自分の価値観で突き進むことを教えて下さったおばさま(2019年 50歳)
新たまねぎの季節。スーパーにて、ゴロゴロと大量に積まれたバラ売りの山がふと目に留まった。
ハラリとはだけた黄金色の薄皮の下で輝くツヤツヤお肌は、見るからに瑞々しくて美味しそう。
お値段は、当時1個48円。大きなものを選べば、かなりお得感があった。
……まあ、本日の買い物リストにはないが、これだけ質の良いもの。買っておいて損はないだろう。
私はウキウキといくつかを手に取り、品定めを開始した。
そんな私の横顔をチラと見たのは、先客のおばさま。出し抜けにおっしゃった。
「これ、昨日より10円高いわよ!昨日は38円だった!」
その語気の強さに、一種の警告性を感じた私。あっさり玉ねぎを手放した。
そして、別な売り場で必要な買い物を済ませ帰宅したのだった……。
荷物を玄関にドサリと置くと、呪縛が解けたように我に返った。
「……いや、よく考えると10円の差じゃないか。しかも、私は昨日の玉ねぎを知らない。もしかしたら質が違ったかも……。そんでもって、次回はもっと高くなっているかも。もし、急遽必要になってその状況に直面したら尚更ショック。時間と労力も無駄だ……」
きっとこれまで、他にもうっかり人の価値観に流された選択をしたこともあるんだろうな……。これからは自分がチャンスだと思ったら、誰がなんと言おうと、ためらうことなくその前髪をグイッと鷲掴みしよう!
……なんてことを、今更ながらではあるが、あらてめて玉ねぎおばさまに教えていただいたのであった。
それにしても、言葉の力は大きい。
この世を自由で生きやすくするには、それなりの言葉を使うことが必要なのだろう。
自分の声を一番近くで聞く自分自身のためにも……。