入社した会社を一年で飛び出したり、当時としては多めに転職を経験したりした。当然、周りからは批判されたりもしたが、探究をやめなかった

そして長年の紆余曲折と試行錯誤の末に、研修講師という「天職」と呼べる仕事にたどり着くことができた。

来る日も来る日も「好きな理由」を仕事で表現できていて、言葉にできない喜びを感じている。

ときどき、歌手になりたかったことを思い出して苦笑いをすることもあるけど、歌手でない自分を残念がってはいない。笑い飛ばすことができている。


「好きなことを仕事に」は誰しもが憧れるワンフレーズなんだけど、、、


直接的にそれが叶えられる人なんてほんの一握りどころか、ほんのひとつまみ程度だと思う。


自分には才能がないんだって受け入れなきゃいけない瞬間は、目を背けたくなるほど怖いもの。

でも、「好き」や「夢」の下に隠れている「好きな理由」までを諦める必要なんて、全然ないはず。

「職業」なんて時代によって移り変わっていく。歌手も研修講師も、10年後には消滅している仕事かもしれない。

でも「好きな理由」を実現できる仕事を追い続けたら、ずっと「天職」を手にし続けられる。仕事を通じて幸せを感じることができる。

結局のところ、それが幸せなキャリアなんじゃないかって思う。

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