春は方舟
武藤 寛和
はいとうん、混ざる感じの距離感であなたのことを何も知りたい
性格が出るね鞄の汚さに、言われてももうくしゃくしゃの紙
昼、鳥は井戸水を浴びにやってくる 寂しくないは嘘にきこえる
クレヨンで塗りつぶすようにペタペタと春が迫ってきて揉みくちゃだ
タンポポの花を撮ろうと立ち止まり歩いたままの人を置いてく
原チャリはどうしてたっていなたくて君が乗ったってほら、やっぱやだ
生きて生きて生きて生きて生きて生き、あなたに会える 逆光の山
ずっと Have a nice day だよ最終の遊覧船に間に合わんでも
浴槽を君は出てって、その分の重さに膝を見つめてしまう
人魚が泡になってしまうのって分かる。君は時々遠くを見てる
月が降るみてェに生まれた新生児だったんでしょう誰でもばかだ
天の川銀河を思って目を閉じる 眩しくっても眠れるよ、そら。
爪たちが湯引きみたいに剥がれてく何にもできなくなる春の夢
ゆったりと風に翻るカーテンが君にかかれば羽衣だった
裏返った傘は彼岸花が咲いたみたいで、間違えてばっかりだ
桜から花弁以外も落ちてくる死ぬとこ全部見せつけてくる
点滅の青信号に小走りな僕らは蛾だね轢かれないでね
花筏 新幹線はゆっくりと少し追わせるような加速で
折り紙のように燕は空を舞う長続きする恋愛ってなに
集合はいつでもよくてそれまでの日々を話せるままでいるなら
もし鳩になったら桜の花びらを食ってピンクでいるからさ見つけてよ
アゲじゃんね、君が遠くの街にいてハートのマグネネイルしている
バチイケな写真ばかりのアルバムに燕尾服を着たくなってくる
来週は君も休みということで、桜の接写をたくさん撮った
昏れなずむ若さがあんま分かんない 桜花たちに短い歴史
春はとっくに終わっちゃいました